付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「ETV特集 21世紀を夢見た日々~日本のSF50年」 NHK教育

2007-10-22 | その他SF(スコシフシギとかも)
 今日の「オタク文化」はどこから萌芽したのかをお題目に、日本SFの「勃興」期から「浸透と拡散」期までを、当時の音声テープや映像などから当時の関係者らからのインタビューまで含めて構成したドキュメンタリー。
 視聴者としては、小松左京、筒井康隆、豊田有恒、鏡明、南優らのインタビューに、SF作家クラブの原子力(はらこつとむ)研究所見学などの8ミリ映画を視て、SF作家クラブ設立会議での星新一や福島正美らの肉声などを聞けただけでも眼福、満足。2007年10月21日放送。
 実際、語られているのは子供だましと文壇には揶揄され、一般にはSMと間違えられることも多かった戦後の時代に、SFを世に広め根づかせていこうとする人々のプロジェクトX。んでもって、大阪万博を頂点として以後は浸透と拡散の時代へと移行していきます……というか、90分の番組で80分でやっと大阪万博に到達。その後、いきなり宇宙戦艦ヤマト、機動戦士ガンダム、AKIRA、攻殻機動隊と駆け足で進み、最後にアキバのメイドにワープ・ジャンプという大胆な構成。もう、最初から制作者に「オタク文化」そのものには興味がないことがありあり。
 現代に直接つながる物語を見たい人は残念でした。まあ、幕末の風雲児を描くのに関ヶ原の戦いから語ろうとして、大坂夏の陣あたりで終わった歴史物語と思ってください。

 ただ、まあ、現代につながる線としては、その誕生時からマルチ感覚があったという点かな。日本SF作家クラブのメンバーに最初から手塚治虫や真鍋博が混ざっていたように、常に映画やテレビといった映像世界と密接な関係があったということ。文学作品として受け入れられる余地があまりないので、特撮映画や特撮テレビの原案や脚本としてメンバーが活躍し、高度経済成長期の学習雑誌でSF小説が連載され、その結果としてSFをSFと意識せずに吸収して育った世界が社会の第一線に存在するようになった……というあたりか。
 『宇宙人ピピ』『スーパージェッター』『謎の転校生』『夕映え作戦』『タイムトラベラー』『ウルトラマン』。ぼくらの子供時代にはこういうものが自然に身の回りにありました。今の子供の回りにはPSPとかDSとかインターネットが生まれたときからあるわけですが、彼らが大人になったとき、どんな世界を作り上げてくれるのでしょうか。
 また彼らは彼らなりに努力して、また新しい挑戦をゼロから積み上げていくことでしょう。

 とりあえずキレイにスルーされた、アニメやゲームやライトノベルの興亡がメインとなるであろう80年代、90年代についても語ってもらいたいけれど、それはまあ、今現役で仕事をしている若手が語るべきことだよね。資料が少ない、証言者が次々と鬼籍に入りそうなぎりぎりのラインを最優先しているから仕方がないでしょう。
 それに無理に語ったところで、何もかが中途半端になるのは明白。語ったところで逆に80年代90年代のクリエイターに「自分たちは、今、やっているところだ。勝手に歴史上の評価なんかするな!」と怒られそうです。

「ETV特集 21世紀を夢見た日々~日本のSF50年」★★★★

【Woo】【星新一】【SFマガジン】【未来学会】【ワールドコン】
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「ガジェットガール」 志井昭広

2007-10-22 | 超能力・超人・サイボーグ
 いにしえの魔術師だか錬金術士の技は、魔術ロジックを使ってアイテムを擬人化し、その能力を引き出せるようになっていたという。人の姿と意志を持って動き回るアイテム、人工的な妖怪変化、それはガジェットと呼ばれていた。
 両親の交通事故死により稼業の骨董屋を廃業することにした高校生・高梨弘明は、蔵の奥で長い眠りについていた少女を目覚めさせてしまう。少女の名はエル。エルは少年の名前がヒロアキだと知ると、にっこり笑って宣言した。自分は「『本』のガジェットでお主の姉なのじゃ」と。
 エルこそは不老不死を追い求める者が血眼になって探している『永遠の命の書』だったのだ。エルを狙って襲ってくるガジェット・トモミ。そしてトモミを一撃のもとに打ち砕いたアル。
 だが、エルはアルには勝てない。
 なぜなら、2人はもともと1組の書物であり、エルは上巻・理論編であり、アルは下巻・実践編だったのだ……。


 書物が美少女の姿を取っていた!という斬新なアイデアには、既に『機神咆吼デモンベイン』『斬魔大聖デモンべイン』のアル・アジフという先例があり……、いや、年寄り口調の「アル」という名前の「魔道書の化身」という段階で二番煎じのそしりは免れなく、それでもまあ、それなりに面白かったですね。
 しかし、料理のシーンになると描写が突然濃くなるのは何故でしょう?

【ガジェットガール】【志井昭広】【書の化身】【契約】【魔道書】
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「彼女は帰星子女」 上野遊

2007-10-22 | 宇宙・スペースオペラ
「信じていれば許されるのは殉教者だけです」
 市ヶ谷の工作員、空野星子の言葉。

 人類の宇宙進出の直後から話は進んでいたらしいのだが、ある日、地球の諸国と宇宙空間を何千年と旅していくうちに集った3つの異星人による集団トリオンとの間に国交が樹立した。それはたいへんな出来事であったが、平凡な高校生である芹沢望にとっては、なんの関係もない歴史上の事件にすぎないはずだった。
 彼の家が地球系宇宙人、福山絹の下宿に選ばれさえしなければ……。


 描写がまだまだ甘いです。ツッコミ不足というか、ここを削ってここを書き込めば……と思わせるところが幾つか。2冊目以後の伏線でこのキャラにも出番の1つも……という余計な計算が働いたかな。
 主人公が地球の習慣にまったく疎い福山絹を連れて買い物に出るシーンでもそう。年頃の男子高校生が、着の身着のままで連れてこられた美少女と身の回り品を買いそろえに……ときたら下着売り場で騒ぎの1つも起こさなきゃ。それを「まったく地球の慣行に疎いんだ」「誰かがぼくらを見てる」だけであっさり終わらせたらもったいない。
 基本は大切にしましょう。

【彼女は帰星子女】【上野遊】【留学生】【押しかけ】【カルチャーギャップ】
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「真説ルパン対ホームズ~名探偵博覧会」 芦辺拓

2007-10-22 | ミステリー・推理小説
「全ての不可能を取り去っていったあとに残るものこそ真実なのです」
 シャーロック・ホームズの言葉。

 芦辺拓による名探偵をテーマにした短編集。パリ万博を舞台に、これから売り出そうとするルパンとホームズが推理合戦を繰り広げる表題作のほか、ファイロ・ヴァンス、思考機械からチャーリー・チャンや明智小五郎まで東西の名探偵が競演を繰り広げる。
 こういう本は好きなんですよ。ええ、『名探偵登場』が許容範囲なんですから!……って誉め言葉ではありませんね。ごめんなさい。

「真説ルパン対ホームズ~名探偵博覧会」★★★

【名探偵】
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