付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「アララットの死闘」 ジェリー・パーネル

2007-10-16 | ミリタリーSF・未来戦記
「神は素晴らしい。そうだろう? 神のすることは常に正しい。警戒すべきなのはむしろ別のやつさ」
 ブラディの言葉。
 完璧な神さまのことは放っておいて、せいぜい悪魔に媚びを売ろうじゃないかという話。

 流刑惑星アララットに派遣された<連合国家>海兵隊の新任少尉ハーラン・スレイクーは、ファルケンバーグ大尉の指揮のもと、五十万の流刑囚が作り上げた反乱政府との戦いに身を投じ、凄絶な戦闘を繰り返していく……。

 SFとはいうけれど、作品の方はガチガチのミリタリー。アララットでなくても、203高地でも硫黄島でもオマハビーチでもいいくらいの話ではあります。つまり神も仏もない世界の話ですね。

【アララットの死闘】【ジェリー・パーネル】【ファルケンバーグ】【軍曹】【軍規】【政商】
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「かみちゅ!」 監督:舛成孝二

2007-10-16 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
「神社の娘として言わせてもらうけどね、努力とお賽銭無しのお願いなんて、叶うわけないのよっ!」
 来福神社の娘、三枝祀の言葉。
 かっこよく言えば「天は自ら助くるものを助く」ですが、こっちの方が説得力があるかもしれません。

 瀬戸内の小さな街の中学校に通う少女、一橋ゆりえはある日、親友の光恵ちゃんに告白してしまいます。「あたし、神様になっちゃった」と。
「なんの?」
「わかんない」
 そんな、ぽやや~んとした会話から始まる神様ゆりえとクラスメートや神様仲間たちとの物語。果たしてゆりえの恋は実るのだろうか?

 ほのぼのとして面白く、第1話から温かく見守っていたけれど、仲間内でわっと広まったのは「海底に眠る戦艦大和さんの霊を故郷に帰してあげよう」という話から。それはそれで凄くて感動的でありました。

【かみちゅ!】【神様】【貧乏神】【神無月】
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「スケバン刑事2」 原作:和田慎司

2007-10-16 | 学園小説(不思議や超科学なし)
「我が兜をまとうた時、天と地の音色鳴りおうて、鏡に光あふれん」
 机の奥のメモに殴り書きされていた鉄仮面の伝説。

 「戦車には戦車を」「航空機には航空機を」の思想そのままに、「悪党には悪党をぶっつける」の考えで、極悪人ばかり集めて訓練し、生き残った者を編成して警視長の位と装備を与えたのが望月三起也の『ワイルド7』なら、「その悪党が学生なら、ぶつけるのも学生だろう」と不良少女に菊の代紋の入ったヨーヨーを渡して学生による凶悪犯罪に対処させたのが和田慎司の『スケバン刑事』。
 それがテレビで実写化され、まあ、1作目は原作っぽくはあったのだけれど、続くシリーズ第2弾に至っては、『スケバン刑事2~少女鉄仮面伝説』ときて、唖然とすることしきり……。
 まあ、第3弾が忍者姉妹ものになり、さらにその20年後にはオマージュ作品とも言える小説『メイド刑事』が登場しようとは……。

「スケバン刑事2」★★★

【スケバン】【刑事】【ヨーヨー】【財宝】【三人娘】
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「タイムパトロール」 ポール・アンダースン

2007-10-16 | 時間SF・次元・平行宇宙
「神々の下さるものなら、なんであれ有り難く頂戴すべきだし、それに神々というものは、あれで思いのほかしみったれなのだ」
 タイムパトロール無任所職員マンス・エヴァラードの言葉。

 今、Googleとかアマゾンで「タイムパトロール」と検索すると、「オタスケ」とか「ぼん」とかがずっと上の方に来るのだけれど、これこそタイムパトロールものの原点。歴史を改変しようとする犯罪者との戦いやタイムパラドックスから「歴史を守る」ことへのジレンマまで、時間警察を扱った作品のテーマのほとんどはこの作品で確立されました。

「正義はつねに平和から生まれるものだ」
 ローザー・シュタインの言葉。
 衣食足りて礼節を知る。自分が殺さなければ殺される!……という状況を脱却して初めて、これは正義であれが悪だとか決める余裕ができるわけです。

【タイムパトロール】【ポール・アンダースン】【正しい時間線】【ジレンマ】
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「10月1日では遅すぎる」 フレッド・ホイル

2007-10-16 | 時間SF・次元・平行宇宙
 11月1日では遅すぎるのはハロウィン・パーティー。

「頭の中に正しい概念がなければ、それを発展させることはできない」
 ジョン・シンクレアの言葉。

 ある日突然世界がごちゃごちゃになった。バイキングが上陸してきたかと思うとロンドンではナチスの空襲が続いており、ソ連のあった場所は核戦争でもあったかのようにガラス状になった大地だけが続いている。
 これは時間が混乱しているのか、それとも平行世界・パラレルワールドなのか。自分たちは本当に自分、本物なのだろうか……。

 このフレッド・ホイルの作品はパッチワーク世界を描いた先駆け……っていうか、先駆的作品にはマレイ・ラインスターの『時の脇道』ってのがあって、むしろそちらの方が娯楽作品としては面白いのだけれど、ホイル先生は天文学者が本職なので、この時間と空間が混乱した世界についてとことん思考実験しています。
 この作品があったからこそ、『超時空世紀オーガス』とかPBM『クォ・ヴァディス』とかが生まれたんだと思います。

【10月1日では遅すぎる】【フレッド・ホイル】【ハヤカワ文庫】【平行世界】【時空混乱】【複製世界】
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「緑の瞳のアマリリス」 ジェイン・アン・クレンツ

2007-10-16 | 超能力・超人・サイボーグ
 帯によれば「ロマンス小説界の女王ジェイン・アン・クレンツが放つ SFロマンティック・サスペンス」だそうですが、そのまんまです。

 才能はあるのだけれど性格が堅く、また過去の経験から男性不審になりがちなヒロインが、野性味あふれる、ハンサムで、成功した青年実業家と出会い、互いに反発しながらも事件に巻き込まれていく中で次第に惹かれ合うようになり、最後はヒロインの危機を青年実業家が救ってめでたしめでたし
……って、ハーレクインロマンスがやりたいなら、この半分のページ数でやってください……。
 超能力者がありふれた世界ってのがポイントです。

【緑の瞳のアマリリス】【ジェイン・アン・クレンツ】【孤立した植民星】【超能力者がありふれた世界】【濡れ場】
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「アッシャー家の弔鐘」 ロバート・R・マキャモン

2007-10-16 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「おまえがどこに住んでいるのかはたいしたことじゃない。大事なのは、おまえの中に何が住んでいるかだ」
 ニュー・タープに語りかける山の王の言葉。

 ペンタゴンを影で操る武器商人アッシャー家の跡目争いとその怪奇な豪邸の秘密……という、ポーの小説に着想を得たロバート・R・マキャモンによる本作は、大ネタの最終兵器でK・W・ジーターの『悪魔の機械』と大ネタが被っています。それ以外はぜんぜん似てませんが。

「アッシャー家の弔鐘」★★★

【血族】【秘密兵器】【地震】
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「青の6号」 小沢さとる

2007-10-16 | 水の世界・海洋冒険SF
 僕の先輩の先輩で、僕の同級生の同級生であるMさんから秋田書店版『青の6号』の3冊セットを譲ってもらいました。

 海中航路の安全を守る国際組織<青>に属する潜水艦乗りたちと、謎のテロ組織<マックス>との戦いを描く海中冒険活劇。学生時代に読んだきりで、また読みたいと探していた本ですが、旧版はおろか復刻版さえみつからず諦めていたところでした。ボヤいてはみるものです(ありがとうございます)。
 だいたい大昔に夢中になって読んだ本というのは、今になると恥ずかしかったりつまらなかったりするものですが、これは今読んでも面白いです。最近もときどき潜水艦の登場するマンガなどがありますが、そういう作品で2巻くらい使って展開する水中戦が、4ページくらいにギュッと濃縮されて語られるテンポの良さが魅力です。
 やっぱり青の1号<コーバック>でしょう。でも最近のアニメ版はテンポの良さがなかったですね。

【青の6号】【小沢さとる】【潜水艦】【秘密結社】【戦艦大和】
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「忠誠の誓い」 ラリイ・ニーヴン&ジェリー・パーネル

2007-10-16 | その他SF(スコシフシギとかも)
「政府の半分は法律家です。法律家以外の者は誰も合法と非合法の区別がつかず、そして法律家はもう正と邪の区別がつかないんですよ」
 トニー・ランドの言葉。

 ロサンゼルス郊外に建設されたハイテクビル<トドス・サントス>は、それ自体が1つの街となっており、そこに住む人々はそこで快適かつ安全な生活をおくっているが、治安の悪い周辺地域の住人にとっては嫉妬と羨望の対象であり、環境保護主義者にとっては怨嗟の的であった……。

 監視国家に対する嫌悪というものがあります。日常の一挙一動がカメラによって監視され、いつどこに行き、誰と会ったかを他人が把握している社会の恐怖。隣人による密告や監視、秘密警察、そんなマイナス・イメージはなかなか払拭できるものではありません。日本での国民背番号制度への反感もその1つかも。
 けれども<トドス・サントス>では、もちろん外部の人間は奇異に感じるのですが、監視されることは住人にとっての権利なのです。自分たちが雇用している警備員が監視していてくれるから、自分たちは安全に安心して暮らせるのだと認識しており、作者はそれを皮肉や批判としてではなく、肯定して描いています。
 結局、自分たちが雇っている者を信用するかどうかということなのです。

「忠誠の誓い」★★★★

【巨大都市】【文化の相克】
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