付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「なつき☆フルスイング!~ケツバット女、笑う夏希」 樹戸英斗

2007-10-26 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 肩の故障から高校野球への道を閉ざされた智紀は、バッティングセンターで不思議な少女なつきと出会う。それは人の心の弱みにつけ込み取り憑く夢魔との戦いの始まりだった……。

 思春期の青少年の心の闇に取り憑く魔性の存在なんてネタは掃いて捨てるほどもあるわけで、登場人物みんながそれぞれに心の闇を抱えていて、それを個人の殻にこもって殷々鬱々と自己啓発に勤しむような話ならペぺぺのぺです。
 でも。この話において取り憑いた夢魔を祓う方法はただ1つ。特殊な金属で精錬された金属バットで尻を叩くっ!

「フリル、」
「レースつき、」
「Tバァァァァァック!」

 これで湿っぽくなりそうな展開を180度逆方向にぶっ飛ばすんです。魔物と戦う手段が金属バットですよ!? 88ゲーマーは泣きながら読むしかありません。
 ちょっといい話だね。イラストもイイカンジ。キャラも立っていて、背景もそれなりに描き込んでいて、色遣いもしっかりしていて好印象。年配者が描き分けられるかどうかは未知数だけれど、それは関係ないわな。
 ごちそうさまでした。

「なつき☆フルスイング!~ケツバット女、笑う夏希」★★★★

【金属バット】【除霊】【謎の美少女】
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「ヤクザガール・ミサイルハート」 元長柾木

2007-10-26 | その他SF(スコシフシギとかも)
「恩とは、真の地獄にいた者に投げかけられる一条の光のことだ!」
 鉄砲玉な榊塚アカリの言葉。

 舞台は太平洋戦争で原爆が投下されなかった広島。異境の技術によって、怪人や超兵器がちまたにあふれている世界。
 青少年によるシンポジウム、ジュヴナイル・サミットに出席するため広島を訪れたアドルファス少年は、ヤクザに絡まれているところを地回りの少女アカリに助けられるのだが……。


 独りよがりな外人少年が自分の義務を勝手に放り出し、余計な善意を通りすがりのヤクザ少女に押しつけようとしたあげく、ヤクザの抗争に巻き込まれるという、ぼくのいちばんキライなタイプの話。
 複線張りまくって、話引きまくって、それで最後まで読ませるから、巧いはうまいんだろうなあ。

【ヤクザガール・ミサイルハート】【元長柾木】【緒方剛志】【ヤクザの抗争】【超能力】【ボーイ・ミーツ・ガール】
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「超妹大戦シスマゲドン」 古橋秀之

2007-10-26 | 超能力・超人・サイボーグ
「ふん、地球の妹をなめてもらっては困る」

 年少の女性血縁者のパワーを増幅し自由自在に操れる妹コントローラー!
 それを偶然手に入れた烏山サトルは、愛する妹ソラを操り、コントローラーを狙う謎の組織〈プリオン〉の妹使い、ネコミミ妹・獅子神エリカやドリル妹・堀チエミらと戦う中で着々と実力を身につけていった。そして南海の孤島で開催される最強妹決定戦、S-1グランプリへと挑み、中華代表・超梁山操る108騎の妹武者軍団や蠱惑の舞踏王イーシャ・ダルシェマらと戦うことになるのだが、その行く先に待っているものは……!?


 なんかわけのわからんモノをカッコ良く描かせればピカイチの古橋秀之による、妹フェチよ永遠なれ!というか、どこまでいくんだ、こいつら……という大作(かなあ?)。バカカードのように単語と単語をあり得ない組み合わせで結合して予想外のビジュアルをつきつける勢いは健在。全2巻だけれど、まとめて一気読みがお薦め。
 さすが古橋秀之というべきか、やっぱりホラ話は行くトコまで行くから面白いという見本ですね。『ブラックロッド』でも「勇壮なマーチ調にアレンジされた般若心経」とか機甲羅漢に燃えましたねえ。妹をコントローラーで操って戦わせるというバカネタをひたすら突き詰めて、それを無理矢理大ネタに持って行き、最後は石川賢版の真ゲッターロボみたいになってしまうんだけどもさ……。

【超妹大戦シスマゲドン】【古橋秀之】【妹】【バトル】【銀河大戦】【クトゥルフ】
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「警部マクロード」 NBC

2007-10-26 | ミステリー・推理小説
 『刑事コロンボ』と同じくNBCのミステリームービーの1本だったのが『警部マクロード』で、『刑事コロンボ』の後番組で放映されました。この頃はゴールデンタイムをアメリカ製警察・探偵ドラマが占め、nonnoで海外ドラマの特集が組まれたくらい。
 『警部マクロード』も好きでしたね。『刑事コロンボ』と正反対のカラッとしたアクション・ドラマ。ニューメキシコ州から研修でやってきた保安官が、都会のスマートなやり方など知ったことかと西部劇さながらに45口径銃を振り回してニューヨークの悪漢と対決する話。牛泥棒、駅馬車強盗、列車強盗、銀行襲撃、コンボイの暴走、投げ縄、アラモ砦、騎馬警官……。
 主人公のマクロード警部を演じるのは今は亡き『激突!』のデニス・ウィーバーで、吹き替えは宍戸錠のはまり役。彼の暴走に頭を抱えるニューヨーク市警のクリフォード刑事部長の声は、横溝正史アワーや『釣りバカ日誌』でもお馴染み加藤武。この2人に、マクロードに引きずられてトラブルに巻き込まれるブロードハースト巡査部長の3人を軸に毎回の物語が進むのですけれど、丸顔にメガネのフォーク歌手ジョン・デンバーが頭の切れる保安官助手で登場する『コロラド大追跡』、市警本部が砦と化して大攻防戦が繰り広げられる市警本部三部作の『市警本部大攻防戦』がベスト・エピソードかな。『俺がハマーだ!』にも似たようなエピソードがありますね。あんな感じ……というか、あれの原点。
 単にふざけた大騒ぎだけじゃあ、面白くなりません。あくまでもみんなが真面目に収拾をつけよう、つけようとするほど裏目に出てドツボにはまり、気がつけばマクロード流の西部劇の真っ直中に放り込まれる都会の真面目警官たち……という構図が面白いのです。
 『刑事コロンボ』もDVDで出ていることだし、こちらも日本語版が出ないかなあ……。

「警部マクロード」★★★★★

【カウボーイ】【ニューヨーク】【テンガロンハット】【我が道を行く】
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「ヴァンパイアはご機嫌ななめ」  メアリジャニス・デヴィッドスン

2007-10-26 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 不運続きのベッツィは、その日で30歳になる長身でブロンドの元モデル。寝坊して遅刻して、リストラで解雇を言いわたされあげく交通事故にあって死亡。ところがさらに不運なことには棺の中で目が覚めてしまったのだ。
 ナイフで刺されても、川に飛び込んでも死ねない身体になってしまったベッツィだけれど、教会に行っても、牧師に十字架を渡されても、謎の男たちに聖水を振りかけられても平気。開き直ったベッツィは、とりあえず自分の大事な靴を持ち去った義母の家に乗り込むのだが、そこで親友と再会し……。


 不死の身体になった上に人の血も吸いたくなるので、どうやらヴァンパイアになってしまったらしいのだけれど、ぜんぜん思い当たる節がない。そんな彼女と彼女こそが伝説の吸血鬼の女王だと自分の支配下に組み込もうとするヴァンパイアのグループ抗争を軸に、頭脳も財も兼ね備えた親友やら一本ネジの外れた小児科医とかが入り乱れての大騒ぎ……なんだけれど、ベッツィの一人称語りが非常に癇に障るんですね。
 話は面白いし、登場人物は個性的なんだけれど、主人公の考え方/しゃべり方が30歳のエグゼクティブ・アシスタントっぽくない。「やっだー、キモーい」「ゲーロゲロ」……。いや、30歳だって中身がそう簡単に20代と変わるわけはないんだけれど、ティーンエイジャーのバフィーならなんとか許せるぞってレベル。訳が悪いのかもしれないけれど、頭が悪そうに見えるなあ、確かにこんな女が部下にいたら解雇もしたくなる……。
 原文はどうあれ、もうちょっと小粋に訳して欲しかったね。
 内容的には「読むコミック」? 訳語の選択さえ気にならなかったら、軽く楽しめるラブホラーコメディ。

【ヴァンパイアはご機嫌ななめ】【メアリジャニス・デヴィッドスン】【ひろき真冬】【吸血鬼】【女王】【靴】【ブレード】【やらしいこと】【死者の書】【モンティ・パイソン】
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「アークエンジェル・プロトコル」 ライダ・モアハウス

2007-10-26 | 破滅SF・侵略・新世界
「肉体が魂を堕落させるのか、それとも強くさせるかは、おまえがきめることだ」
 堕天使モーニングスターの言葉。

 戦争によって荒廃した世界ではさまざまな宗教勢力が社会を支配するようになっていた。人々はネットワークに接続しなければ生きていけないような社会システムができあがっており、ネットワークに接続するにはいずれかの宗教勢力に帰属していなければならなかった。
 荒廃したニューヨークで私立探偵を営むディードリ・マクマナスは、ある特定の人々にとっては崇拝の対象であり、また別の人々にとっては侮蔑の的であった。もと敏腕刑事であった彼女は法王暗殺事件に巻き込まれた結果、破門されていたのだ。
 そんな彼女に1つの依頼が舞い込む。大戦後の電脳空間に突如現れたリンク天使たちが偽物であることを証明して欲しいというのだ。


 ぶっちゃけ『攻殻機動隊』と『ベルリン天使の歌』を足して割ったような感じ。面白かったし、続編も出ているらしく解説を読んでいて面白そうなので、翻訳されたら追いかけてみよう。でも半分の厚さで良いです。

「アークエンジェル・プロトコル」★★★★

【電脳空間】【天使】【もと警官】
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「ティンカー」 ウェン・スペンサー

2007-10-26 | 時間SF・次元・平行宇宙
 今「ライトノベル」と呼ばれている出版形態を最初期から取り入れていたハヤカワ文庫が再び、コミック調のイラストを積極的に採用しだしました。この波は数年おきに定期的にやってくるようですが、最近はまだ挿絵イラストを入れるケースは少ないので本調子ではありません。せめてカラー口絵くらいは復活させてほしいぞ……。

 中国が開発した転移装置の事故でピッツバーグ市が魔法が支配するエルフの世界と地球を定期的に転移するようになった世界。1ヶ月に1度、24時間だけ元の地球にアクセスし、その間に物資の補給や人員の交代をしながらエルフのような異世界人とのコンタクトを進めているのだけれど、何十年も経てばそこで生まれ育った世代が社会の第一線に立ち始めているわけで、その中の1人、スクラップ屋を営む天才少女ティンカーが、3つの世界にまたがる陰謀に巻き込まれていく。

 SFの設定でファンタジーの世界が取り扱われ、そこに天狗とか鬼が出てくるんだよな……。日本人作家が書いて、2冊構成で電撃文庫から刊行されていてもおかしくない話。けっこう面白いんだけれど、その普通さが違和感。考えすぎだけれど。
 ただ後半、前半に登場したサブキャラたちの出番がほとんどなくなり、クライマックスから結末に至っては出番ゼロというのは寂しいなあ。キャラクターがもったいないです。

「ティンカー」★★★

【エルフ】【警察】【スクラップ屋】【天狗】
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「コラプシウム」 ウィル・マッカーシイ

2007-10-26 | 宇宙探検・宇宙開発・土木
 マイクロ・ブラックホールを新素材として太陽系規模のインフラ工事が進められている時代。世界各地で発生する謎の殺人と連続する事故の犯人は……。

 ストーリーの根幹はインフラ工事をめぐるエピソードにあって、三部構成というか、第1話、第2話、最終回の前編と後編くらいのボリュームで展開してます。それだけしか書かないとなんか小川一水の『第六大陸』みたいな路線に聞こえますけれど、むしろハードSFな設定をスペオペの文法で展開させた感じ。『マッカンドルー航宙記』とか『サターン・デッドヒート』とかの路線ですかね。だから美少女が活躍するアクションSFのつもりで買うと失敗します。

 最近ますます翻訳ライトノベル系へ足をつっこんでいるハヤカワSFですが、さすがにこれはあざとすぎます。
 表紙イラストにただ1人登場している、左目にVRモノクルをつけた美少女は、太陽系女王国屈指の捜査局長、ヴィヴィアン・レイモン。事故で死亡し、10歳当時のデータで復元した肉体に知識だけを詰め込んで再生した少女。「見た目は子供、頭脳は大人!」……ただし脇役。全3部の話の2話に登場し、3話にはちょろっと登場……おい……。
 作者がこのサブキャラを生み出した動機はともかく、日本の編集者の意図は明白。いや、素直にレイモン捜査官の話が読みたいんだってば。

【コラプシウム】【ウィル・マッカーシイ】【ハヤカワ文庫SF】【マイクロブラックホール】【バックアップ】
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「鬼切り夜鳥子~百鬼夜行学園」 桝田省治

2007-10-26 | 学園小説(不思議や超科学あり)
 冒頭から結末まで陸上部員の駒子(声:高山みなみ)がひたすら走って走って走り回り、新校舎の建設によって封印が解かれてしまった5匹の鬼(妖怪)を退治するという連作短編集。

 面白かった。嫁さんが読んで「面白いから」と勧められ、自分が読んでも確かに面白かったし、中高生に読ませても面白がるだろうけれど……、親からは子供に勧めにくい1冊。
 この話はゲームやTVアニメのように基本フォーマットとかパターンを意図的に作っているのですね。なんというか、読んでいてこういう内容の学園伝奇アドベンチャーゲーム(9800円)が脳裏に浮かぶくらい。で、その中のお約束の1つが「主人公が必ず脱ぐこと」。(キューティーハニーみたいなもので)確かにストーリー上の必然性はあるんだけれど、とにかくセーラー服でもブルマでもスクール水着でも、脱ぐし、破れるし、脱がされる。最後は全裸になって敵を倒す……なんて書くとお下劣ギャグと思われそうですけど、いえ、ちゃんと学園伝奇小説ですよ。式神系かな。
 三ツ橋委員長が良い味だしてるよね。ボケ役だけれど、ここ一番では頼りになるFカップのお好み屋の娘。動物大好きで、それは別に子猫でなくてもバケモノでもいいらしい……。

【鬼切り夜鳥子】【百鬼夜行学園】【佐嶋真実】【陰陽師】【鬼】【魔法陣】【入れ墨】【すっぽんぽん】
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「座敷童にできるコト」 七飯宏隆

2007-10-26 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 住み着いていた部屋が開かずの間になってしまい、座敷童の未麟は10年間封じられてしまう。だが、その間に<七層からなる天界>からの侵略者、ワラシモドキによって日本中の座敷童は次第にテリトリーを失い滅亡寸前に陥ってしまっていた。かくして「おちこぼれの逆座敷童」とみそっかす扱いされていた、酒好きのセーラー服少女が2mほどの朱塗りの棒を武器にワラシモドキと戦うことになる!……という話。
「人並みに胸があるならともかく、このように期待外れの胸では……」


 普通に面白かったです。
 もう少し……1割くらい文章を削ってすっきりさせれば良かったんじゃないかなと思う。

「座敷童にできるコト」★★★

【座敷童】【ビジネス】【縄張り】
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「冒険投資家ジム・ロジャーズ~世界大発見」 ジム・ロジャーズ

2007-10-26 | 冒険小説・旅行記・秘境探検
「道路の敷き方を知った中国は、資本主義者よろしく、こうした道路のすべてで高い通行料を取る。それでも彼らは自分たちのことを共産主義者と呼ぶ」
 37歳で引退した時には一生冒険して暮らせるだけの財産を手に入れていたジム・ロジャーズが、10年ぶりに訪れた中国の高速道路事情への感想。

 投資家として成功し、莫大な冨と名声を手に入れた著者の野望は、世界を自分の目で見て回ること! まずはバイクで世界周遊した著者が、特注の改造ベンツを運転してトルクメニスタンからエクアドルまで116カ国を特注のベンツで走り回った見聞録。
 なぜベンツか? それは別にベンツが好きだとか、金があるからとかいうのではなく、車が突然壊れたとき、世界のいかなる国でもベンツのサービススタッフと連絡が取れるから。なにかあったら立ち往生しそうな発展途上国、胡散臭い独裁国ほど権力者御用達でベンツのディーラーがあるのです。

 アメリカ人の大富豪が世界を旅するというと、たいてい鼻持ちならぬものになる……というイメージがあるのだけれど、ごめんなさい。間違ってました。ちゃんとその国の歴史や文化や宗教や経済を理解した上で、先進国だろうと未開の奥地だろうと良い物は誉めるし悪い物は手厳しく批判するのです。
 彼の価値観は「開放」なのかもしれません。言語だろうと経済だろうと移民だろうと、外部に開放されず閉鎖的になったらその国はおしまいだと断言します。大英帝国でもっとも豊かな国だったガーナは鎖国して7年で破産し、アジアでいちばん裕福だったビルマも鎖国して不幸になった。トルコを加盟させないEC、移民を制限したがる移民の国ニュージーランドも似たようなものと彼は指摘します。「民主党も共和党もくたばっちまえ」と経済音痴の大統領たちをこき下ろし、トルクメニスタンの大統領賛美がヒトラーの宣伝ポスターと瓜二つと指摘し、保護主義に守られた韓国なんか恐るるに足りないと喝破し、高齢化が進むECはトルコを仲間に入れないと破綻すると断言し……。
 そしてヘビだろうがヤマアラシだろうが現地の人間が食べるものは食べ、3つ星レストランで食中毒にあい、スタート3日目で遭難し、武装蜂起が起きているミャンマーや空爆直前のユーゴスラビアを走破する姿は、日経ビジネス文庫にはふさわしくない面白さかも。

「NGOは巨大な産業だ。政府の汚職で増殖する」

 ただし、この前日譚である「冒険投資家ジム・ロジャーズ~世界バイク紀行」の方は今イチ。訳者が勝手に抄訳にしてビジネス関係以外の部分をはしょりすぎているので、話の前後で一致しない箇所が多いのです。

【冒険投資家ジム・ロジャーズ】【世界大発見】【ジム・ロジャーズ】【改造ベンツ】【内戦】【マフィア】【投資】
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「塵骸魔京」 海法紀光

2007-10-26 | ホラー・伝奇・妖怪小説
 クラス委員長・牧本美佐絵が気になる九門克綺は空気が読めない男だった。悪気のないまま思ったことを率直に口にするため、誤解されて敵を作ってばかり。2人が付き合うことになったのも、もとはといえば九門の冷静な探求心が原因だったのだ。
 彼らの学園生活は平和に続いていくように思われた。幻想に過ぎなかったけれど。
 街で猟奇殺人が頻発するようになって狭祭市の裏の支配者である製薬会社ストラス社が動き出し、謎の女狩人イグニスや風のうしろを歩むものが“心臓のない男”九門の周囲に出没し始める。
 まやかしの、けれども牧本美佐絵が愛した普通の日々は終わった。
 牧本美佐絵こそ超人ファンタスティカ・ナイン。ストラスが生み出した対“人外”用の強化実験体だったのだ……。


 一見平穏な日々の裏側では人外の敵と人間との戦いが続いていた……というアダルト向けノベルゲームの小説化。主人公のことが大好きな委員長は、実は対人外用に調整された実験体ファンタスティカ・ナインだったのだ……という話。他のヒロインも切ない話が多いのだけれど、これはねえ、「黒い傘がくるくる回る」フレーズだけで泣けちゃうんだ。切ないなあ。
 分類でいうとクトゥルフものっぽいあたり。ヒロインそれぞれのストーリーに物語が分岐するのだけれど、ゲーム内ではヒロインっぽく顔見せしながら分岐の無かった牧本委員長の物語。ちょっとキャラが多い割に2巻本なので書き込み不足かな……というより、もう少し彼らの物語を読みたかった。でも、ゲーム原作というけれど、原作を知らない自分にも面白い話でした。

 さてさて、読了後、スカイプ用のマイクを買いに行ったら、隣のお奨めコーナーでパソコンゲーム版『塵骸魔京』を安売りしてたので購入。あまり派手なパッケージだと買いにくいけど、これならOKね。というか、パッケージだけじゃあ18禁とはわからない(シールはあるけど)。
 話は面白く、分岐も適当で、ふんふんと読み飛ばしていると隣でチャットをしているはずの嫁からしばしば「ストップ! 速すぎる」と文句が出る……。
 総論としては、小説が面白かったんで購入しましたけど、けっこうお得な感じでした。良い意味で小説とのギャップがありません(というか、逆ですね)。 パソコンゲームで語られなかった部分を小説が補完しているのです。ゲーム本編では脇役Aだった委員長を視点にした物語。キャラの書き込みが足りないと思ったのは、その部分はゲーム版で語られているからでした。なるほど。
 曲も名曲。今でも車の中で聞いてます。
(2007/10/26 2024/08/21改稿)


【塵骸魔京~ファンタスティカ・オブ・ナイン】【塵骸魔京~ライダーズ・オブ・ダークネス】【海法紀光】【ニトロプラス】【なまにくATK】【ファミ通文庫】【クトゥルフ神話】【鬼畜な科学者】【吸血鬼】【モルモット】【ヒーロー】
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「トラナイへの切符」 ロバート・シェクリィ

2007-10-26 | 宇宙・スペースオペラ
「いかなる機械もわれわれ人間には癇癪の的である」
 アッバグの言葉。

 ん~……機械がというより、機械のマニュアルとかコールセンターとかメンテ契約の方が癪の種じゃないかと思う今日この頃。
 仕事で使っているサーバーマシンのハードディスクが不調で、修理を依頼したら販売後5年で保守契約が自動的に終了していて、スポット修理が30万円といわれたとき。なぜ保守契約を更新できないか問いつめたら、部品の確保に限界があるといわれたとき。内訳の見積書がファックスで送られてきて、たかが18GBのHDDが6万円でマウンターは1万2000円といわれたとき。たかがHDDが6万もするのかと問いつめたら、特殊な専用品ですのでといわれたとき。壊れてもいないマウンターまでなぜ交換するのか、ネジの3つも締めるだけではないかと問いつめたら、セットで交換しないと誤作動の原因になるといわれたとき…………ネジの3つもまともに締められない作業員の出張費に6万円も取るなあ!(交通費別途)
 ネジ締めだけで誤作動するような専用品に怒るという手もあるな……。

「トラナイへの切符」★★★

【短編】
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「キャッチワールド」 クリス・ボイス

2007-10-26 | バイオシップ・人工知能
「もっとも有意義な精神活動は、つねにもっとも抽象的なものだ」
 宇宙戦艦<憂国>艦長、田村邦夫の言葉。

 木星軌道上に出現した謎の結晶生命体によって攻撃を受け、壊滅の危機に陥った地球は決死隊を送り込んでこれをかろうじて撃退。
 それから40年後、結晶生命体の母星と思しきアルタイルめざし、報復艦隊を発進させるのだった!……

 というようなあらすじで購入したクリス・ボイスの作品。これだけ読めば、血湧き肉躍る戦記SF、スペースオペラか何かと誤解しても仕方がないでしょう。
 そのつもりで読み始めると実際は肉体改造とか精神改造とかがあたりまえに出てくるサイバーパンクなんで、わけがわからないというか、思考と文章がかみ合わなくて苦労とするというか……それにほら、日本がヘンだし。
 この世界の日本は何があったか、法華経団が政治的にもかなりの勢力を持っているらしく、その上に寺院を要塞化したり、僧兵を擁していたりする不思議な国だったりします。艦長はサムライだしな……って、ここらへんの印象しか記憶に残ってなかったりします。せっかくの<憂国>だって、コンピュータの独断専行で砲撃戦とかなんとか華やかなシーンはなかったし。
 デイジー、デイジーってか?

【キャッチワールド】【クリス・ボイス】【ハヤカワ文庫SF】【扱いにくいコンピューター】【奇妙な日本観】【頭脳船】
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「真田十勇姫!」 馬場卓也

2007-10-26 | 日常の不思議・エブリデイ・マジック
 実は大阪夏の陣を生き延びていて、しっかり徳川家康を討ち取っていた真田幸村と十勇士は、それでも徳川の世はもはや動かぬと見切り、何か事あらば再会し真田家のために戦うことを誓って別れる。
 それから何百年。実は幸村の子孫であったりなんかする平凡な高校生ユキオのもとに、続々と怪しげな連中が集結し始める。先祖の誓いに従い、再び戦うために主君のもとにはせ参じた少女たちであった……。


 蓼食う虫も好き好きという言葉があるように、世代差・性差・個人差などによって、ある者には支持されるけれど、別の者には批判されるってものは幾らでもあるわけです。ぼくの場合、登場人物がバカばかりで、人の迷惑顧みずドタバタやるだけの話なんてのはそれだけで最低であり、何か別の作品の名前を借りながら中身は全く別物なんて論外なわけです。
 これといって取り柄の無さそうな主人公のもとに何故か美女美少女十人が押しかける(まだ4人しかいないけど)ハーレム・パターンも、荒唐無稽な講談物も別にキライじゃないんですけど、このネタならもっと書きようがあるだろうに、女の子をたくさん出せさえすればモチーフは何でも良かったというところが後書き読まずに解りまくりなのがしょぼん……。

【真田十勇姫!】【馬場卓也】【忍者】【ハーレム】【ドタバタ】
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