付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「扉の外」 土橋真二郎

2008-03-25 | 学園小説(不思議や超科学なし)
 北海道の修学旅行へ出かけたはずの高校生たちが目覚めたとき、そこは密室だった。そして彼らの前に現れた人工知能を名乗るソフィアは、ここは宇宙であり、彼らはノアの箱船に中にいるのだと告げた。
 ソフィアが彼らの前に提示したのはゲーム。娯楽であり、嗜好品を獲得するためのゲーム。勝てば嗜好品やゲームの使用権などの贅沢品が手に入り、負け続ければ水と最低限のゼリー状の栄養源だけしか供給されなくなる。だがそのうち、彼らは対戦相手が別のクラスの生徒たちでは無いかと疑い始める。
 ソフィアに従い、彼女のルールに従ってゲームをするか、それとも一切の庇護を拒否して宇宙空間しかないという扉の外へ出て行くのか……。


 とりあえず、全3巻を一気読み。事前に先に読了していた長男に「1巻読んで面白かったら、3巻の最後だけ読めばいいよ。他は“シナリオが分岐して別のゲームに入っています”程度の違いだから」と聞いていたけど、なるほど。的確なアドバイスありがとう。
 クラスで協力し、他のクラスとも協調すれば、それなりになんとかゲームをうまく切り抜けられるのに、抜け駆けしたり、自分の事情を優先したりと、結局、クラス同士は疑心暗鬼のループから抜け出せず、クラスは内部から崩壊し、最後に何人かだけが追われるように扉の外へ向かう話。
 失敗した「囚人のジレンマ」の話だね。それがクラスを変え、ゲームを変え、共通する登場人物を交えながら再話されることになります。
 でも、このオチだと、どうして教師が乗っていないかの説明にはならないよね。細かいことは気にせず、閉鎖空間でのどろどろした人間関係が崩壊していく中で、何か少しでも救いを見つけられる人向け。

【囚人のジレンマ】【ノアの箱船】【バーチャルゲーム】【テロ】
コメント
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