住宅街の狭い道を抜けると突然に目の前が拡がる。この辺りはまだ田んぼが残っている。そしてその中にはご覧のようにまだ蓮華畑が残されている。いずれは田んぼの肥やしになるのだろうが、多少の汗をかいたところで出くわすとほっと一息と言う感じである。土の匂いと草いきれが立ち上ろうとする瞬間に春の冷たい風がさらっていってしまう。
上から見下ろしていては良さがわからぬから田に入って目の高さに降りた。
そう言えば母が小学生の頃、蓮華を摘んでいると田んぼの持ち主に怒られたという話を思い出した。今時分はそのようなことはあるまいと思いながら田んぼにこっそりと降りたのだが、大きな身体がこっそりしたところで誰にも判るまい。気持ちだけでもこっそりなのである。やはり土の上は気持ちが良い。裸足がいいなと思う。