山道を上りながら考えた。とどこかで読んだことのある台詞であるが、当然のように近づくにつれ目的の山桜は見えなくなる。どの辺りかの見当をつけて歩いている。道のすぐ脇に山桜があった。これではないがまだ六分咲のようだ。ソメイヨシノほどには花は大きくはないが、遠目からでは満開のように見えるから面白い。もしかすると目的の山桜もその様に見えるかもしれん。
辺りの見当をつけて登ることにしたが、山側はコンクリートの壁が垂直に立っているので登れそうにない。上手いことに隙間があったのでそこから目的目指して登り始めた。ところが初手からロッククライミングである。手の届く木々につかまりながら上へ上へと這い上がるのである。ようやくにして目的の山桜を見つけた。根元近くから幹が二つに分かれていた。以外と大木だった。
斜面があまりにも急なので足場が悪く思うようにアングルが取れない。木の真下からでは真上が全く見えない。少し横にそれて枝をみてみたが花は全く見えないのである。灯台下暗しの逆で、下に行ったはいいが周りの木々によって上は見えないのである。