
本書は、AMAZONの検索で知った。
1985年に、NHKブックスから出た本だが、レベルの高さにびっくりした。
南アジア=仏教文化の原郷の、主に考古学的な発見の歴史から、仏教の歴史を探る企画だ。
最初の方は、インダス文明、玄奘のたどった道の遺跡中心の話で、これは、最近の本でも結構触れられている。
当時は、ブッダの育ったカピラバストゥは、ネパールのティラウラコットと比定されていて、インドのそれは、別物と考えられていたようだ。まだ、インド政府がアピールしていなかったのだろう。
そこからさらにディープな話になるのだが、最近の本ではあまり触れられていない、ガンダーラ方面の話が中心になる。
考えてみれば、ソ蓮のアフガン侵攻以来、この地域は、政治的に極めて不安定な地域となり、なかなか立ち入ることが難しくなった。特に、インド、パキスタン国境、アフガンなど。
本書が著された時期は、すれすれまだそれが可能だったようで、インド国内と同じようなレベルで、考古学的な発掘の成果から、当時、この近辺で、仏教が極めて興隆していたことを、証明する。
残念ながら、当時の発掘は、インディアナジョーンズよろしく、宝探し的な要素が強く、宝物がどこから見つかったとか、遺跡を残そうとかという、学者的な見地が、まったく欠如
していた。だから、すばらしい発掘物が、どこで発掘されたかさえ定かでなかったり、発掘された遺跡の場所すらわからなくなっているのだという。
残念だが、今の政情を考えると、さらに研究を続けるのは難しい状況だ。
当時から、バーミヤンの大仏のリスクが叫ばれていたのも、興味深かった。