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橘玲さんの、講演。ほとんど、表に顔を見せないかただけあって、満員。
本人の弁によれば、生涯2回目の講演という。
本は数冊読んでいて、最新刊の「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」については、本ブログでも取り上げた。
本講演は、その最新刊をベースによるもので、演題は、「日本国破産の資産運用戦略」。
筆者は、最新刊を「国家破産は浮ュない」という題にしようとしたが、出版社の勧めで、ちょっと刺激的な本名にしたという。
講演の8割は、本書の内容のサマリー。筆者だからあたり前だが、極めてクリヤーに、簡潔に解説いただいた。
そして、その後、黒田新日銀総裁のバズーガ砲により、大きくマーケットが変わったので、アベノミクスに対する見方の説明があった。
橘氏の資産運用法は、基本的には、マクシミン戦略。つまり、最悪の事態(ミニ)を想定して、最善の対策(マックス)を考える。
その立場からいえば、今の相場は、完全に行き過ぎ。
為替は、今の超円高と言われたレベルでも、インフレ率を考えれば、妥当な水準だったので、今は、超円安。これが通常レベルに戻るとすれば、円高に戻るか、インフレになるか。
株高も、PERで見れば、明らかに行き過ぎ。これが是正されるとすれば、やはり株安に戻るか、企業の収益が上がるかだ。
アベノミクスについても、基本的には、懐疑的。
つまりマネタリーベースを増やしても、マネーサプライが増えなければ、好景気にはつながらない。今まで避けてきた、非伝統的金融戦略である長期国債購入、日本株ETF、REIT購入も、同じく、どう効果が上がるかは、未知。
ということで、アベノミクスが成功するかは、五分五分だが、比較的短期(数年)で、その結果は明らかになる。その際、円高・株安で破綻する可能性を踏まえた、リスクヘッジ策も考えておいた方がいいのかもしれない。
質疑応答の時間もあったが、いつもにも増して、的確な質疑応答がなされたのには、感心した。
橘さんが、この道に入ったのは、金儲けが目的ではなく、金融市場、社会の仕組みに興味を持ち、勉強するうちに、その知識を共有したいと感じたからという。
人生を楽しめる程度の、経済的インフラは、欲しいと説く。
橘氏は、ミステリアスなイメージだったが、自然体で、ひじょうに好感の持てる人物だった。
ということで、有意義な講演だった。