かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

女たちの壬申の乱

2021年09月01日 | Books
今日から、9月。
やや秋めいてきたか。



本書は、出たばかり。
著者の水谷さんの本は、何冊か読ませていただいたが、オーソドックスで、奇をてらったところがなく、好感が持てる。

本書は、日本古代史のハイライトとも言える壬申の乱の前後の様子を、人物、特に、女性を中心とした視点から、再検証を試みた本と言える。
その時期は、日本書紀、続日本紀、万葉集など、当時の記録が結構残されているのだが、いろいろな潤色があることは、よく知られている。
一応、筋は、通っているように思ってはいたが、いざ、人物を中心に描こうとすると、その生年、没年、兄弟、配偶者の数など、意識的に、残されていないことが多いことに気づかされる。
故意か、重要性がないと考えられたか、わからないが、その辺もヒントとして、本書は、当時の状況、人物の心情をリアルに再現しようとしている。

とにかく当時の天皇は、奥方がたくさんいたからたいへん。
もちろん子だくさん。
それぞれに、さまざまなエピソード、推理を加えてくれているのだが、やはり中心は、持統天皇と、額田王。

そもそも壬申の乱は、天智天皇(中大兄皇子)が後継者に指名したその息子の大友皇子に対し、天智天皇の弟の大海人皇子が反旗を魔オ、見事破って、天武天皇として即位したという政変なのだが、その女性関係は、複雑極まりない。

額田王は、元々大海人皇子の妻だったが、その後、兄の天智天皇の妻になっている。
万葉集には、その三角関係をにおわせているかもしれない歌が残されている。
この額田王の娘は、十市皇女だが、その父は、何と、大海人皇子で、その夫は、壬申の乱で敗れた大友皇子なのだ。
そして、大友皇子と、十市皇女の間には、葛野王(かどのおう)がいて、3人とも、壬申の乱後も、生き残ったと考えられている。
つまり、葛野王の祖父は、天智天皇と、天武天皇になる。
当事者、どんな気持ちで、壬申の乱をとらえていたのだろうか。
葛野王にとっては、母方の祖父が、父を死に追いやったのだ。
額田王にとっては、元夫が、自分の義理の息子を死に追いやったことになる。

持統天皇は、天智天皇の娘。つまり、おじさんと結婚。そして唯一の自分の息子である草壁皇子を天皇にしたいために、義理の息子である大津皇子を死に追いやり、その後、自分の息子がそう早世してしまうと、一旦自分が持統天皇として即位し、その後、実の孫である軽皇子(文武天皇)に引き継いだ。

これだけでも何と.....なのだが、そんな話がてんこ盛り。

古代史の面白さを味わいたい人に、お勧めしたい1冊。
コメント
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