かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

教養としてのチャップリン

2023年12月21日 | Books
昨日は、関西から戻って、日本橋で飲み会だった。
シンガポール時代の同僚と、来日時にお会いすることができた。
懐かしさいっぱい。

今日は、在宅。
北風が強い。



本書は、大野氏の講演を聞いたことをきっかけにゲット。
講演では、チャップリンとディズニーとの関係が中心だったが、本書は、まさにチャップリン中心に縦横無尽に書きまくっているという感じ。
音楽の世界ではビートルズが世の中を変えたと言われているが(勝手に言っている)、本書を読むと、チャップリンは、もっと大きな意味でのエンタメそのものを変えたと言っても過言ではないことがよくわかる。
それも、自らの意思と力で強力に。

チャップリンについて詳しく知る人はそんなに多くないかもしれないが、我々世代は、昭和40年代にリバイバル上映があり、結構知っている。
その後、DVDが発達し、今は、身近に見れるようになった。
当時から革新的だなとは思っていたが、本書を読むと、そんな生易しいものではなく、命がけで、取りくんでいたことがわかる。

特にユニークなのは、チャップリンの没フィルムが、全て残されており、大野氏は、そのすべてを見ることができた世界で数人の内の1人だということだ。
この没フィルムは、シーン毎ではなく、シンプルに撮影順にナンバリングされており、どのように作品が作られ、内容が変わっていったかがわかるという。
今は、原作・脚本がまずあり、配役を決め、演技を決めという手順を踏むが、チャップリンは、頭の漠然としたイメージの演技を何度も撮り直し、大胆に当初のイメージから変えていったという。
画家がキャンバスにデッサンから絵を描き始めるイメージだろうか。
そのため、チャップリンがどのような考えで、フィルムを作っていったかがわかるという。
そういえば、ビートルズのゲットバックセッションも、音楽の世界では珍しく制作過程が、記録に残されたケースだった。

そして、ドラマチックなのは、独裁者に代表される戦争への痛烈な嫌悪。
今のウクライナ情勢と全く変わらない。
その他にも、驚くほど、今日の社会の課題、流れにマッチした作品が多く、もはや預言者と言ってもいいぐらいのレベルだ。
左よりの発言から、アメリカを追い出されたが、正しかったのは、チャップリンだったのは明白で、もちろん復権した。
この辺は、ジョンレノンと似ているか?
ジョンの場合、ニクソンが失脚したため、追い出される前に、迫害が終わったが。

単なる評伝ではなく、今の社会問題とチャップリンの活動を対比させる内容で、感動的な一書。
エンタメに興味のある方に広く、強くお勧めしたい。
コメント
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