かねやんの亜細亜探訪

さすらうサラリーマンが、亜細亜のこと、ロックのこと、その他いろいろ書いてみたいと思ってますが、どうなることやら。

北京の檻

2012年05月08日 | Books



本書は、知人を通して知った。AMAZONで1円。ほとんど新品で、申し訳ない。

文化大革命のころ、商社マンとして、中国駐在中、突如逮捕され、5年以上幽閉された。
たった40年ぐらい前のことだが、こんなことがあったのか。
そして、本書の記載は、極めてフラットで、たぶん99.9%実録であろう。

逮捕されてからの部分も興味深いが、それまでの半生についての記述も、満州時代の肌触り感がない我々世代にとっては、貴重なものだ。確かに、社会人になりたてのころは、満州生まれの人が、身近に結構いたが、今は、ついぞ見かけない。風化というか、過去の歴史になりかけているのだろう。

主人公の人生は波乱万丈。お父さんは、満鉄社員だったが、その後、満州国に転職。終戦後、帰国を許されず、本人は、八路軍や、共産党軍に徴用され、戦傷兵救護活動にあたる。1953年にやっと帰国し、NHKに就職。国際局に勤務。国際放送中国向け番組制作を行うが、その後、中国語の能力を買われて、商社マンに転身。
ところが、中国駐在中、突如逮捕され(1968年)5年以上北京監獄に幽閉される。1973年に、田中・毛会談の成果として、突如解放される。
商社マンとして、再び中国ビジネスにかかわることになり、ODA第一号である中日友好病院建設に貢献。その他インフラプロジェクトにもかかわる。その後学者となるが、今は、悠々自適なのか?

我々世代にはあり得ない人生。幸せな人生とは言えないかもしれないが、最悪の人生でもない。まさに波乱万丈の人生というべきなのだろう。

それにしても、中国がこれだけ、大きくなったにも関わらず、北朝鮮真っ青の事件が引き続き起こっている。
当時も商社マンが消える事件があり、不思議に思っていたら、突如自分が同じ目に遭うことになったという。まさに、事実無根のスパイ容疑である。恐ろしや。
理不尽というのはこのことかと思うが、この理不尽が、今でも、ぽっぽっと現れるのが中国だ。

興味深かったのは、終戦後、引き揚げたかった彼が中国共産党を支援する立場にさせられたことだ。今の中国をリードしている中国共産党は、敵対した日本のサポートを得て、国民党との戦いや、朝鮮戦争を乗り切ったのだ。空軍も、日本軍の技術があったからこそ立ち上がったものという。

ご本人の、幽閉もさることながら、日中戦争前後の庶民の様子と記した記録としても、極めて貴重な証言ではないか。

コメント
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