CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

夢十夜

2005-08-25 09:02:39 | 読書感想文とか読み物レビウー
久しぶりに読書感想文であります
夏目漱石「夢十夜」

つれつれと思いついた話を10話分
書きとめたかのような、なんというか
小話の類でもなく、童話でもなく、落語でもないが
どれともよく似た具合の10篇からなる文章であります

たかだか10篇で、しかも一つが非常に短いので
暇なときに酒でも飲みながら読むのにうってつけの
小説であり、先日も多分にもれず、
そういう具合で読んだのでありますが
何度読んでも凄い、何がって、言葉選びが並びが知識が

知識というか語彙というか
仏教用語から漢詩など、様々な言葉が
洪水というか、大盤振る舞いされていて
本当、注釈が無いと意味がわからない(ぉぃ
まあ、実際のところ意味なんぞわからなくてもいい
そんな小説であるのですが、ともかく
どこからそんな表現が沸いてくるんだと思うような
凄い単語の数々

そして、文体の形式化というか
テンポのみを意識したかのような文章運びと言葉選び、
物語は、あくまで遠くに置いた一人称
確かに自分が主人公なんだが、それを客観的に見ている
まるで他人のように思われている
よくよく考えると、自分が見た夢の説明をすると
この文体にすぐなってしまうのだが
(例えば、自分がどこかに立っている、そこは名古屋港だったように思われたとか)
それを文学として、しかも夢ならではの不条理ながらも
ひとつの物語として完結しているというのがステキ

どれが好きだといわれると、第一夜と第二夜
この描写が美しすぎるのであります
白百合と100年のときの経過について語られたというか
それだけの時間を強烈に意識させる第一夜
ああ、そうかも、そうだよなと思わずつぶやいてしまうような
ステキな終わりと切ない読後感が秀逸で
この一遍だけで、ものすごい価値があるように
若い時分から思って参りましたが、今でもそう思うのですよ

侍の悟りについて、黒い世界を書いた第二夜
ここは朱塗りの鞘から殺意の化身である
刀身の光が凄い勢いで放たれるその描写力が感涙もの
こんな表現、どうやったら思いつくんだと
何度か自分で文章書くときにパクったものでありますが(ぉぃ
ステキすぎて、また、悟りの境地が
ぼんやり見えるようなそうでもないような
苦悶となんとかという仏教的なものを感じさせつつ
それらに素養がなくても、十分その
追い詰められた状況が楽しめる秀逸な作品であります

この2編が、ともかく抜群に言葉が鋭くて
また描写が美しい、他の話でも
金魚売りの描写とか、蛇使いの行く末だとか
走れメロスみたいなのとか(・・・・。)、ともかく
どれもこれも短い中で、凄すぎる言葉が羅列されて
圧巻なのですよぅ

随所に漱石ならではの鬱憤というか
偏見というか、自分は高等だが他は下等だとでも
言いたげな具合が盛り込まれているのも心地よい
ステキなお話であります
中学生くらいなら、これを読んで読書感想文にすると
短いし、なんか何書いてもうまいこと感想文になりそうだし
なにより、11夜目を自分で書いてみたとか
くだらないオチをつけることすらできるので
超おすすめ、なんたって日本で随一のビックネームだしな

そんな具合で
小学生の感想文にも劣るような内容ながら
久しぶりに読んで感激したというお話