CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

利休にたずねよ

2009-04-04 23:17:40 | 読書感想文とか読み物レビウー
利休にたずねよ  作:山本兼一

読みました、話題の直木賞作品であります
まぁ、似非侘び数寄者にあこがれている身分として
てっとりばやく、書物で侘びさびを見られるのは
うれしいことこのうえないわけでありまして
読んでにやにやしてしまったのでありました

さて、内容は利休が自刃する日から始まり、
分断された話が、いくつか
それぞれ弟子や秀吉、妻の宗恩など
さまざまな視点から描かれていて面白かったのであります
話は、自刃の日からだんだんと過去へとさかのぼっていき
なぜ利休があそこまで美に執着するのか
それが、緑釉の小壷という物に集約されていき
やがて、その小壷は想い人との何かなのだとなっていき
その思い出が語られて、自刃後の世界に続くと
まぁ、読んでいてじっくりとうまくて
素敵だなぁと感心したのでありました

しかし、へうげもの読者にはいささか
毒のようにも思われまして
なんというかな、女に懸想するという利休が
もうひとつぴんとこないというか、まぁ、なんだろうか
若いうちにそういうことがあってというのは
論理的にわからんでもないけども
なんか、もうひとつパンチがきいてねぇなとか
わけわからんことを思ってしまったり、

結構へうげもので見たエピソードがそこかしこに出てきて
この話本当だったのかよと、瀬田の唐橋の話やら、
金毛閣の一件での石田の言いようであるとか
なんぞかんぞ、そのまま絵がうかんでしまい
なんともかんとも困ったのであります

とはいえ、茶の湯がどうしたというよりは
やはり直木賞をとるような小説だけありまして
人間描写というか、女とのそれが強くあって
ちょっと残念な印象ではありましたが
丁寧に利休の美が浮かんできて
そして、その背後にあった、女への何かというのが
なかなか話として面白いなぁと思ってたんだが
この女とのなにかしらの最期前まで凄くよかったんだけど
結末のところは、もうひとつ個人的にしっくりこなくて
なにか残念なような気がしたのでありますが
ともあれ、面白かったのであります

しかし、描く人によって
このてのものは本当に違うのだなと
改めて感激した次第
秀逸だったのは、黄金の茶室のところと、北野大茶湯だったんですが
どちらも、へうげものとは味付けが異なるけども
こっちのほうが好みの描かれ方だと惚れ惚れしました
素敵というか、楽しいなぁと頭に描かれて
やっぱ小説はすげぇと感心したり
久しぶりにとっくり楽しんだ小説でありました