CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

ラットマン

2011-08-22 23:08:45 | 読書感想文とか読み物レビウー
ラットマン  作:道尾 秀介

若い人の本を読みました
といっても、私よりいくつか年は上だと思いますが、
最近人気だと伺っております、新進気鋭の小説家だと
認識しております
この本が、氏のどういう作品なのかわかりませんですが、
読んで、なるほど、面白かった
そう、感想を覚えたので書き留めておくのです

ラットマンとは、落書きで、
人間の顔を書いた続きに書いたおっさんの顔と、
動物を書いた続きに書いたラットの姿が、
まったく同じ絵なのに、前の印象のせいで、
それぞれ人間→おっさん、動物→ラットに見える
だからラットマンというんだそうで、先入観というか、
事前の出来事による、無意識下の処理みたいな話

ラットマンという言葉は、この小説で初めて知ったのでありますが、
実際の話なのかはわからないけども、
小説の中で説明されるそれが、大局というのか、
全体に漂うそれであり、テーマでありといったところ、
いや、そういう先入観を植え付けるということすら、
その「ラットマン」という現象なのではないかと思わされ、
なんというか、よく考えられた小説だと
感心したのでありました

叙述トリックというほどでもないのですが、
すべては先入観による事件でありまして、
とある事件において、主人公やまわりが、
すべてが自分がこう思ったという一人称で話が進む
それぞれは、実際、それぞれが招いた誤解であって
真実は思いのほかつまらないといったらいけないけど、
想像力から一番遠い、そんなものかというところに
事件が落ち着いてしまう

だからこそ、途中の齟齬や誤解による、
さらに混沌と混乱を招いていく事象に続いていくさまが
かなり面白くてよかったように思うのであります
実際は、そんなに次々とめまぐるしく変化するのではなく、
ミスリードを誘い続けているなと
なんとなく読んでいてわかる、不穏なそれのまま、
それすらもミスリードというのか、
つまらない事実をいかに面白く考えていくのかに
特化していったような、不可解な事件が
続いていくのでありました

いつも大切にしている読後感でありますが、
これはそこそこよろしかったというか、
ああ、そうか、ここをオチにもってきたのかと
感心したところでありました
読み終えて、無駄がないというか、すべてが因果、
何かしらつながっていたというところが
凄くよくできてるなと思った反面、
すごくよく出来すぎているせいか、何か窮屈な話だったなとも
思ったりしたのであります

全員が救われる話ではないというか、よくよく考えてみると
とてもかわいそうな人が一人いたりして、
それを考えると、素直にエンドを迎えられないというか、
なんだか、しっくりこんなぁというところなのでありますが、
それはそれとしつつ、
些細な誤解や、思い込みによって、
大きくうねって、いろいろなことが間違っていく
もしかすると、全部が全部そうなのかもねなんて、
そういう他愛のない終わり方ではないのでありますが、

なんとも、やるせないとはいえないものの
すかっと爽やかな具合ではないのが
残念でありました、でも、面白かったのであります