「江」の感想は書かないぞと言いながら、メモ程度には書かずにはいられないことが。
何がって、安土城の美しさについてです。
天守、綺麗でしたね。今まで見た安土城のデザインの中で、一番綺麗だったかもしれません。あの装飾は貝細工なんでしたっけ。それとも七宝焼き?
たびたび名前を出してしまうけれど、目黒雅叙園にあのような装飾の部屋がありますよね。
私が
「いやあ、NHKの美術さん、がんばったよなあ。」
と、感心していましたら、夫が、
「この後、『火天の城』を見るから、そっちで感激したら。」と言いました。
そうだよなぁ。そっちは映画なんだから予算が違うわけだし・・・・
ところがね、いやいや、「江」の勝ちでしたよ。出来上がった映画の方の天守には、地味な龍の絵が描かれていました。その映画の信長の性格を思うと、似つかわしくない。まるで「風林火山」の上杉謙信のバッグにあった龍のようでしたよ。
何、考えているんだろう、この映画。
マジにそう思ってしまいましたよ。
映画の感想を、映画ブログに書かずにこちらに書いたのは、そこの所を言いたかった為なのですが、ついでなので「江」の感想をホンの少々・・・
信長、江がこれから心惹かれる設定だけあって、魅力的に描かれていましたよね。
どくろの杯のお話にも、あまり描かれてこなかった信長像が描かれていて興味深かったです。
そして、お市の方の信長への態度も、あまり大河では描かれてこなかった描き方だと思いました。この二人は、「功名が辻」での二人が印象的で、ブラコン、シスコンの二人の間に入り込めるものなしと言う印象がありましたが、「江」の中の二人は、個性がぶつかり合っているものの、かなり常識的。なんとなくそれが好感が持てました。
が、新しい城のふすまに穴を開け、障子を破くって、如何に信長と言えどもやらなかったんじゃないかなと、凄く思ってしまいました。だってサ、障子はともかく、昔のお城って、襖絵とか描かれていて、凄く大切にされていたんじゃないかしら。
だいたい、あの時槍が刺さっていたら、二回目で最終回だよって・・くだらない事を言ってしまった・・・
で、映画の感想なのですが、実はそんなには悪くはなかったです。むしろ感動ポイントも多数。(ネタバレはありです)
アレだけの城を作る訳ですから、エピソードも多数あったに違いありません。2000年の杉の木を御柱として立てるいきさつは、木を手に入れるところから立てるところまでなかなか面白かったと思います。
城を建てる棟梁に西田敏行。安定した演技力で不可などありません。それを支えた妻に大竹しのぶ。この人も同じ。
それにしても福田沙紀は可愛いなあ。
だけど多数盛り込まれた人間ドラマが、なかなか伝わってこなくて、ジーンとしたりしみじみしたり鳥肌が立ったりと言う事もなくというのは、私的には珍しい感じがしました。すぐに感情移入、すぐに涙の人ですから、私。
ただ、ラストの主柱を人の手で持ち上げて、その一番下を訂正するという、壮絶なエピソードには力が入りました。支えて引っ張る人たちの手はみな血まみれで、アレでは明日は仕事になるまいなどと心配になるほどです。死者を多数出しても、仕事を休むなと言うくらいの信長ですから、明日以降も厳しいななどと描かれていない部分にも思いが走りました。
言わば、このシーンはクライマックスなのですね。
見ごたえがありました。
そして、次のシーンではもう城は出来上がって、信長が城作りから学んだ何かそれらしい事を言って、映画は終わってしまいました。
信長は城を作った者たちを称えて、多くの松明で城を闇の中に浮かび上がらせましたとさ。
何を考えているんだろう、この映画。
と、ここで上記に書いた感想にたどり着くというわけです。
人々が苦労して建てたその城を、まったく持って私達に見せてくれません。もちろん誰も見たことのない幻の城です。
「火天の城」―安土城築城の壮絶な物語
この映画を見たいと思った時、心のどこかにワクワクするものがちょっとなかったでしょうか。
見せるのはその人間ドラマ・・・
それはそれで良いのですよ。でも作ったものが安土城なら、それは架空のものであっても、CGを駆使してももうひとつの主役を描ききるべきであったと思いました。例えそれは天守のみであってもです。
この寿命の短かった幻城の最後を知った時、築城に関わったその人たちは何を思っていたのだろうかと切なく思いましたが、もちろんこの映画には、まったく持って何も描かれていません。