《トルコ旅行記番外編》
今回の(と言いましても、すでに数か月前)旅行では、カタール航空を利用しました。
以前、「「ロスト」ロス」と言う記事内に書いたことですが
>『ところでトルコ旅行の時届いたパンフレットで、813便と言う数字を見た時に、一瞬、「マジ !?」とビビりました。見おぼえがある数字だと思ったのです。
でも墜落してしまう海外ドラマ「ロスト」の飛行機は815便だったのですよね。あー、良かった。』なんてことを言っていたのですよ。
だけどこの飛行機は、私的にはあまり快適とは言えなかったのでした。
まず席が星子さんと完全に離れてしまった事が挙げられると思います。ツアーで行く時、よく帰りはちょっと離れてとかあったりもしますが、行きから離ればなれとは珍しい事だと思いました。今までの旅行は添乗員さんが頑張ってくれていたのかしら。
12時間も一人旅かと不安に思いました。だけど救いは真夜中と言う時間帯だったのですね。
普通に寝る時間ですから。
だけど飛行機って、変な時間にお食事が出てきたり飲み物サービスがあったり、映画を見たい誘惑には逆らえないものがあるじゃないですか。そうそうは寝てなんかいないのですよね。
それなのにですよ。その映画が上手く映らないのです。映らないと言うより音声がちゃんと入らないのです。
快適に感じなかった一番の理由はそれだったように思います。
イヤホンを変えてもらったりもしたのですが、どうも接続が悪くて・・・・・・
なーんかつまらないなあ・・・・・・
そう思いながら、接続の部分を強く押し込んだりしてやっと1本を見終わり、次のをと思った時、いや、これはこんなことをしている場合ではないなと、私は急に焦ってイヤホンなどを耳から外し、急いで目を瞑りました。
と言うのは、いきなり私は飛行機に酔っていることに気が付いたのです。
この時飛行機は上へ下へと大きく揺れて気圧の波乗り状態でした。確かに経験のしたことのない揺れ方。それでも今まで、どんなに揺れても飛行機では酔わないのだと思い込んでいたのでした。
だから急激に来た
「あっ、もしかしたら私、気持ち悪いかも。」と言う感覚は、かなり衝撃的な物でした。
大昔ですが、佐渡に渡る船が大揺れで急に酔ってしまった時、休憩室の畳の上で横になり「私は床、私は船」と船と一体化したことは、酔い対策には効果があったのです。で、またも今回も「私は椅子、私は飛行機。」で乗り越えました。(ちょっと何言っているのか分からないと言われそうですね(^_^;))
だけど目は瞑っていましたが、とても眠られたものではありませんでした。
そうこうしているうちにお食事が配られる時間になりました。
なんだかげっそりとしていました。
お食事は頂きましたが、なんだか何を頂いたのか、美味しかったのかさっぱり分かりませんでした。珈琲もたいして美味しくも感じなかったし。
ところで私、この飛行機ではラッキーな事に通路側に座っていたのです。
昔・・・つまり12年前にイギリスに行った時や、更に昔の香港に行った時など、私は好んで窓際に座りました。窓際の方が窓の外の風景を楽しめるからです。トイレにたまに行きたいと思っても、通路側には知人が座っているので、何の問題もなかったのです。なんでみんな通路側が良いのかしらぐらいな事を思っていたのです。
だけど・・・・。
あーあ。歳を重ねるって悲しいなと思うのは、通路側にみんなが座りたがる意味が分かって来てしまった事なんですよね。
今回のように隣が全くの他人なら、通路側に座れたことは本当におばさん的には、助かるなあと言う所なんです。
私の横には、若いカップルが座りました。
窓際に座った女性は、ほとんど寝っぱなしで、食事が来ても私の横の男性が断っていました。もしかしたら女性は飛行機などが苦手な人だったのかも知れません。カップルでもあり、女性が寝っぱなしであったこともあって、殆どコミュニケーション無しで過ごしていました。
もちろん彼らが席を立ちたい時は、別です。ただ、昔の私がそうであったように、そうそう彼らの為に席を立つことはなかったのです。
ところがその「すみません。」を言われたのが、まだお食事のプレートが回収される前だったのです。
「ああ、はい。あっ、でもどうしようか。」と私は言いました。それで、席を立つために彼にまず私のプレートを持ってもらう事にしました。そして前に出ているテーブルを引っ込めて私は立ち上がり通路に出て、今度は自分と彼のプレートを持てば…(それとも彼の物は彼女が起きて持っていたのかしら・・・・。)とにかく彼を通路に出す事が出来るのですよね。
だけど私がテーブルを片付けている間に、とんでもない事が起きたのです。つまりプレートがほんの少し傾いて、まだ少し残っていた珈琲が私の服の上に零れてしまったのでした。
お互いに「あああ」と言ってしまったと思います。
「すみません、すみません」と彼は言い、私は服を拭き、だけど席を立ち私は言いました。
「とりあえず、ご用を済ませてくださいね。」と。
その間に彼の連れの方が席に残っているので、なんだか嫌味のようで嫌だったのですが、今それをやっておかなければ服がシミになってしまうので、濡れティッシュなどで服のケアをしました。その時、それをしながら私は少々冷静になって考える事が出来たのです。
世の中には、目に見えている部分は明らかに被害者でありながら、実はそうとは言えない事があると思いませんか。
確かに珈琲を服に掛けられたのは私です。
だけど気分がスッキリしてなくて、あまり美味しくないなと思いながら頂いた食事のプレートは、綺麗な状態に片づけられていなかったのです。珈琲の入っていたカップも雑にその上に置かれていて、そして中にまだ入っていることを私自身は知っていても、それを私はその人に告げなかったのです。揺れる飛行機、雑に置かれた珈琲カップ、中身が入ってるとは知らない・・・・・。こんなの何気なく仕掛けられた罠のようなものじゃん・・・・。
だから戻ってきたその人に私は言いました。
「これはさ、どう考えても私の渡し方が悪かったと思うの。だからこれから先は、一切この件は気にしなくて良いからね。」と。
だけど数時間後、その飛行機が目的地について降りる時になったっ時に、いつ用意したのか、二人が私に封筒を渡そうとしてくれたのです。クリーニング代にと。
私は吃驚して、その少しピンクがかった美しい封筒に目を落しました。
そしてバンバンと言うリズムで、過去に起きた嫌な出来事を思い出しました。
20歳の頃、知人の結婚式に出て、隣に座った見知らぬ夫人にジュースをドレスに零されて、それなのにおしぼりで拭かれ
「ほらっ、こうしておけばもう大丈夫よ。」と言われ、何も言えなかった昔・・・・・。
また違う時、飛行機の中で隣に座った友達に珈琲を零され、お互いに「キャッ」と悲鳴を上げたのに、
「大丈夫、大丈夫。」と自分の事だけを心配して、そして「あらッ、あなたも濡れたの。」と言いながらも一度も一言も謝らなくて、それまで信頼度が100に近かった友人の違う一面を見て、不愉快に感じた昔・・・・。
それに比べて・・・・
なーんて良い子たちなの~ !!!
育ちが良いんだなと、私は感じました。
だけど私は言いました。
「さっきも言ったけれど、あれは私が悪いんだって。気にしなくていいって言ったでしょ。」
「でもお洋服がシミになったら。」
「大丈夫。私お洗濯のスキルが高いから。」←別に高くない。単なるハッタリ。ただ、直後のケアが良かったのでシミにはならず。
「でも・・」と言う彼らは言います。こういう時、結局は受け取ることになってしまう事が多いと思うのです。だから私は更に言いました。
「旅は今から始まるんでしょ。こんな事でお金を払うなんてつまらない事でスタートさせなくて良いよ。」と。
すると
「それはあなたも同じじゃないですか。」と彼らは言う・・・。
ああ、確かにね。だけど私、まったく嫌な気分じゃなかったのです。
「じゃあさ、この後、もしもこの事を一回でも思い出す事があったら、あの人意外と良い人だったねとか言ってくれればいいよ。私もさ、これを良い想い出にするから。」と言って、その場を立ち去ったのでした。
きっと、「これを良い想い出にする。」と言われても、若い彼らの脳裏には「?」のマークが走り去ったと思います。
だけど私にとっては、やはりこれは良い想い出です。
今となっては、もう彼らの顔を思い出す事は出来ません。ただその美しい封筒のみが思い出されるのです。
一番後ろに座っていた私が飛行機から降りられるのは最後の方。
少し前に行くと、確か同じツアーの人だったなと言う方が、まだ座っていました。通路は渋滞していて、ちょうどそこで止まってしまったので、私はその方に挨拶をして、来る途中で飛行機が凄く揺れた事を話題にしておしゃべりをしました。
「初めて飛行機で酔っちゃって・・・。」と私が言うと、私の前に立っていた人がくるりと振り向いて
「私も。」と言いました。しばしの楽しいミニ(元)女子会タイム。
その人は残念ながら同じツアーではありませんでした。
お互いにこれから始まる旅にエールを送りあって別れました。
服からは、ちょっとだけ珈琲の香りがしていたかも知れません。だけどなんだかその時、素敵な旅になる予感がしました。
そしてその予感通りの旅になった事は、間違いのない事だったのでした。
機内食3回分。