安達祐実さん、第二子誕生後8か月ぶりの女優業復帰作がこの作品になったようです。
その事を伝える記事で
「産休と育休を合わせて8ヶ月間お休みをいただきましたが、人生を通して仕事を休むことに慣れていないもので、早く復帰したいという思いがありました」と職業病ともいえる本音を覗かせた。
とありました。
だからなのか、彼女、素晴らしかったです。
私、「相棒」で久しぶりに思わずハラハラと泣いてしまいました。
いや、思い出しても涙が出ますよ。
今回は本当に彼女に騙されました。
<以下はネタバレしています。再放送時に読んでくださる方は気を付けてね。>
後から誘拐事件の部分だけ考えてみると、意外と普通のお話だったように思うのです。
とは言っても、協力者のひとりが父親だとそこに行きつくまでの右京の活躍とかは面白かったし、警察内部の協力者は意外でした。あの女性警官だったとは。ちょっと可愛くて普通に端末や備品などを持ってきただけの人に見えました。
出てきただけで、「この人なんか怪しい。」と印象に残ってしまう人が多いドラマの中で、そう見えない人はサスペンスには重要ですよね。
でも不祥事で止めさせられた元警官と、仕組まれた投資詐欺にかかり自分の子供の誘拐の共犯者になってしまった子供の父親、警察内部の協力者の誘拐事件解決だけでは、こんなにも心に残る作品にはならなかったと思います。
誘拐事件の解決に向けての物語進行とは別に、もう一つの物語が進行していたのですね。
子供を失ってしまった母親の深い悲しみの物語が。
死んでしまった子供と対面した彼女は、悲しみのあまり、自分の中で別の物語を作り上げてしまったのだと思います。
自分が確認した死体は、誘拐されたヒロト君だったと。そして自分の子供は家に帰って来ていたのだと。
実は私、彼女が作り上げてしまった物語の方を推理していました。
つまり彼女が対面したのは自分の子供ではなくヒロトなのだと。
子供と対面したのは彼女一人だったし、服を着替えさせて名前のはっきり分かるものを持たせていたら、子供のすり替えって出来たんじゃないかと。だからこの時は何らかの形で、彼女も共犯なのかと勘違いしていました。
でもだから、そこが「フェイク」なんですよね。
犯人確保の後に誘拐された子供がちゃんと助かって吃驚しました。
だって子供が三人になってしまうじゃないですか。
どういう事 ?
「あっ、『ダヴィンチ』か 。」って、そこでやっと気が付きました。
「ダヴィンチ」と言われても、「メディカルチーム レディ・ダ・ヴィンチの診断」を見ていない人には、さっぱり分からない事だと思うのですが、子供は、その死を受け入れることが出来ない母親の幻影だったのです。
警察からの帰り道、ぼんやり歩いていた彼女が急に、大胆な笑いを浮かべ
「みんなバカよね。」と言った意味がこの時に分かって、更に悲しみが増しました。
さながら彼女の演技に騙されてバカだと嘲り笑ったように思えたのに、実は
「翔太は死んでなんかいないのに、死んだなんて言ったりして、みんなバカよね。」と思わず笑ったのだと思います。
最後の公園での安達祐実さんの演技、本当に素晴らしかったですよね。
ふたりのお子さんのお母さんになった彼女だからこそ、伝わってきたものがあったのかもしれません。
シナリオも良かったけれど、やっぱりそれを生かしてくれるのは演じる人なんだなってしみじみと思いました。
(でも演じる人がどんなに頑張っても、シナリオがダメだと、どうしてもドボンになってしまうってのもあるよねとだけは付け加えさせて・・・)
で、今回のシナリオは
「物理学者と猫」を書いた徳永富彦さんでした。
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