ついてこられるならついて来い、受け取れるのならば受けと取れば。
この芝居が始まった時、そういう類の演劇なのかなと感じてしまった。なぜなら、物語は単純でも、ストーリー展開は難解だ。登場する役者は三人、背景はない。ただ登場人物は三人ではなく、セリフ一つで場面が変わっていく。
観客の知識の素養と想像力の助けを要求される。
だけど、すぐに「言葉の響き」と言うチケットにパラレルワールドの門が開く。
物語をたどるのも私の力では力量不足だが、とりあえず粗筋だけでもチャレンジしてみよう。
月の周りを回りながら内蔵保存の目的のためにクローンを保管している倉庫船の管理人三人がいる。コールドスリープを繰り返しながら、30年、月の周りを回っている。次は、オルガのコールドスリープの番。だけどオルガは言う。
「僕は、コールドスリープはあまり好きではない。眠りに付く時に悪夢をみるから。」
残された二人の管理人は有り余る時間をキャッチボールなどをして過ごしている。一人の青年クリスは子供のときの孤独な時間をボールを夜空に放り投げて戻ってくるまでの間に星座をおぼえて過ごしていたと告げる。そして、星座の物語を作ったり。
「私たち、何も知らないね。」と少女の管理人が言った時、船に異常を知らせるサイレンが鳴り響く。船は軌道をはずれ、オルガが居ないと告げられる。
場面は変わり、オルガが踊っている。でも彼はオルガではない。オーデションに落ち惨めな思いで、家に帰ってきたトシカズを待っていたのは、妻にはデレデレだけれど、子供には無理解な頑固な父だった。無理解だけれど、家の要は自分と自負している昔ながらの日本の父だった。どこかユーモラスな父と子の言い争い。その時警報が鳴る。爆弾が落ちる地響きに倒れる家族。
クリスとレナ(名前がよく分かりません。仮にと言う事で)は、倒れているオルガを見つけるが、彼は船に他の誰かが乗っていて、後ろから殴られたのだと言う。いったい誰が・・・、その時三人は地下の倉庫に閉じ込められてしまった事に気がつく。
こんな風に場面は変わっていく。
あるとき、レナは元娼婦の教団の教祖だったり、母さんだったり、家出少女のカズミだったりする。クリスは父さんだったり、星売りの男だったり、家出少女の面倒を見る人のいい男だったり、救いを求める男だったりする。オルガはトシカズだったり、教祖を信じ切っている教団の男だったりする。
どんどんどん、ドアを叩く音、押し寄せる多くの者の気配がする。
目覚めたクローンたちが閉じ込められた部屋に押し寄せる音。ハルマゲドンの時を向え、安全な家に住む家族の家に救いを求める人たちが押し寄せる音。教祖を弾劾する人々が押し寄せる音。それぞれのストーリーにクライマックスが訪れる。
この劇は、ストーリーよりも繰り返されるセリフにメッセージがある。でも、これってなんなのとははならない。それなりの答えが用意されているから。
クローンにドアが破られて、暗転する。倒れているクリスとレナを起こすオルガ。
「早く起きてください、時間ですよ。」と、冷静に言うオルガ。そして、異常は治しておいた、私たちがクローンなのだとも伝える。驚くレナに、クリスは、実は、これは、教団がおこなっているシステムアップのカリキュラムだと打ち明ける。驚くオルガ、すると、レナが「今までご苦労様」と伝える。二人は、ハルマゲドンのその時、逃げ込んだコールドスリープのカプセルの中、覚醒し続ける孤独な意識が作り出した世界の人格だと伝える。
好きな真実を選べばいい。もしかしたら、全てはオルガノ悪夢なのかもしれない。
感想書くのに少しは筋も必要と思いましたが、疲れ果てました。本当に書きたかった感想は次に・・・