「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

食の安全~BSEに備える~

2007-05-25 18:30:22 | 社会問題
食の安全、“豊洲の土壌汚染”だけでなく、
総合的に考えていく必要があります。

そして、『BSE』も大事な話。
俗に言う狂牛病です。

昨日5/24、
独立行政法人動物衛生研究所
(旧、農林水産省家畜衛生試験場)
プリオン病研究センター・プリオン病研究チーム長
横山隆氏によりますご講演『プリオンとは何か?』を
聴講して参りました。

私の尊敬申し上げます小児科医師松永貞一先生を中心とする
葛飾区医師会の感染・免疫懇話会の主催で、行われました。

私の学んできましたことを、
ここで、お伝えいたします。

一番大事なことは、横山先生がご講演の一番最初に
述べられたことですが、
「まだ、十分に解明されていないことが多い、わからないことが多い」
ということです。

よって、ここでは、横山先生のご講演で学びましたことを
私の精一杯の解釈で誤りなく書いたとしても、
今後の科学の進歩で、訂正も追加もありうることを、
まずご承知下さい。

****以下、講演内容まとめ****

私たちに病気をもたらす病原微生物は、
細菌、ウイルス、真菌、寄生虫など様々ありますが、
プリオンというものも原因になるのです。

まさに、『BSE(牛海綿状脳症、俗に言う狂牛病)』の原因は、
『異常プリオン蛋白質≒プリオン』というたんぱく質です。
よって、『プリオン病』という呼ばれ方もします。

異常プリオン蛋白質を食べる。(経口感染と言えます。)
牛なら、BSEの牛から作られた肉骨粉の飼料を食べる。
ヒトなら、BSEの牛を食べる。

異常プリオン蛋白質が腸管から体内へ。

異常プリオン蛋白質が脳内へ移動。

異常プリオン蛋白質が脳内に蓄積

脳の細胞に空砲ができ、
脳がスポンジ(海綿)状になる。

発病

病気の特徴は、
①長い潜伏期
(異常プリオン蛋白質が体内に入ってから、
発病するまで、長い時間がかかります。)
②中枢神経系に病変が限局
③よって、症状は、行動異常、不安、知覚過敏症
④治療法がなく、死に至る病気

結局、異常プリオン蛋白質を食べなければ、
うつらないのです。よって、厳密に言うと、
他の病原体がうつるのを「感染」というのであれば、
異常プリオン蛋白質は、「伝達」と表現されたりします。

『異常プリオン蛋白質』というからには、
『正常プリオン蛋白質』とうものもあって、
この二つのアミノ酸配列は同じなのです。
たんぱく質とは、アミノ酸がつながったものを言いますが、
その配列は同じなのだけど、その立体構造が異なります(構造異性体)。


今、『正常プリオン蛋白質』の働きは解明されていません。
『正常プリオン蛋白質』を持たないマウス(ノックアウトマウス)を
実験的に作っても、正常に発育します。

脳内に進入した『異常プリオン蛋白質』は、
『正常プリオン蛋白質』と結合し、結合した『正常プリオン蛋白質』を
『異常プリオン蛋白質』に変換してしまうのです。
この変換が、繰り返され、脳内に『異常プリオン蛋白質』が蓄積し、
発病に至ります。
すなわち、
『正常プリオン蛋白質』+『異常プリオン蛋白質』=『異常プリオン蛋白質』


ヒトも『正常プリオン蛋白質』をふつうに持っています。
動物の種を越えて、似通っています(高い相同性)。
似通っているがゆえに、
BSEをきたした牛の『異常プリオン蛋白質』が、
ヒトに伝達され、
同じ病気の範疇の『変異型クロイツフェルト・ヤコブ病』を
ヒトが発症することになります。
不思議なことに、BSEの牛から感染(伝達)するのは、
牛同士や、ヒトの他に、マウス、ラット、
ネコ、サル、ヤギ、羊などがありますが、
イヌやハムスターには、感染(伝達)しません。


では、BSE対策のポイントはどこか。
①BSE牛⇒牛 の感染を防ぐ
BSE牛から作られた汚染骨肉粉を用いない。
すなわち骨肉粉の慎重な取り扱い

②BSE牛⇒ヒト の感染を防ぐ
BSE牛からの食材を食べない。
とくに特定危険部位
(脳、脊髄、眼、小腸の末端部位、扁桃など)は、食べない。

③感染したヒト⇒ヒト の感染を防ぐ
(BSE牛から感染したヒトを、
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と言います。)
感染したヒトからの輸血をしない。
感染したヒトに用いた医療器具は、
プリオンを不活化を十分にして用いる。

以上、

BSEのまとめでした。



②BSE牛⇒ヒトでいうと、
現在、日本の肉牛を食材にした時、
その肉牛をすべて検査に出し、
BSEでないか、チェックしていると
聞きます。
調べるからには、
肉の食材には、きちんとした
“トレーサビリィティー”の
確立が大切です。

プリオンを食べなければ、
発症しません。
食の安全をきちんと守れば、
きちんと対処できる病気なのに、
食の安全をおろそかにするヒトや国があると、
ヒトを死に至らしめる恐ろしい病気になります。

政府はそのあたりをきちんと行う、
チェックする責任があります。
治療薬がない以上、
BSEから国民を守ることができるのは、政府です。







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