「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

今週号アエラ 抗生物質と耐性菌の問題が記事に

2007-05-30 06:29:01 | 小児医療
今週発売中のアエラ(07/06/04)に、
以前、当院にも取材(07/05/08)があった記事が
掲載されています。

「抗生物質乱用の代償 子どもに薬が効かない」
かぜでも何気なく処方されてきた抗生物質。
乱用で、高度な耐性菌が出現、
抗生剤が効かない子どもたちが急増している。
自衛手段はあるのか。
編集部:柏木友紀記者の記事。

この記事では、
【問題点1】
総合病院に肺炎などで入院して、
抗生剤が効かない耐性菌のため、
治療に難渋し、長期間の再入院、再々入院を
せざるを得なかったケースが紹介されている。
細菌には、抗生物質が今まで効いて来たのが、
効かなくなったのである!!

【現状分析1】
具体的に、
聖路加国際病院小児科で4月の肺炎入院患者26件
原因の細菌
19件肺炎球菌(この18件が耐性菌)
6件インフルエンザ菌(この2件が耐性菌)
注、ここでいうインフルエンザ菌は、
冬場流行するインフルエンザウイルスとは別物です。

【現状分析2】
北里大学北里生命科学研究所
砂川慶介教授(感染症学)によると、
90年代末から耐性菌は急増。
砂川教授によると
「耐性化率と抗生剤の使用量は、明らかに相関があります。抗生物質の処方率が低いオランダでは耐性菌はほとんど問題になっていません。日本は世界でもずば抜けて抗生物質の使用量が多い国の一つで、耐性菌の増加は深刻な問題です。」
砂川教授の調査 
<耐性インフルエンザ菌の割合>
2000年10月~01年7月
高度耐性菌29% 耐性菌8% 耐性菌でないもの63%

2004年1月~6月
高度耐性菌60%!! 耐性菌6% 耐性菌でないもの34%

【現状分析3】
同内容のことは、
日本外来小児科学会
草刈章医師もいう。
「日本の医療はこれまで、一つの薬で広範囲の菌に効く薬をとりあえず処方するという方向だった。代表例が甘くて口当たりがよいセフェム系の飲み薬。だが、様々な菌に作用するので次々に耐性菌を生む。原因菌を突き止め、本当に必要な時にピンポイントで効力を発揮するものを選択しなければ。」

【問題点2】
抗生物質を使うとデメリットの方が多いのである。
高槻赤十字病院小児科の林敬次医師は、
世界中の論文を分析し、
「抗生物質にはかぜの症状を軽くしたり、早く治したり、肺炎などの合併症を予防したりする効果はなかった。逆に抗生物質によって腸内菌が減少することで下痢や、耐性菌が出来て治療しにくくなるデメリットの方が大きい。」


アエラの記事は、対策についての分析は、以下のように述べている。
【対策1】
『欧米では、80年代後半から抗生物質の使用抑制策を国が次々と打ち出し、法規制や国立の感染症対策部門が乱用を禁止する勧告を出すなど対策が進んでいる。
 だが、日本は、医学界の各分野別にようやく動き始めたばかりだ。01年に日本感染症学会と日本化学療法学会が初めて抗生物質の乱用防止を呼びかける指針を作成、04年には日本小児感染症学会や日本小児呼吸器疾患学会が(抗生物質の)適正使用の指針をまとめ、翌年日本外来小児科学会が「かぜには抗生物質は処方しない」とする具体的な治療法を提唱した。
しかし、これらはあくまで各学科単位の強制力のないガイドラインで、厚生労働省や国立感染症研究所からの統一的な動きはない。』


よって、
患者さんが自衛する手段は、
【対策2】
北里大の砂川教授のアドバイス
「まずはかぜなどで抗生物質をむやみに欲しがらない。処方前には慎重な検査を受け、何の菌に効くためのどんな抗生物質なのか質問する。大事なことは、処方された抗生物質は用法を守って最後までのみ切ること。途中でやめると原因菌が死なず、耐性菌かする可能性が高いからです。」

【まとめ】
多くの医師が、
①抗生物質の適正使用の必要性を訴え、
②それがないが故の、抗生剤に効かない耐性菌の出現を危惧
しています。

③かぜは、ウイルスが原因の大部分であり、
抗生物質は効きませんので、ご注意下さい。


参考までに、私が抗生物質について解説した記事
『こどもの風邪と抗生剤(抗生物質)』
http://www.tokyochuo.net/meeting/doctor/2005/04/index.html

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