「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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世界第二位の経済大国の地位をゆずる日

2011-01-29 10:07:54 | マニフェスト2011参考資料
 2011年、覚悟はしていたが、その日が来た。『中国GDP世界2位』1月20日夕刊第一面のトップの見出しであった。ただ、私の危機感に反し、次の日の各紙朝刊で第一面扱いをしていなかったのは拍子抜けではあった。
 中国国家統計局が今月20日発表した2010年のGDPは、名目ベース39兆7983億元(5兆8895億ドル)、一方日本の名目GDPは5兆4778億ドルで中国を4000億ドル下回ることが予想され、1968年に西ドイツ(当時)を追い抜いて手にし、かつ、42年間にわたって保ってきた「世界第2位の経済大国」の地位を中国に譲ることになった。米国に日欧を加えた先進国主導から、伸び盛りの巨大市場をもつ中国のような新興国へと重心が移る流れが決定的となり、まさに、世界経済の歴史的な転機と評される事象であった。さらに、IMFによると、2015年には、中国の名目GDPが日本の1.5倍、米国の半分を超えると予測、英国の銀行などは、2020年には米国も抜いて世界首位となる勢いであると分析する。(ただし、1人あたりGDPでは、日本が42,431ドル、中国4,412ドルで、中国は日本の10分の1である。)
 ただ、それは、中国経済の一面でしかない。中国には、さらに地下経済なるものが存在し、その規模は、「表のGDPの半分近い数字である」とも言われ、これを入れるなら、すでに現段階で、中国は、日本の経済規模の1.5倍ということになる。
 地下経済というと、ドラッグや売春、賭博を巡って流れる非合法なアングラマネーを想像するが、中国では、それらは一要素にすぎず、たとえば官僚への賄賂としての高級酒や高級タバコの金券としての流通、交換レートが有利でかつ迅速な海外からの地下送金やマネーロンダリング、銀行では不可能な無担保での個人や企業融資をする民間金融など、地下経済の規模も一般社会との関わりの深さも桁違いに大きいのである。いまや地下経済は、税金や統計とも無関係であるが、現実社会では雇用など一定の役割を果たし、一種の緩衝力の機能を有し、かつ、治安や社会の安定に無視できない貢献をしている。地下経済は、第二経済ということができるであろう。
 
 さて、今後の中国の行方を占うとき、避けて通れない変化のひとつが“民主化”である。中国が民主化されれば、「よりわかりやすい国」「より話の分かる国」になるという願望がベースにあるがこれは、誤解であろう。
 そもそもアジアに欧米的民主主義-なかでも二大政党制が適しているのか問題である。宗教や階層による根源的な対立を抱えていない国が膨大で気まぐれな浮動票を争った場合、混乱が起きる。国民の人気取りのために政策のバーゲンセール状態に陥った政権は、国益さえさらしても人気取りに奔走することになる。
 すでに、民衆の圧倒的支持を背景にした当局は、法を無視して暴走し、被疑者の権利を省みず、裁判の結果さえ最初から決まっていたような無法状態の例が散見される状況である。中国がたとえ民主化がなされたとしても、共産党独裁が民主独裁に代わっただけのことで、法治の観念など権力にも民衆にもない以上、民主主義は機能しないであろう。
 今、中国では、不満を募らせる民意をなだめるために、本来ならば経済的な潤いが必要だが、国有経済に富が偏る事を避けられない中国は、世論誘導や治安維持に多大なコストをかけている。
 ただ、民主化がなされていないものの、中国社会は、危機に対して強いという利点がある。それは、地縁や血縁に根付いた相互扶助のネットワークが機能したからである。そしてそのネットワークは、地下経済でもあり、地下金融でもあった。日本にも、地下金融があったが、経済発展の過程で急速に消えていった一方、中国では、前述のようにGDPの半分の規模であり、それが、マフィアの資金源としての負の部分もあるにはあるが、それ以上に、経済の潤滑油ともなっているのである。マネーロンダリングやコピー商品に対する外国から圧力のために、及び地下経済を表化し税金をえるようにするために、中国政府が強硬姿勢で取り除こうとするなら、その与える影響は甚大であろう。

 中国ほどの地下経済はないものの、今の日本も真の意味で民主化されていない点でいうのであれば、国益よりも人気取りのための政策づくり、民衆の圧倒的支持を背景に法の精神を逸脱する行政運営、世論誘導をマスコミを用いて行うことなど問題点があるように感じる。
 私の立場でいうならば、中央区政の民主化とは?。科学的な裏付けのもと政策をつくり、それを早い段階から情報公開し、議会十分に熟議し、少数意見を尊重しつつ多数の合意形成を得ていく時間とコストはかかるが地道なプロセスにしかないと改めて考える。

*参考文献 『中国の地下経済』 富坂聡 著  文藝新書 2010年9月20日 第1刷発行 
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