築地市場移転問題
土壌汚染土地(豊洲新市場用地)購入についての公金支出金返還請求裁判のご案内
皆様、日頃より築地移転問題にご注目いただきありがとうございます。
平成22年5月24日、東京都知事他関係局長等5名に対して提訴した「公金支出金返還請求訴訟」は第8回目の公判を迎えます。
現在入口論(訴えの期間について)の段階で激しく争われていますが、このまま入り口論の論争を継続しつつ、本題に入れるかどうか、いよいよ裁判所が方向を示すと思われます。
是非ご注目頂きたく、下記ご案内いたします。
一人でも多くの傍聴をよろしくお願いいたします。
公判公金返還請求訴訟 (第8回公判)
期日:2012年3月12日(月) 11時00分~
場所:東京地方裁判所522号法廷
・30分前、1階ロビーで集合しています。 公判後の報告会もあります。(いつもの弁護士会館とは別な会場ですのでご注意ください。当日ご案内します。)。
今月2日に残りの土地の購入に関する住民監査請求を700名の請求者分の提出をしました。
これも加え、東京都の財政支出に鋭く迫り、責任を追及して行きたいと思います。引き続ご注目をよろしくお願いいたします。(新たな住民監査請求の提出について後述いたします。)
〒104-0052 中央区月島3―30-4 イイジマビル1F
築地市場移転問題裁判原告団 事務局 TEL;03-5547-1191
原告団HP::http://tsukiji-wo-mamoru.com/_src/sc260/sign.png
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汚染地(豊洲市場用地)購入関する住民監査請求 提出のご報告
3月2日(金) 築地仲卸を含む都民・都内法人700名の請求者が 東京都監査委員あて、土壌汚染地(豊洲新市場用地)購入関する住民監査請求「東京都職員措置請求書」を提出しました。監査請求書は別途ご案内しますが、概略は次の通りです。
平成23年3月、4月に東京都が1162億円で取得した市場用地23.5㌶は、汚染無しの単価であり、平均1平米あたり49万円というかなり高い購入価格でした。結果的には汚染対策費用464億円(汚染対策工事契約金額542億円から東京ガス協力金78億円を差し引いた額)の内23.5㌶分の面積按分で292億円を東京都が負担する事となりました。
東京都公有財産規則第47条には「財産の取得に係る予定価格は。適正な時価により評定した額をもって定めなければならない。」と定められています。汚染があるのが判っているにもかかわらず、汚染の除去費用を差し引かない価格の評定は著しく適正さを欠いていると言えます。更に地方自治法2条14項では「地方公共団体はその事務処理に当っては(中略)最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」また地方財政法4条1項では「地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならない。」と定めています。
これらに照らせば、今回の土地取得に関する公金支出は不当かつ違法であることは明らかです。
私たち請求者は、東京都監査委員に対し監査を求め、東京都が被った損害を回復するため東京都知事に対し、損害額の返還を求めるように請求することにしました。
私たちはこれまで土壌汚染地(豊洲新市場用地)購入関する住民監査請求を3回行っています。
平成22年4月1日に行った監査請求は平成18年の土地13.7㌶の購入分に関してのものです。監査委員からは請求の期間1年を超えて経過していることを理由に却下されましたので、5月24日「公金支出金返還請求訴訟」を提訴、現在裁判は続いています。
次に平成22年12月6日、残りの23.5㌶の土地の購入に関して、予算執行差し止めのための監査請求を行いました。監査委員は土地の価格が決っていないことを理由に「監査の前提を欠く」として請求を退けましたので平成23年2月17日「公金支出金差止請求」を提訴しました。その後土地の価格が決った段階で改めて住民監査請求(平成23年3月30日)を行いましたが、都は提訴中を理由に請求を却下しました。地方自治法242条の2第1項1号は「差し止めの請求」ができると明文で認めていますから、都監査委員の行った「門前払い」は住民の権利を無視した不当なものです。
今回の監査請求は、請求を却下する理由は見当たらないので当然監査は行われるものと考えますが、万が一請求が退けられた場合は、東京都知事に対し損害額の返還を求める「公金支出金返還請求訴訟」を提訴する予定です。 【以上監査請求提出報告】
平成24年3月2日
〒104-0052 中央区月島3―30-4 イイジマビル1F
築地市場移転問題裁判原告団 事務局 TEL;03-5547-1191
http://tsukiji-wo-mamoru.com/_src/sc260/sign.png
****追加説明****
【先行している公金支出金賠償請求裁判で、もぎ取った78億円】
先行して購入された市場用地、全体の1/3、購入金額720億円分については前述通り、平成22年5月24日「公金支出金返還請求訴訟」として東京都知事他関係局長等5名に対して提訴、裁判は続いています。
同年1月の朝日新聞のスクープを発端に住民監査請求、裁判と都の責任を追及した結果、逃げ切れなくなった都は汚染原因者である東京ガスと「協議」を行い、結果、昨年東京ガスが都に汚染対策費542億円の一部の78億円を「協議金」として支払いました。この様に裁判の「効果」は確実に出ていていますが、この「協議金」の決着は、都が残りの汚染対策費464億円を東京ガスに対して免除したことになります。汚染対策費の残金は市場の使用料で賄われる市場特別会計から拠出することになりますが、そもそも都は市場関係者に対し汚染の実態を伏せ、安全宣言を繰り返してきたのです。汚染が発覚するとその第一の被害者が「ツケ」を払うという理不尽な結果になっていますが、新たな住民監査請求と共に東京都知事等の責任を徹底して追及したいと思います。
【汚染地の価格は汚染の「除去工事済み」と「拡散防止工事済み」では大違い】
東京都は汚染の「拡散防止工事済み」に過ぎない土地を「除去工事済み」扱いとしてきました。
平成18年11月10日財産価格審議会(議案25号)によれば、評価条件として、「土壌汚染は存在しない更地として評価する。」さらに「適切な処理対策が実施され、その作業が完了しており、現在、汚染物質は存在しない。」としています。ところが、実際東京ガスが行った汚染対策工事は「拡散防止工事」に過ぎず、土壌汚染対策法の規定する環境基準を超える汚染物質が大量に残置されていたことは、平成19年に設置された「専門家会議」でもあきらかになりました。
掘削除去が汚染対策の主流であることを、社団法人 土壌環境センターの大野副会長は平成21年4月14日、国会の参考人として、次のように陳述しました。「不動産鑑定の(中略)留意事項の中では、指定区域が解除されない限り汚染の存することを前提として鑑定評価することというふうになっております。つまり、盛土・封じ込め対策では指定区域の解除ができず、不動産鑑定上では依然としてきずものの土地として扱われまして、指定解除までの費用を考慮しなければならないということになったということがあると思います。」指定解除される状態=汚染が除去されたかどうかが、一般的な不動産の評価としては重要だとされていると述べているのです。
また都財務局が汚染地の評価について準拠するという、国土交通省事務次官通知として発出され施行された「不動産鑑定基準」および「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」においても、土壌汚染対策法の指定がされているか、また指定が解除されているかなどが価格形成に重大な影響を与えることがあるので留意すべきとしています。
都環境確保条例による「対策済み」を隠れ蓑に、汚染を無い事として扱って来た経緯が、これらの住民監査請求や裁判で明らかになりつつあります。今後とも是非ご注目ください。
【築地移転問題の状況】
1月20日、東京都は2012年度の予算案を発表し、都が14年度中の開設を目指す豊洲新市場の関連費用、607億円(▽土壌汚染対策工事費581億円▽建設工事実施設計費13億円--など)を計上したことが判かりました。都は12年度から一部施設の工事に着手する予定としています。この様に東京都は文字通り泥沼の計画地・豊洲へと足を踏み入れつつあります。年度末予算議会に向け都は「外堀を埋めた」かの様に喧伝しますが、残された問題は少なく無く、開場の目途は依然立っていません。
【国が市場の認可の条件とする2点は、クリアする見込みが立っていない】
築地では業界最大の水産仲卸の組合は「移転反対」の機関決定がされており、以前に行われた青果の仲卸のアンケートでも圧倒的に多数が移転に反対しています。又ここに来て、他業種[買参]の組合理事長からも、建物の基本計画に対し「コストが掛かりすぎ」という根本的な批判も出てきました。実施設計は到底まとまる状態では無く、都の予定している12年度着工は不可能と思われます。このように、市場開設について認可者の国が条件としている「業界の合意はあるか」は合意の目途が立つどころか日を追って問題が顕在化しているのです。
国が注視するもう一点は移転先の豊洲の「安全が確保されたか」ですが、こちらも開場の認可に係わる重大な問題を残しています。移転先の予定地に対し、東京都は昨年11月、土壌汚染対策法上「汚染地」として指定しました。指定を解除するためには、汚染物質の除去が必要ですが、都はヒ素・鉛について一部の汚染(基準の10倍以上)を除き、環境基準を超える大量の汚染を除去しない方針です。従ってヒ素・鉛についての指定解除はそもそも無いのです。2010年4月改正土壌汚染対策法が施行されたことにより、この問題が明らかになりました。改正法に関連して昨年3月農水省は「指定が解除されないままの場合」について「生鮮食料品を取り扱う卸売市場用地の場合には想定し得ない」と、見解を述べています。つまり東京都は、既にして認可の取得が絶望的な市場開設事業に4300億円の公金を投じつつあるのです。
【さらに残る汚染と軟弱地盤問題】
残置汚染はヒ素・鉛ばかりでは無く、法の基準(深度10m)に満たない調査や、3.11の液状化による汚染移動が未調査であることなどにより、大量の対策不足が生じるのは必須で、特に汚染の規模の大きいベンゼンやシアン化合物の残置が問題となります。法的な汚染除去の確認期間(2年間)も待つことなく、本体工事に着手という破綻したスケジュールですから、どの段階を切っても「安全の確保」には程遠い計画です。液状化対策も対策不足のエリアは半分近くあり、液状化による残置汚染の噴出の危険はもとより、地震による地盤沈下、護岸と地盤の移動による建物の損傷などの恐れは、依然大きく残ります。
[文責 一級建築士 水谷]