「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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「法学未修者教育についての法曹養成制度検討会議委員 意見」に思うこと

2012-12-30 12:34:59 | 教育
 自分も法科大学院生のひとりです。
 それもそのうちの「法学未修者」にあたります。

 まさに、自分が受けている教育に関しての意見が出されていました。

 意見に書かれている部分、もし、以下のような教育がなされていたなら、その法科大学院の学生は、とても苦労するのではないかと思います。
 それは、既修/未修に関わらず、問題があるように思います。

 ただ、憲法学は、違法審査基準は、とても教えるのが難しい分野。
 憲法学の学者先生でないと教えきらないのではないでしょうか。



****抜粋****
例えば、

○憲法のある教員は、憲法の30時間の講義の中で、 国会についての講義は1時間のみで、また憲法の分野できわめて重要な違憲審 査基準も教えなかった、という。

○また、民法のある教員は、民法総則の講義で、 その時間の多くをテーマの一つにすぎない錯誤に使い、期末試験でも繰り返し 錯誤から出題していた、というし、

○民事訴訟法のある教員は、これも民事訴訟 法の分野できわめて重要な多数当事者訴訟の制度を全く取り上げなかった、と いう。
**********

 法科大学院の教育に望むことは、既修/未修の枠にとらわれず、多様な学部から学べるような場にし、結果、多様な分野に法律を理解したひとを増やすのが必要ではないかと思います。
 特に社会人でも、法律を学ぶ機会をつくるため、夜間の法科大学院を全国展開するのがよいと思います。
 


****法務省ホームページより*****
http://www.moj.go.jp/content/000105359.pdf

法学未修者教育についての意見

平成24年12月25日 法曹養成制度検討会議委員 和田吉弘

前回(第5回)の会議のテーマであった法学未修者教育について、補足的に意 見を述べさせていただきたいと思う。

1 現状について
 一般に、適切な教育のことは表に出やすいのに対して、不適切な教育のことは表に出にくいものである。ただ、私のところには、法学未修者教育の不適切 さについて、以前お伝えした話以外にもいろいろな話が伝わってきている。と くに、それぞれの科目の全範囲にわたって授業をすることが期待されているの にその一部しか扱わない、という不満が学生の間に多い。これは、前回丸島委 員からお話のあった法学部と同様のことであるが、法科大学院制度創設の際、 法学部から法科大学院へ移籍した多くの教員に、きちんと法曹養成をするとい う抜本的な意識改革が残念ながらなかったためである、と思われる。

 具体的な例をさらに挙げさせていただければ、多少法律の内容の話になって 恐縮ではあるが、例えば、憲法のある教員は、憲法の30時間の講義の中で、 国会についての講義は1時間のみで、また憲法の分野できわめて重要な違憲審 査基準も教えなかった、という。また、民法のある教員は、民法総則の講義で、 その時間の多くをテーマの一つにすぎない錯誤に使い、期末試験でも繰り返し 錯誤から出題していた、というし、民事訴訟法のある教員は、これも民事訴訟 法の分野できわめて重要な多数当事者訴訟の制度を全く取り上げなかった、と いう。もし正しい実態調査をすることができるとすれば、これらと同様の数多 くの例が横行していることが明らかになるであろう。

 そもそも、初学者に分かりやすく教えることなど全くできないという教員や、 自分の狭い専門以外のところになると、学生に教える基本的な知識も不正確で 勉強の進んだ学生から間違いを指摘されることもある、という教員も珍しくは ないようで、これらについても学生の不満が大きい。いずれも司法試験に合格していない学者教員の話である。 もちろん適切な授業をしている学者教員も一部にいることは確かであるが、上の話には名の通った大学での話もあり、平均的な学生の本音の声に耳を傾け れば、上のような話が決してごく一部の大学のみのことというわけではないこ とが分かると思う。他方で、実務家であれば当然にいい教育ができるわけでは ないことも確かであるが、それは、運転免許が教習所のいい指導員になるため の必要条件ではあっても十分条件ではないのと同様のことである。

 なお、上のような実態が、授業評価アンケート、認証評価その他でチェック されたり是正されたりしていないというのも、制度として重大な問題であると 思う。


2 中教審のワーキンググループの2つの案について

 中教審のワーキンググループが考えているような共通到達度確認試験を導入した場合には、教員も学生がその試験でよい点を取れるような授業を行わざる を得ないようになるであろうし、その限りで試験対策も行われるようになるで あろうから、私としてはその案に賛成したいと思う。もし本当にうまく運用で きるのであれば、上のような話も解消されることが期待できるであろう。

 ただ、私は、教員にそのような確認試験の導入に耐えられだけの教育力があ るかというと、一部の法科大学院を除き、多くの法科大学院では難しいように 思う。自分自身がそのような確認試験に十分答えられないという教員も相当程 度いると思う。なお、そのような確認試験の試験対策となる授業は歓迎されな がら、司法試験の試験対策となる授業は禁止されるという矛盾も、改めて浮き 彫りになるであろう。

 1年次は憲法・民法・刑法などの基本的な法律科目をより重点的に教育する という案についても、基本的に賛成であり、なぜ法科大学院制度が創設された 初めの段階からそのように考えられなかったのか不思議にさえ思う。ちなみに、 ある法科大学院では、かつて、未修者コースの1年次の前期に行政法を配置し ていたが、民法や民事訴訟法を学習する前に行政法を学習させるというのはあ まりにも無茶な話で、その法科大学院は、法律の学習にも合理的な積み重ね方があるということを全く理解していない、と思った次第である。 ただ、1年次は憲法・民法・刑法などを教育するという案でも、2年次3年 次のカリキュラムは、そこでの科目を大幅に減らさない限り相当な過密になる わけで、3年間で純粋未修の学生について司法試験の問題に答えられるだけの力を付けさせることができるかというと、やはり困難であるように思う。


3 抜本的な改革の提案について

 私は、中教審のワーキンググループによるこれらの2つの案について反対するつもりはないが、いずれにしても、未修者コースの教育を抜本的に改善する ことを考えるべきであると思う。

 法科大学院についての抜本的な改革の一つとして、未修者コースを廃止して 既修者コースのみとすることも考えられると思う。そうすれば、法科大学院の 入試として法律科目の試験をすることができ、法律に向いていない人は、その ような早期の時点で他の道に進むことができることにもなろう。

 もう一つは、反対に、全部を未修者コースとするもので、具体的には、法科 大学院を学部段階に下ろすというものも考えられるように思う。その場合には、 法学部と別に法曹養成学部というようなものを作るか、法学部の中に法曹養成 学科というようなものを作るかということが考えられるが、いずれにしても4 年制では足りず、少なくとも5年制にはする必要があろう。大学に進学しよう とする人にとっては、学部の卒業までの時間と費用は予定されているから、現 在のように学部卒業後に時間と費用をさらにかけないと法曹になれないという 負担を減らすことができ、多くの人に法曹を志望してもらえるようになるので はないかと思う。ただ、全員未修者コースとなると、教員の教育力がまさに問 われることになるから、基本科目の合理的な積み上げによるカリキュラムの作 成と法曹を養成する人の養成について、改めて根本から考える必要があること になるとは思う。

以上
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