「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

名誉棄損(憲法13条)VS表現の自由(憲法21条) 表現活動が名誉棄損に当たるか刑法230条の2違法性阻却規定

2013-01-16 16:28:28 | メディア・リテラシー

表現の自由(憲法21条)



名誉(憲法13条)

は、衝突する権利です。


さて、どちらに重きを置くかは、「名誉棄損」のところで重要になります。

刑法230条では、

表現の自由<名誉

となります。


*****刑法****
(名誉毀損)
第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。



よって、修正され、

表現の自由=名誉

とするために、

刑法230条の2があります。



****刑法*****
(公共の利害に関する場合の特例)
第二百三十条の二  前条第一項の行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。
2  前項の規定の適用については、公訴が提起されるに至っていない人の犯罪行為に関する事実は、公共の利害に関する事実とみなす。
3  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。




重要判例「夕刊和歌山時事事件」(最高裁大法廷判決判例 昭和44年6月25日)(判決文全文は一番最後に掲載)では、まさに、刑法230条の2の規定の趣旨が説明されています。

「しかし、刑法二三〇条ノ二の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法
二一条による正当な言論の保障との調和をはかつたもの
というべきであり、これら
両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実
が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、
その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、
犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。」


上記、重要判例「夕刊和歌山時事事件」では、不明確ではあるが、違法性阻却事由についての事実の錯誤

すなわち、誤信したことについて一定の理由があるときは、故意がなく名誉棄損罪は成立しないという法律構成をとっています。(錯誤論)

ただし、真実だと思っただけで、なんでもかんでも錯誤として救われるというわけではなく、

「証明可能な程度に真実であること」が求められます。

裁判時に証明しますが、行為時において「証明できる程度の資料があればよいことになります。




もうひとつの法律構成として、刑法35条の正当行為として違法性阻却事由に当たるとする説も最近有力です。

確実な根拠資料に基づいた表現行為は、35条の正当行為として処罰阻却事由となるものです。


****刑法*****
(正当行為)
第三十五条  法令又は正当な業務による行為は、罰しない。




事実の錯誤とする法律構成、刑法35条の正当行為とする法律構成の
いずれの法律構成においても、


表現行為を支える根拠資料の内容や質が重要であり、取材時にきちんと保存することが求められます。


ちなみに、知事や市長、議員の場合は、232条の2 3項において、
「公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったと認める場合には、」という1項の要件がなくなっており、
表現行為が守られる方向で、緩和された規定となっています。

メディアによる公人の監視の目は怠らぬようにお願いしたいところです。


*****刑法****
230条の2
3項  前条第一項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。




*****最高裁ホームページより*****
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=50801&hanreiKbn=02
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319115721862048.pdf

主    文
     原判決および第一審判決を破棄する。
     本件を和歌山地方裁判所に差し戻す。
         理    由
 弁護人橋本敦、同細見茂の上告趣意は、憲法二一条違反をいう点もあるが、実質
はすべて単なる法令違反の主張であつて、適法な上告理由にあたらない。
 しかし、所論にかんがみ職権をもつて検討すると、原判決が維持した第一審判示
事実の要旨は、
 「被告人は、その発行する昭和三八年二月一八日付『夕刊和歌山時事』に、『吸
血鬼Aの罪業』と題し、BことC本人または同人の指示のもとに同人経営のD特だ
ね新聞の記者が和歌山市役所土木部の某課長に向かつて『出すものを出せば目をつ
むつてやるんだが、チビリくさるのでやつたるんや』と聞こえよがしの捨てせりふ
を吐いたうえ、今度は上層の某主幹に向かつて『しかし魚心あれば水心ということ
もある、どうだ、お前にも汚職の疑いがあるが、一つ席を変えて一杯やりながら話
をつけるか』と凄んだ旨の記事を掲載、頒布し、もつて公然事実を摘示して右坂口
の名誉を毀損した。」
というのであり、第一審判決は、右の認定事実に刑法二三〇条一項を適用し、被告
人に対し有罪の言渡しをした。
 そして、原審弁護人が「被告人は証明可能な程度の資料、根拠をもつて事実を真
実と確信したから、被告人には名誉毀損の故意が阻却され、犯罪は成立しない。」
旨を主張したのに対し、原判決は、「被告人の摘示した事実につき真実であること
の証明がない以上、被告人において真実であると誤信していたとしても、故意を阻
却せず、名誉毀損罪の刑責を免れることができないことは、すでに最高裁判所の判
例(昭和三四年五月七日第一小法廷判決、刑集一三巻五号六四一頁)の趣旨とする
- 1 -
ところである」と判示して、右主張を排斥し、被告人が真実であると誤信したこと
につき相当の理由があつたとしても名誉段損の罪責を免れえない旨を明らかにして
いる。
 しかし、刑法二三〇条ノ二の規定は、人格権としての個人の名誉の保護と、憲法
二一条による正当な言論の保障との調和をはかつたものというべきであり、これら
両者間の調和と均衡を考慮するならば、たとい刑法二三〇条ノ二第一項にいう事実
が真実であることの証明がない場合でも、行為者がその事実を真実であると誤信し、
その誤信したことについて、確実な資料、根拠に照らし相当の理由があるときは、
犯罪の故意がなく、名誉毀損の罪は成立しないものと解するのが相当である。これ
と異なり、右のような誤信があつたとしても、およそ事実が真実であることの証明
がない以上名誉毀損の罪責を免れることがないとした当裁判所の前記判例(昭和三
三年(あ)第二六九八号同三四年五月七日第一小法廷判決、刑集一三巻五号六四一
頁)は、これを変更すべきものと認める。したがつて、原判決の前記判断は法令の
解釈適用を誤つたものといわなければならない。
 ところで、前記認定事実に相応する公訴事実に関し、被告人側の申請にかかる証
人Eが同公訴事実の記事内容に関する情報を和歌山市役所の職員から聞きこみこれ
を被告人に提供した旨を証言したのに対し、これが伝聞証拠であることを理由に検
察官から異議の申立があり、第一審はこれを認め、異議のあつた部分全部につきこ
れを排除する旨の決定をし、その結果、被告人は、右公訴事実につき、いまだ右記
事の内容が真実であることの証明がなく、また、被告人が真実であると信ずるにつ
き相当の理由があつたと認めることはできないものとして、前記有罪判決を受ける
に至つており、原判決も、右の結論を支持していることが明らかである。
 しかし、第一審において、弁護人が「本件は、その動機、目的において公益をは
かるためにやむなくなされたものであり、刑法二三〇条ノ二の適用によつて、当然
- 2 -
無罪たるべきものである。」旨の意見を述べたうえ、前記公訴事実につき証人Eを
申請し、第一審が、立証趣旨になんらの制限を加えることなく、同証人を採用して
いる等記録にあらわれた本件の経過からみれば、E証人の立証趣旨は、被告人が本
件記事内容を真実であると誤信したことにつき相当の理由があつたことをも含むも
のと解するのが相当である。
 してみれば、前記Eの証言中第一審が証拠排除の決定をした前記部分は、本件記
事内容が真実であるかどうかの点については伝聞証拠であるが、被告人が本件記事
内容を真実であると誤信したことにつき相当の理由があつたかどうかの点について
は伝聞証拠とはいえないから、第一審は、伝聞証拠の意義に関する法令の解釈を誤
り、排除してはならない証拠を排除した違法があり、これを是認した原判決には法
令の解釈を誤り審理不尽に陥つた違法があるものといわなければならない。
 されば、本件においては、被告人が本件記事内容を真実であると誤信したことに
つき、確実な資料、根拠に照らし相当な理由があつたかどうかを慎重に審理検討し
たうえ刑法二三〇条ノ二第一項の免責があるかどうかを判断すべきであつたので、
右に判示した原判決の各違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであり、これを破
棄しなければいちじるしく正義に反するものといわなければならない。
 よつて、刑訴法四一一条一号により原判決および第一審判決を破棄し、さらに審
理を尽くさせるため同法四一三条本文により本件を和歌山地方裁判所に差し戻すこ
ととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 検察官平出禾 公判出席
  昭和四四年六月二五日
     最高裁判所大法廷
         裁判長裁判官    石   田   和   外
            裁判官    入   江   俊   郎
- 3 -
            裁判官    長   部   謹   吾
            裁判官    城   戸   芳   彦
            裁判官    田   中   二   郎
            裁判官    松   田   二   郎
            裁判官    岩   田       誠
            裁判官    下   村   三   郎
            裁判官    色   川   幸 太 郎
            裁判官    大   隅   健 一 郎
            裁判官    松   本   正   雄
            裁判官    飯   村   義   美
            裁判官    村   上   朝   一
            裁判官    関   根   小   郷
- 4
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする