「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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訴訟告知の効力の及ぶべき範囲、特に告知人の相手側当事者に参加した場合は?

2013-01-26 23:00:00 | シチズンシップ教育
 「訴訟告知」なる制度。
 告知を受けることが、法律上の地位・利益を守ることにつながるだけならよいが、マイナスに及んでしまうこともありそうである。例えば、訴訟告知した告知人の側に参加することが、必ずしも有益とは言えない場合、不幸の始まりということもあるのではないでしょうか。
 原段階で、しっくりきていません。
 今後、考察を深めて行くとして、現時点の理解を書きます。

 下記事案は、「仙台高裁昭和55年1月28日」のもの。
 別に、「東京高裁昭和60年6月25日」のものが、上告され訴訟告知の効力の及ぶべき範囲について最初の最高裁の判断が注目されると書かれていました。その最高裁判決をフォローしたいと思っています。

****刑事訴訟法****
(訴訟告知)
第五十三条  当事者は、訴訟の係属中、参加することができる第三者にその訴訟の告知をすることができる。
2  訴訟告知を受けた者は、更に訴訟告知をすることができる。
3  訴訟告知は、その理由及び訴訟の程度を記載した書面を裁判所に提出してしなければならない。
4  訴訟告知を受けた者が参加しなかった場合においても、第四十六条の規定の適用については、参加することができた時に参加したものとみなす。


(補助参加人に対する裁判の効力)
第四十六条  補助参加に係る訴訟の裁判は、次に掲げる場合を除き、補助参加人に対してもその効力を有する。
一  前条第一項ただし書の規定により補助参加人が訴訟行為をすることができなかったとき。
二  前条第二項の規定により補助参加人の訴訟行為が効力を有しなかったとき。
三  被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき。
四  被参加人が補助参加人のすることができない訴訟行為を故意又は過失によってしなかったとき。

*************




事案:

 Xは、Yの代理人と称するZを通じて、Y所有の本件土地を買い受け、その売買代金を支払ったものの、YはZに代理権を授与したことはないと主張して、所有権移転登記手続をしないため、Xは、Yに対して、所有権移転登記手続等を求める訴えを提起した。(第一訴訟)。
 第一訴訟の継続中に、Yは、Zに対して訴訟告知をしたが、Zは、相手方当事者であるXに補助参加を行った。
 その後、審理の結果、裁判所は、代理権を授与したとまで認定することは困難であるが、表見代理は成立するとの理由で、X勝訴の判決を下し、当該判決が確定した。
 そこで、Yは、Zに対して、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した(第二訴訟)。



(1)事案における法的問題点。
被告知者が、告知者の相手方当事者に参加した場合、参加的効力を及ぼすことができるかが法的問題点である。

(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事実。
 第二訴訟で、Zは、Yからの代理権授与があったと主張することができるかどうかが問題点である。
 すなわち、Yから第一訴訟で訴訟告知がなされており、被告知者であるZは、Yに参加することができたわけであり、よって、Yに参加したものとみなして、被告知者Zに対しても、第一訴訟の確定した判決の参加的効力を及ぼすと考えれば、代理権を授与したことの認定ができないとした判決の効力が及ぶこととなる。結果、Zは、第二訴訟において、Yからの代理権授与の主張ができないことになるのではないかと言うことが問題点である。


(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
 民事訴訟法53条4項。


(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
 補助参加の利益を有する被告知者は、参加しない場合でも、告知に対応して参加できた時点に補助参加したものとして、告知者との間で民事訴訟法46条の限度で参加的効力を受ける。
 では、告知者の補助参加ではなく、告知者の相手方当事者に参加した場合にも、参加的効力を及ぼすことができるかどうかが問題となっている。

(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方。
 被告知者が、告知者の相手方当事者に参加した場合にも、参加的効力を肯定する説。
 
(6)上記自分と反対の結論となり得る考え方の問題点。
 訴訟告知は、被告知者に、訴訟参加の機会を与えるものであり、被告知者が、訴訟告知された訴訟に参加して自己の法的地位又は法的利益を防御することができるメリットがある。
 しかし、本件の場合、訴訟告知を受けた第一訴訟において、被告知者であるZは、告知者側に補助参加することが期待され得ない状況にあった。
 にも関わらず、参加的効力を肯定するのは、被告知者が、参加的効力の拘束力を受けることで代理権授与の主張が封じられてしまうことになり、あまりにも酷である。

(7)この問題について自分の結論と根拠。
 参加的効力が否定され、被告知者Zは、第二訴訟において、代理権授与の主張ができると考える。
 なぜならば、被告知者が参加しないからといって、実際に参加して敗訴した以上に不利になるのは不合理であり、たとえ参加しても被告知者の主張(有権代理)が、告知者の主張(無権代理)と抵触して効果を生じないような場合には、告知による参加的効力は受けるべきではないと考えるからである。
 併せて、第一訴訟判決を導きだすためには表見代理が認められれば十分であり、表見代理が認められるからといって代理権が無いとは必ずしも言えず、第一訴訟判決において代理権不存在まで判断されているとした拘束力は、認めるべきではないと考えるからである。
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