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民事訴訟法:訴訟上の和解を、相手の債務不履行を原因に解除をする方法について

2013-01-12 23:00:00 | シチズンシップ教育
事案:
 Xは、自己が所有する宅地の一部をYに賃貸し、Yは、当該宅地上に家屋を所有していた。その後、同宅地は、特別都市計画法により減歩のうえ換地予定地の指定を受けた。Yは、換地予定地発表後、Xに無断で上記家屋を、換地予定地に間口いっぱいに移築し、換地予定地の大部分を独占使用するに至った。そこで、Xは、Yに対し、換地による宅地面積の減歩率によって敷地を縮小してXが指定する箇所に移転するように求めたものの、Yがこれに応じなかったため、家屋収去土地明渡しを求める訴えを提起した。
 この訴訟の係属中に、X・Y間で、換地予定地のうちYが占有している部分を、Yに売却する旨の訴訟上の和解が成立し、訴訟は終了した。
 ところが、Yは和解条項に定められた期日までに売買代金の支払をなさなかった。

(最高裁判例 昭和43年2月15日)



(1)本問における法的問題点。
訴訟上の和解が成立した後、その内容に関して債務不履行があった場合、和解を解除するにはどのような方法によるべきかが法的問題点である。

(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事実を、事例。
 Xは、自己が所有する宅地の一部をYに賃貸し、Yは、当該宅地上に家屋を所有していた。その後、同宅地は、特別都市計画法により減歩のうえ換地予定地の指定を受けた。Yは、換地予定地発表後、Xに無断で上記家屋を、換地予定地に間口いっぱいに移築し、換地予定地の大部分を独占使用するに至った。そこで、Xは、Yに対し、換地による宅地面積の減歩率によって敷地を縮小してXが指定する箇所に移転するように求めたものの、Yがこれに応じなかったため、家屋修去土地明渡しを求める訴えを提起した。
 この訴訟の係属中に、X・Y間で、換地予定地のうちYが占有している部分を、Yに売却する旨の訴訟上の和解が成立し、訴訟は終了した。
 ところが、Yは和解条項に定められた期日までに売買代金の支払をなさなかった。
 Xは、債務不履行による和解の解除をするにあたって、どのような方法を用いることができるか、特に別訴を提起して争うことが可能であるかが問題となっている。


(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
 民事訴訟法267条。

 (和解調書等の効力)
第二百六十七条  和解又は請求の放棄若しくは認諾を調書に記載したときは、その記載は、確定判決と同一の効力を有する。


(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
 和解を調書に記載したときは、その記載は、「確定判決と同一」の効力を有するとあり、既判力も当然に含まれることになる。
 訴訟上の和解が有効に成立したが、当事者の一方が和解条項を履行しなかった場合、相手方は和解を解除できるか、できるとして訴訟上その主張方法はいかなる手段によるべきか、解除による訴訟終了効の扱いはどうするべきかが問題となっている。
 特に、和解を解除すると前訴の終了原因である訴訟上の和解が解除されたということになれば、前訴の訴訟終了の効果も遡及的に消滅し、訴訟継続中となる。そこに同一訴訟物を目的とする別訴を提起すると、二重起訴に該当するかが問題となる。


(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方。
 解除の場合、和解は遡及的に除去され、訴訟終了効も発生していないこととなり、訴訟係属が復活するため、新期日の申立てを行う考え方(期日指定申立説)。

(6)自分と反対の結論となり得る考え方の問題点。
 外在的後発的事由によって訴訟終了効が左右されるというのでは、既済事件が未済事件として復活する可能性がいつまでも残ることになり、裁判所に堪え難い負担をかけ、訴訟政策上妥当でないという点。
 さらに、解除の適否を巡る紛争は、債務不履行の事実を中心として争われるもので、旧訴とは異質の独立した紛争となっているにもかかわらず、上訴審で和解が成立していた場合には、審級の利益を奪ったかたちの訴訟となってしまう点。
 
(7)この問題についての自分の結論と根拠。
 訴訟上の和解が成立した後、その内容に関して債務不履行があって解除する契約の解除は、その契約に基づく私法上の権利関係が消滅するのみであり、和解の成立後に生じる原因に基づく権利変動であって、確定判決に基づく訴訟終了後の権利変動と同じく、訴訟終了効には影響を及ぼさない。よって、新たに別訴を提起して争うべきである(別訴提起説)。
 なぜならば、この場合の裁判上の争点は、解除の適否について、債務不履行の事実を中心として争われることとなり、旧訴とは異質の独立した紛争となっているからである。
 また、もし、上訴審で和解が成立していた場合には、審級の利益を奪ったかたちの訴訟となってしまうことも新たに別訴とすることで避けることができるからである。
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