街路樹伐採の件。日曜日の東京新聞第一面記事でとりあげられています。
街路樹を守りながらの、共同電線溝設置や、歩道のバリアフリーの両立は可能であると考えます。
また、中央区の街路樹伐採の内容も記事には書かれていますが、「中央区では十九~二十一日、日本橋本町-日本橋小舟町の区道のイチョウなど二十四本が伐採された。一部の区民から保存を求める声が出ていたが、「通りのにぎわいをつくりたいと沿道住民から要望があった」(区担当者)という。」
私の調査の内容とは、異なった説明になっています。
話を持っていったのは、あくまでも中央区からであって、それを地元の「日本橋みち・まちづくり協議会」がやむなく受け入れざるをえなかったのが本当のところではないでしょうか?
地元周辺の方々は、受け入れることはできず、街路樹を守ってほしいという地元有志の署名が50名以上、中央区に届けられました。
しかし、中央区は、地元説明会をさえ開催することなく、街路樹を撤去しました。
最後に掲載の監査請求を、私も中央区へ提出を致しました。
ただし、中央区側もご努力はされており、多くのものを(数は確認中)、移植をしていただけることになっています。
なお、以前もお知らせをさせていただきましたが、日本橋の銀杏の並木は震災復興を願い地元の篤志のかたが植えられた由緒のあるものでした。なんとか、二世が育たないものかと、伐採された銀杏の枝の一部から取り出して苗木を今育てているところです。
***************東京新聞**************************
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201708/CK2017082702000142.html
【社会】
五輪整備 揺れる並木 「明大通り」プラタナス撤去へ
2017年8月27日 朝刊
二〇二〇年の東京五輪・パラリンピックを控え、樹齢を重ねた並木を撤去する公共工事が都内各地で計画され、一部では伐採された。行政側は道路の拡幅やバリアフリー化などを目的とするが、地域のシンボルとなってきた木々が失われることへの住民の反発もある。 (神野光伸)
東京都千代田区のJR御茶ノ水駅からの坂道「明大通り」の両側にプラタナスの濃い緑の葉が広がっている。通りは明治大学に面し、周辺に大学や専門学校が集まる。区は七十本全てを撤去する計画で、今月末にも三十三本の伐採を始める予定だ。
歩道の拡幅とバリアフリー化が目的。区道路公園課によると、最も古い木は四十年以上前に植えられた。計画では歩道の幅を約二十五センチ広げ、車道との段差をなくしたり、根が地下で育ちすぎて押し上げた路面を直したりする。
工事完了後、プラタナスより葉が広がらず、病害虫の被害が少ないマグノリアを植える。区の担当者は「人通りが増え、狭い歩道を広げざるを得ない。伐採に理解してほしい」と話す。
これに対し、地元住民らでつくる「千代田の街路樹を守る会」は今月上旬、区長と区議会に保存を求める陳情を提出。会の大学講師愛みち子さんは「区の説明には、学生街を見守ってきた由緒ある街路樹を撤去する計画について、住民側に十分な説明がない」と憤る。明大の教職員や地元中学校の卒業生も二十三日、保存を求める陳情を区議会に提出した。
写真
区と都は東京五輪のマラソンコースになる「白山通り」と、関東大震災後の復興事業で整備された「神田警察通り」のイチョウ並木の伐採も計画。歩道整備のほか、小池百合子知事が選挙公約とした「無電柱化」工事の推進が理由だ。
白山通りは昨年夏に一部伐採され、住民の反対で工事が中断。小池知事は昨年十二月の都議会で「事業完了後に新しい樹木を植えるなど、緑の回復に努めることが重要」と述べた。
一方、神田警察通りは住民の反対で計画を見直し、保存する方針。
中央区では十九~二十一日、日本橋本町-日本橋小舟町の区道のイチョウなど二十四本が伐採された。一部の区民から保存を求める声が出ていたが、「通りのにぎわいをつくりたいと沿道住民から要望があった」(区担当者)という。
◆文化的価値、住民の愛着も
京都学園大の森本幸裕特任教授(環境デザイン)の話 倒木などの恐れがある樹木をすべて保存していくのは難しく、一定期間で更新していかなければならない。景観美をつくる上で、無電柱化も必要だ。一方で、長年ある街路樹は、街のアイデンティティーの一つ。文化的な価値があり住民の愛着もある。工事を進める側は、伐採が必要な合理的な説明を十分果たしていく必要がある。整備をするなら、新たな街路樹が生育しやすい構造にしたり雨水の浸透機能を向上させたりしていくことも必要だ。
**********提出をした差止めの監査請求*******
中央区職員措置請求書
第1 措置請求の要旨
1 対象となる財務会計行為及び求める措置請求
中央区長は、区道「中日5号」の街路樹伐採(以下、「本件事業」という。)等のために平成29年度に計上された予算:「街路樹・街路灯の整備」(第6款環境土木費 第1項環境費、第2目公園河川費 2街路樹・街路灯等管理事業)1億132万9千円のうち「日本橋本町2丁目6番先~日本橋小舟町14番先」への計上分及び「電線共同溝整備事業」(第6款環境土木費 第1項環境費 第3目道路橋梁費 3電線共同溝整備事業(1)整備工事 イ「日本橋本町2丁目6番先~日本橋小舟町14番先」)へ計上された2億333万1千円 (別紙1、『平成29年度中央区各会計予算中央区各会計予算説明書』平成29年2月 中央区 180頁及び184頁/ 『平成29年度中央区予算(案)の概要』11頁及び34頁/ 本件事業を含めた計画全体図と工程/ 本件事業の位置図)の執行に係る財務会計行為を行うことは、後述のように違法・不当であるため、当該財務会計行為を行ってはならないとの措置を講じることを求める。
2 当該財務会計行為が違法又は不当であること
本件事業により24本の街路樹の伐採が行われる。伐採は2017年7月22日(土)に開始し、一旦休止し、お盆明けに工事再開を予定している。
本件事業による街路樹24本(銀杏9本、クロガネモチ17本。うち2本のみ移植)の伐採は、違法又は不当であることを述べる。
(1)本件事業には区民の十分な合意形成が得られておらず、中央区は説明責任を果たす必要があること
街路樹伐採の経緯や目的が不明で、多くの区民の理解を得ていない。特に、伐採に至った経緯や根拠については、区民に公開されていない。
地元有志を中心に、本件事業についての中止と説明会を求める趣旨の要望書(別紙2、以下「要望書」という。)が、矢田中央区長及び水とみどりの課長宛てに提出されるとともに、街路樹の伐採を知った近隣に住む区民50名以上の署名が、その要望書に賛同するものとして提出されている。これらは真に地元の声といえるものである。これらの署名が伐採への驚きとともに集まった背景には、街路樹に親しみ、時には育ててきた周辺住民にも伐採計画が知らされていなかった経緯がある。
街路樹伐採を含む事業が区の事業であり、区民の税金を使うこと、また区道にある街路樹は区民の共有財産と考えるとき、区民の同意なしに街路樹の伐採が行われてはならない。
区は「日本橋みち・まちづくり協議会」を通じて「区民の意見を聞いた」としているが、協議会メンバーは少数であり、メンバーが町内会長などに限定されていることを考えると、必ずしも一般区民の多様な意見を代表しているとは言えない。また、協議会の議事録や議事内容は公開をされていないため、一般区民が協議会のメンバーに意見を届けることは、期待できないことがらである。
まずは周辺住民などに対し懇切丁寧な説明をするのが、区の事業を行う上で最低採るべき段階であり、強引で拙速な伐採をするとなれば、中央区は説明責任を果たしているとはいえず、重大な手続き違反である。
(2)本件事業は、『中央区緑の基本計画』の方針に反していること
伐採対象の街路樹は大変貴重なものである。特に、本件事業による伐採対象樹木には貴重な大径木が含まれている。推定樹齢60年、幹周囲は2m弱あり、東京都の指針でも保護対象となっている。
そして、それら大径木の健全性も、本件事業により一部伐採された銀杏の木の断面から明白である(別紙3、写真)。伐採された木の幹を観察しても、痛んでいない。樹木の専門家によると、別紙3の断面から言えることは、「1、空洞があるが、生存に影響はない。2、実際に、切り株では、断面の白い部分(生きているところ)が半分以上あり、十分健康な木だと思われる。白い部分が1/3以上あればその樹木は健康と考えられるからである。」という趣旨の解説を頂いている。
本件事業区域内の他の銀杏も、成育環境が同じであることから、同様に健康であることが考えられる。
また、中央区は緑被率において都内最低レベルにある。区内の街路樹の数はわずかに6800本余りであり、うち日本橋地区内は2500本余りしかない。一度の道路工事で26本の街路樹を伐るとなると、地区内の1%の木を伐ることとなる。またクロガネモチの木は日本橋地区に34本あるだけであり、16本伐採されると約半数を無くすことになり、樹齢20~30年程度と思われるので、これから成長する樹木である。(別紙4「中央区管理の街路樹」データ参照)
中央区は、平成21年3月策定の『中央区緑の基本計画』において、 「歩道拡幅等にあわせ、街路樹の間に中木や低木を植栽した植樹帯へと改修」し、「緑のボリュームアップ」を図っていく方針であって、歩道拡幅等にあわせ、本件事業のように大きな街路樹を伐採して代わりに中木や低木を植栽する方針は持ってはいない(別紙5、『中央区緑の基本計画』45頁 図7-2参照)。
街路樹は地域環境と風景を良くする地域の資産である。一度伐ってしまったら数十年間元に戻らない。区民の反対を押し切って伐採されることはあってはならないし、中央区自身が策定した『中央区緑の基本計画』の方針自体にも反する行為である。
生物多様性保護の観点からも樹木は重要である。街路樹は鳥などの住まいであり、一般的に一本の大木には数百種類の生物が生息すると言われており、樹木は都心の生物多様性を支えるわずかに残された場所である。生物多様性を守る事は地球規模での課題であり、日本も1993年より「生物多様性条約」を締結している。都心に位置する中央区も、条約の趣旨に基づく行動が求められている。
従って、本件事業を施行することは許されない。
(3)街路樹を残した道路整備及び電線共同溝整備は可能であること
当該工事の具体的な目的は、「歩道の拡幅」と「電線地中化」と現場の看板に公告されている。
「歩道の拡幅」に関しては、現在より倍加して5m幅になり、歩道の中心にくる街路樹の緑陰が歩行空間の環境をよくすることになり、むしろ木の恩恵を享受できる。(別紙6、写真参照)
「電線地中化」については、技術的にも新しく統一した方法等が定まっていない現状にあり、参入する業者の増加と共に技術の進歩が期待されている。現に「木を伐らない地中化工事」が開発されている。(別紙7、チラシ参照)
実際に、本件事業の区域の電線共同溝に係る「東京電力パワーグリッド(株)」(住所:港区芝公園2丁目2番4号)も問い合わせに応じて、街路樹を保存した設計は、予算面での課題はあるものの技術的には実現可能性がある旨をその担当者は、平成29年8月17日に私に述べている。
これらを考えると、無理に木を伐る理由はなく、むしろ大径木の風景を楽しめる環境が実現できる。
本件事業により伐採される予定の街路樹を保存した電線共同溝配置の設計は技術的に不可能ではない以上、これら可能性を十分に検討することなく、伐採をすることをやむを得ないと判断することは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いており、本件事業を実施に及ばせる判断は誤りである。
(4)「中央区基本構想」の「将来像の実現に向けた基本的な方向性」に反していること
中日5号の街路樹は2本を除きすべて伐採対象となっている。中でも昭和通り近くの小倉ビルと長瀬産業の間に立つ銀杏の木9本(現在は8本)には、特別な地域独特の言い伝えが付随している。文献調査などはされていないものの、「初代の小倉ビル所有者が、関東大震災からの復興の願いを込めて、昭和通りと同じ銀杏の木を自社ビル前の道路に寄贈した」と伝えられている。この伝聞は大変貴重なものである。都心の中央区は多くの企業が集中する地域であるが、このような言い伝えは珍しい。この地域に、経済活動だけでなく、被災地の市民として樹木の生長に地域復興の願いを込めるという、本当の街づくりを実行した人が存在した証左である。このエピソードとエピソードを伝えた人々は、地域の誇りであって、これからも長く語り継ぐべきものである。このような歴史的地域貢献を核にして街づくりが行われるべきであって、エピソードを今に伝える生き証人である銀杏の木を倒すことは貢献の賜物を次世代に伝えないことになり先人の意を無にする。ましてこのような貴重な伝聞を裏付ける文献調査もされないまま、ごく一般的な道路工事の邪魔ものとして、貴重な木が倒されることがあってはならない。
このようなエピソードは、新たに移入してくる区民が多い中にあって、「地域への誇り」を醸成する格好の素材となる。子供への地域教育にも大変有効となる。エピソードと共に生かすべき資産である。
樹木の伐採は、区役所から小倉ビルを含む近隣に持ちかけられた経緯がある。しかし2017年6月に区議会で議決された「中央区基本構想」によれば、「将来像の実現に向けた基本的な方向性」の5つの基本的な方向性の一つとして「(2)歴史と伝統を継承し、多彩な魅力あふれる美しいまちを形成」とある。説明は以下である。
江戸時代以来の歴史と伝統を紡ぎ、常に新たな文化が創造されるまちを目指すとともに、…
豊かな自然環境をつくり、地球にやさしく潤いと安らぎを感じられるまちづくりを実現していきます。(「中央区基本構想」パンフレット7ページ)
「伝統」と「自然環境」を守っていくという中央区の基本的な姿勢からすれば、歴史を今に伝える立派な大木を伐る事は、基本方針に反することになる。
また中央区の街づくりの指針には「区内における地域特性を生かしたまちづくり」を標榜するとある。(区HP「まちづくり協議会とは」冒頭の文章)
これら銀杏の木とその植樹エピソードは、「地域特性」を語る絶好の素材である。区はこれを生かしたまちづくりを積極的にするべきである。
従って、由緒ある銀杏の樹を伐採することは、「中央区基本構想」の中央区の将来像の実現に向けた基本的な方向性にも反しており、許されない。
(5)地方行政の趨勢と環境意識の高まりに反していること
隣接する千代田区では2016年7月、街路樹の伐採を行っていた区道の工事を中止し、10月区議会で計画の見直しが決定した(別紙8、新聞記事参照)。千代田区議会委員会では区内の街路樹の伐採を基本的に行わない方針を全員一致で決定し、街路樹の定期診断等に新たな予算を設けることとし、街路樹を中心とした道も計画され、木の扱いを定めるルール作りに努める方向にある。
2016年12月には都道である白山通りで行われていた無電柱化に伴う街路樹伐採は一旦休止され、千代田区の方針と都の技術的再検討をすり合わせていくこととなった。休止後も都は公開説明会を段階的に開き、都民合意の上で工事を進める運びとなっている。(別紙9、東京都「説明会開催のお知らせ」参照)
このように都心の地方自治体では、街路樹の存在意義や生命を尊重し、反対意見を無視するような強引な伐採は行わなくなった。反対がある場合は一旦工事を中止し、丁寧な説明や再検討を重ねて理解を得てから再開するようになっている。
中央区も都心を代表する区であり、このような地方自治の趨勢に合わせるべきであり、さもなくば、周辺地域は緑豊かで立派な街路樹が育ち、中央区だけがコンクリートジャングルのままという環境意識の遅れを印象づけられることになってしまう。区職員の名刺には「水辺や豊かな緑を共生し、みんなで環境をよくするまち中央区」というスローガンが印刷されている。性急な街路樹伐採は、本スローガンにも反することにもなろう。
また東京全体では2020年に向けて環境整備を行っている。2016年10月に東京都オリンピック・パラリンピック準備局が環境局長に提出した「評価書」によれば、2020年への準備とその後の環境上の影響について、以下のようにまとめている。
・・・東京を緑の都市として再生していくことは、都市の生態系の保全、雨水浸透の促進による水循環の正常化への寄与のほか、住民に潤いや安らぎを与える美しい都市景観の創出、都市の防災や熱環境の改善に役立ち、より快適で質の高い都市環境を創出すると言える。(「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会実施段階環境影響評価書、5-7-65)
東京の都市像において、緑の重要性が繰り返し強調されている。
これら周辺区や東京都の趨勢に反し、伐採をすることをやむを得ないと判断することは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠いており、本件事業を実施に及ばせる判断は誤りである。
第2 請求者
氏名 小坂和輝
地方自治法242条1項の規定により、別紙事実証明書を添え、必要な措置を請求します。
平成29年8月18日
中央区監査委員 御中
別紙1 『平成29年度中央区各会計予算中央区各会計予算説明書』平成29年2月 中央区 180頁と184頁 /『平成29年度中央区予算(案)の概要』11頁と34頁/ 本件事業を含めた計画全体図と工程/ 本件事業の位置図(緑色のマーカー部分)
別紙2 地元有志作成「要望書」
別紙3 本件事業で一部伐採された銀杏の幹の断面写真
別紙4 「中央区管理の街路樹」
別紙5 『中央区緑の基本計画』抜粋
別紙6 歩道の中心の街路樹 写真
別紙7 「木を伐らない地中化工事」チラシ
別紙8 新聞記事(東京新聞2016.10.19、朝日新聞2016.10.18、The Japan Times2016.10.20)
別紙9 東京都「説明会開催のお知らせ」
以上
これは、政府の広報紙か?と思いたくなる記事を見ることがあり、残念に思うときがあります。(中日・東京新聞では、そのような記事は、ほとんどないですが…)
そんな中、それでも、新聞を信じているのは、
「最後の血の一滴まで、三浦は記者でありたい」という、そういう記者さんがおられるから。
*********朝日新聞2017/08/27****************
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13104596.html
(著者に会いたい)『わけあり記者』 三浦耕喜さん
2017年8月27日05時00分
『わけあり記者 過労でウツ、両親のダブル介護、パーキンソン病に罹(かか)った私』
■読者を助け、戦う新聞をつくりたい 三浦耕喜さん(47歳)
「俺ってストレス耐性が強い」と自任し、周囲からは「使い減りしない」とも言われていた。期待に応える猛烈な働きぶり。中日・東京新聞でベルリン特派員や政治部官邸キャップを歴任した記者。そのキャリアが、2012年、突然途切れた。
年明けから動悸(どうき)が収まらず、不眠が続いた。抑うつ状態と診断され、5カ月休職した。復帰後に政治部を去り、生活部に異動した。
本作では、過剰な働きぶりを強いて部下を追い込む「クラッシャー上司」の存在や長時間労働など、原因をさらけ出した。現実の人間関係にも絡むテーマだが、地雷原に踏み込む覚悟で書いた。病を得て「誰かがどこかで指摘しなくてはならない病巣。組織に波風立てないことよりも大切なことがあると信じるようになった」からだ。そして、今は誰も責めない。「政治部時代、私も部下をどなり上げた。振り返れば自分にもクラッシャー上司の面があったから」
復職後、入れ替わるように両親の介護がのしかかった。足の弱った父が特養に入居。認知症が進行した母は病院に移った。14年に実家近くでの勤務を希望し実現。週末名古屋市の自宅から故郷岐阜県の施設まで1時間かけて介護に赴く。その様子を、中日・東京新聞で連載し始めた。20回を超えた。「親のなれそめなどファミリーヒストリーを探り驚くことも多い。まさに介護民俗学。人への興味で介護にも前向きになれる」
昨年、パーキンソン病と診断された。三つめの「わけあり」だ。
今は介護に支障はないが、メモを取る手は震え、パソコンは右手の指一本。自立して自由に取材活動ができるのはあと10年と見積もる。結婚する前に、妻からもらったモンブランのボールペンを手に「最後の血の一滴まで、三浦は記者でありたい」という。
「わけあり人材」として、つらい人たちや、けなげに生きているのに報われない人たちに寄り添いたい。最近世話になった人へメールを出した。「読者を助ける知恵がある。暮らしの中で戦う勇気がある。そんな新聞を作りたい」とつづった。
(文・写真 木村尚貴)
(高文研・1620円)
そんな中、それでも、新聞を信じているのは、
「最後の血の一滴まで、三浦は記者でありたい」という、そういう記者さんがおられるから。
*********朝日新聞2017/08/27****************
http://digital.asahi.com/articles/DA3S13104596.html
(著者に会いたい)『わけあり記者』 三浦耕喜さん
2017年8月27日05時00分
『わけあり記者 過労でウツ、両親のダブル介護、パーキンソン病に罹(かか)った私』
■読者を助け、戦う新聞をつくりたい 三浦耕喜さん(47歳)
「俺ってストレス耐性が強い」と自任し、周囲からは「使い減りしない」とも言われていた。期待に応える猛烈な働きぶり。中日・東京新聞でベルリン特派員や政治部官邸キャップを歴任した記者。そのキャリアが、2012年、突然途切れた。
年明けから動悸(どうき)が収まらず、不眠が続いた。抑うつ状態と診断され、5カ月休職した。復帰後に政治部を去り、生活部に異動した。
本作では、過剰な働きぶりを強いて部下を追い込む「クラッシャー上司」の存在や長時間労働など、原因をさらけ出した。現実の人間関係にも絡むテーマだが、地雷原に踏み込む覚悟で書いた。病を得て「誰かがどこかで指摘しなくてはならない病巣。組織に波風立てないことよりも大切なことがあると信じるようになった」からだ。そして、今は誰も責めない。「政治部時代、私も部下をどなり上げた。振り返れば自分にもクラッシャー上司の面があったから」
復職後、入れ替わるように両親の介護がのしかかった。足の弱った父が特養に入居。認知症が進行した母は病院に移った。14年に実家近くでの勤務を希望し実現。週末名古屋市の自宅から故郷岐阜県の施設まで1時間かけて介護に赴く。その様子を、中日・東京新聞で連載し始めた。20回を超えた。「親のなれそめなどファミリーヒストリーを探り驚くことも多い。まさに介護民俗学。人への興味で介護にも前向きになれる」
昨年、パーキンソン病と診断された。三つめの「わけあり」だ。
今は介護に支障はないが、メモを取る手は震え、パソコンは右手の指一本。自立して自由に取材活動ができるのはあと10年と見積もる。結婚する前に、妻からもらったモンブランのボールペンを手に「最後の血の一滴まで、三浦は記者でありたい」という。
「わけあり人材」として、つらい人たちや、けなげに生きているのに報われない人たちに寄り添いたい。最近世話になった人へメールを出した。「読者を助ける知恵がある。暮らしの中で戦う勇気がある。そんな新聞を作りたい」とつづった。
(文・写真 木村尚貴)
(高文研・1620円)