「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

東京都中央区もようやく「災害弱者支援マニュアル作成」へ。顔の見える関係づくりが鍵と思います。

2012-08-13 10:39:33 | 防災・減災
 ようやく、中央区も動き始めたようです。

 なんとかせねばならない部分のひとつ。

 マニュアルを作って終わりではなく、始まりに立つわけですが、各方面の意見を聞き、早急にとりまとめられることを期待しています。 

 顔の見える関係づくりが鍵と思っています。

 あと、例えば、
 福祉避難所の医療体制がまったくできあがっていません。
 どのように医師を確保するか、地域のどの医師が担当するか、青写真は作っておくべきと考えます。
 地域の医師として、その体制づくりを一緒に考えていければと思います。

****NHK*****
http://www.nhk.or.jp/shutoken-news/20120812/4219761_20120812111755_e781bde5aeb3e5bcb1e88085e694afe68fb4e3839ee3838be383a5e382a2e383abe4bd9ce68890e381b8.html
災害弱者支援マニュアル作成へ

災害時に高齢者や障害がある人を地域で協力して支えていこうと、東京・中央区は安否確認や避難誘導の方法を定めたマニュアルを作ることになりました。
東京・中央区は首都直下地震など大規模な災害に備えて、高齢者や障害がある人を地域で協力して支えていこうと体制の整備に乗り出しました。
マニュアルでは、要援護者の安否確認や避難誘導の方法、被災後の生活支援などを細かく定めることにしています。
高層マンションや一戸建てが多い地域など地域の特性を反映させるため2つのモデル地域に選び住民にも参加してもらって課題の洗い出しや解決策を検討しています。住民からは「昼間は支援する側も仕事で不在のことがあるので複数の人で支える仕組みが必要ではないか」とか「周辺企業の若手社員の協力を得られないか」などの意見が出されました。
区ではこうした議論や専門家の意見などを踏まえて来年度までにマニュアルを作り、区内の各地域で災害時の要援護者の支援体制を整えていく方針です。
中央区高齢者福祉課の小林秀規課長は「大規模な災害では行政だけでは支援が行き届かないこともあるため住民の意見をもとに実効性のある支援策をとりまとめたい」と話しています。

08月12日 11時17分
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今週8/13~も病児保育含め通常診療しています。

2012-08-12 23:00:00 | 小児医療

いつも思うことだけど、地域の医者が、ずらして夏休みをとれば、患者さんは困らず、病院も混まなくて済む。

開業以来そうしてきていますが、今週8/13~も病児保育含め通常診療しています。


中央区月島3-30-3 電話03-5547-1191医療法人小坂成育会こども元気クリニック・病児保育室
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地域医療研修プログラムに積極的に取り組まれた聖路加国際病院小児科松井先生に脱帽。

2012-08-11 23:00:00 | 医療
 聖路加病院医師が、当院へ地域医療研修に毎年来られます。
 今年は、五名。

 いままでも研修に来られた先生は、すべて優秀な先生ばかりでした。

 7/30-8/3二週間の研修をされた小児科系医師松井先生もまた、すばらしく、かつあっぱれでしたので、書き置きます。

 来院された医師には、オプションということで、私のすべての地域(医療)活動に参加をいただいています。
 地域医療研修の考え方は、ひとそれぞれであり、参加の可否は、各先生の判断に委ねているところではあります。


 松井先生は、あらゆる活動にご参加されました。

 その中には、お神輿あり、わんぱくkidsあり大変だったと思います。8/6の週は、当院にとっても特にハードな一週間でした。

 <オプション地域(医療)活動>

7/31火 築地市場移転問題関連で弁護士事務所で会議

8/6月 住吉神社大祭 お神輿 昼休憩時間一緒に担ぐ

8/7火 自然とふれあおうわんぱくkids 医療班協力で静岡県伊東市宇佐美へ

8/8水 宇仁先生とともに懇親会

8/9木 築地市場移転問題関連で国会議員会館へ

8/10金 法科大学院 集中講義 医療と法 三コマ受講

8/8-8/10 外来の合間をみて、当院病児保育室 保育実習

 
 私自身は、どれも大切な地域医療活動と考えているところです。

 松井先生にも、「二年間では経験できないことを経験できた。」と言っていただき、うれしく思っています。

 
 もちろん、本来の一般小児科外来診療の基本を習得するところが本題であり、力を入れたつもりですが、それ以外の地位医療活動にも一緒に取り組んでいただいた松井先生に脱帽です。

 松井先生の今後の小児科医師としてのご活躍に大変期待を致しております。
 
 

 
 
 

 
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いよいよ、法科大学院講義「医療と法」講師 金沢大付属病院 越後純子先生 始まる

2012-08-10 23:00:00 | 医療
 法科大学院で、最も楽しみにしていた講義のひとつ「医療と法」が、夏期集中授業の形で始まりました。

 講師は、ご自身も放射線科の医師であられ弁護士資格をもつ越後先生。以前は、中央区にお住まいであったとかで、その点でもものすごく親近感を覚えました。

 講義を聴講してひとつ思うことは、自分が今感じていることを、先生も法律を学びながら、感じられていたことにある種の安心感を持ちました。

 例えば、東大ルンバール事件(最高裁昭和50年10月24日第二小法廷判決)におけるルンバール施行後の脳出血とその施術との因果関係に対しての思うところや、夜間救急外来での心筋梗塞患者の損害賠償請求事件(最高裁平成12年9月22日第二小法廷判決)における医師の注意義務違反と死との因果関係に対しての思うところのもの。

 

 今週学ぶ内容は、

1医療をめぐる法律関係の概要

2過失について

3因果関係について

4医療と生命の終焉


 医療のありかた、もちろん患者さんを心も体も健康にすることができる医療のありかたを、法律学の面から考える夏になればと、楽しみにしているところです。


*****医療と法 自分の立ち位置について******
 念のため、自分の立ち位置の表明をしておきます。

 「自分の立ち位置について:医療事件で、患者側、医師側の一方の側だけに加担する意思は有しておりません。」

 最近医療事件での裁判判決を読むことが増え、その事件が発生時の医療現場の様子が、まざまざと伝わってきます。
 そして、痛いほど、不幸な結果が出されるに至った過程がわかります。

 そのような場面を述べるに当たっては、患者側、医師側のどちらか一方の側だけに加担する意思は、まったく持っていません。

 なぜなら、医療者である自分は、患者さんのために存在をしているわけであり、患者さんを責める存在では決してありません。

 かといって、同業の医療者を責めることは、プロフェッショナルの精神に反すると感じるところです。

 
 では、なぜ、医療事件の現場を判決文などを分析して述べるのか。

 自分の分析の視点は、主に二つです。

 ひとつは、起こってしまったことは、もとに戻せませんが、同じような結果を二度と生まないために、どのように医療環境整備をすればよいか、医療政策をとればよいかということを考えることにあります。
 そのために、なぜ、そのような結果に至ったかの原因と因果関係をあわせて分析していきたいと思います。

 もうひとつは、起こってしまったことに対する最善の解決のありかたを考えることです。
 裁判というものは、単なる勝ち負けを決するゲームではなく、相対する双方の意見、言い分をよく聞き入れ、公平な結論を導く装置であると私は見なしています。
 よって、どちらか一方に不均衡な判断が下されることがあっては、今後の医療のありかたに悪い影響を与えていくことになり、そのようなことがなきように注視していきたいと思っているところです。
 端的にいえば、患者さんが一方的に泣き寝入りをしてはならないし、医療が萎縮してしまってもならないということです。

 
 だれもが、心も体も健康で、何歳になっても、ご自身の自己実現に傾注して生きていけるための、下支えをする医療の構築に微力ながら尽力できればと思っています。
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8月11日(雨天順延)19時~20時20分 中央区主催東京湾大華火祭 豊海会場で医療協力

2012-08-09 23:00:00 | NPO・地域力
 夏の風物詩、中央区主催東京湾大華火祭。

 今年は、8月11日開催。

 19時~20時20分にでっかいのも含め1万2千発。

 毎年、医療班協力をさせていただいています。

 今年は、豊海会場に配属となりました。
 眼科ご担当は、尊敬申し上げる宮下先生であり、ご一緒するのが楽しみです。

 なんもないことを祈っていますが、昔、アルコールの飲み過ぎで、呼吸を止めてしまい、心肺蘇生をした経験が有ります。
 どうか飲み過ぎにはご注意を。
 特に、人が多く、花火の後、人が引くのをまっている間に飲み過ぎて運ばれてきます。
 救護班が忙しいのは、花火後なんです。

 軽い脱水にもなります。アルコールではない水分補給は十分に。

 
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祭りのあとに 御神輿=まちづくりの原点、御神輿=たくましい子ども達の成長の場

2012-08-08 23:00:00 | NPO・地域力
 三年に一度(震災が有り一年延期となっての今年)の住吉神社大祭が終わりました。

 お祭り、御神輿という非日常、異次元の時間で、いつも感じることは、

 御神輿を担ぎながら、「なんて、この街って、こんなに広いのか。」というまちの広さ。

 御神輿がようやく終着の御神輿小屋前まで来て拍子木が鳴らされるまでの間、「時間が経つのって、こんなに長かったのか。」という時間の長さ。

 御神輿を、仮に重いものを担ぐという作業と仮定するなら、「なんで、皆、こんな重くてつらいことを嬉々として参加してきて、それも、われよ我よと参加してくるのか。」という人間のよさ。

 そして、この御神輿の前で発せられる言葉は、「せいやー」とか「おりゃ」とか、「そいやさー」とか、一言で、どんな丁寧な説明や主張よりもずっとずっと説得力が有って、ひとがひとつになれるということの不思議。


 御神輿は、まちづくりの基本です。

 まちづくりすることで、御神輿に参加する人が減って行くなら、そのまちづくりは、誤りです。
 若干、中央区のまちづくりは、そのような傾向が有り、気になるところでは有ります。
 実際、お祭り三日目の午後一番の御神輿は、例年、重くて覚悟して参加しに行ったのですが、大神輿が、とうとう出ないことになり、とりあえず女神輿を担いで、ひとが集まるのをまつ事態が生じてしまいました。


 御神輿に参加することは、小児の地域医療でもあります。
 そこで、見ることができるのは、子ども達が成長して、たくましくなっていく姿。
 今年も、うれしかったのは、例えば、喘息治療で通っていた子が、大学生になって、三日間我々の御輿に張り付いて、運行を補助してくれたこと。
 そして、いつも病気で外来に通っていた子と、商店街勢揃い巡行を終えたあとの最後の最後、大御輿の中のほうで担ぐのに、隣合わせになりました。高校一年生になったということ。彼には負けられないと、担ぎきったわけですが、彼も、その場所から出ずに最後まで担ぎきっていました。三年後、彼は大学生になっているでしょうが、再会が楽しみです。


 
 なにはともあれ、今年も無事終了しました。

 地域の皆さん、睦の皆さん、町会の皆さん、お囃子の皆さん、警護の警察官の皆さん、たいへんお疲れ様でございました。

 三年後がもっともっと人が集う祭りになっていることを心から願っています。
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自然と触れ合おう宇佐美 わんぱくkids4泊5日 中央区の子ども達の夏の大きな思い出に。

2012-08-07 23:00:00 | 子育て・子育ち

 毎年恒例の中央区の子ども達の宇佐美での4泊5日。
 中央区立宇佐美学園の宿舎で、過ごす4泊5日。

 8/6月 朝、主催者側の「楽しみましょう。」のあいさつの後、元気に出発していきました。
 (8/6は、住吉神社大祭の最終日、もろに重ならなくて、よかったです。)
 

 毎年、医療支援の協力させていただいています。
 出発前の問診票チェックしましたが、大きな問題はありませんでした。

 

 8/7、二日目は、宇佐美海水浴場での海水浴。
 けがをする子が多いのですが、今年は、岩で足を切る子はほぼゼロといってよいぐらいでした。
 多かったのは、クラゲかなにかにさされた子。

 いよいよ泳ぎます。





 

 当院へ地域医療研修に来られている先生も応急診療に参加。


 

 昼食後、浜辺で、班代表の子ども達によるビーチフラッグ大会



 泳ぎ終わった後、すいかのおやつ

 晴天、暑かったけど、皆、元気に泳ぎ終わって、宿舎に。
 
 ひとり、調子が悪く、宿舎で寝ていました。内服で対応中。


 3日目には、石丁場遺跡見学や木細工。4日目には、干物づくりやカレー大会。
 企画が目白押し。
 
 地域の大人が基本的な部分を指揮し、
 大学生ボランティアが運営し、班のリーダーとして子ども達を指導。



 なかなか得ることが少なくなった斜めの関係(年上のお兄さん、お姉さんとの関係)を、子ども達は体験できます。

 この合宿で、もどると一回り大きく成長した我が子を感じられることになるのではないでしょうか。

 毎年企画されるわんぱくkids ぜひ、一度は参加をしてみてください。


 

 

 

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八角神輿 月島四之部町会 無事通過。

2012-08-06 11:28:35 | NPO・地域力

 勝どき方面から、町会を順々に巡行していく八角神輿、四之部町会も無事通過していきました。
 そろそろ月島三之部町会へ引き渡されるころでしょうか。


 本日、お祭り最終日。


 あいにく雨だけど、
 まちは大いに盛り上がっています。


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憲法学 前期試験の択一問題 ご参考までに。

2012-08-05 23:00:00 | シチズンシップ教育
 憲法前期試験の一部(100点中配点20点)、択一の問題。

 実は、配点80点の記述問題が、とても面白い問題が出されました。
 いつかご紹介できればと思っています。

 参考までに。

*****憲法1*****
憲法1 短答式問題
①「憲法に規定される諸権利は、憲法によって創設され、人民に与えられる」という立場
に立った場合でも、憲法にそれまで規定されていなかった「新しい人権」を観念すること
は可能である。(× → 芦部pp.80-81)

②「人権は、内在的制約のみに服する」という考え方は、「人権の不可侵性」とは両立しな
い。(× → 芦部p.81)

③基本的人権を「憲法以前に成立していると考えられる権利を憲法が実定的な法的権利と
して確認したもの」と捉えた場合、日本国憲法が保障する権利は、すべてが基本的人権と
は言えない。(○ → 芦部p.82)

④参政権は、国民の国政に参加する権利であり、「国家による自由」とも言われる。(× →
芦部p.84)

⑤「表現の自由」は自由権に分類され、そこから受益権的な性質の権利を導き出すことは
できない。(× → 芦部p.85)

⑥社会権は、憲法の規定だけを根拠として権利の実現を裁判所に請求することのできる具
体的権利ではないので、立法によって具体化されない限り社会権が裁判で問題になること
はない。(× → 芦部pp.84-85)

⑦「大学の自治」は、学問の自由を保障するための制度的保障であり、その具体的内容に
は、「人事の自治」と「施設・学生の管理の自治」が含まれる。(○ → 芦部p.86/p.167)

⑧外国人の人権享有主体性を認める根拠として、「人権の前国家的・前憲法的な性格」や「国
際協調主義」を挙げることができる。(○ → 芦部p.92)

⑨わが国最高裁判所の判例によれば、外国人は憲法15 条にいう「国民」には当たらない
が、憲法93 条2 項にいう「住民」には該当する、とされる。(× → 最判H7.2.28)

⑩法人の人権享有主体性が認められる根拠として、「法人の活動が自然人を通じて行われ、
その効果は究極的に自然人に帰属すること」や、「法人が現代社会において一個の社会的実
体として重要な活動を行っていること」などを挙げることができる。(○ → 芦部p.89)

⑪日本国憲法が規定する「公共の福祉」の法的意味について、「一元的内在制約説」に立っ
た場合には、「二重の基準」論とは両立しない。(× → 芦部pp.100-101)

⑫わが国最高裁判所の判例によれば、公務員の政治活動禁止違反に刑事罰を設けることは、
表現の自由に対する必要最小限度を超える制限となり憲法に違反する、とされる。(× →
最大判S49.11.6)

⑬わが国最高裁判所の判例によれば、速度違反車両の自動撮影を行う自動速度監視装置に
よる運転者の容ぼうの写真撮影は、現に犯罪が行われている場合になされ、緊急に証拠保
全する必要性があり、その方法も一般的に許容される限度のものであるから、肖像権・プ
ライバシー権等を侵害しない、とされる。(○ → 芦部p.119/最判S61.2.14)

⑭20 世紀の社会福祉国家においては、社会的・経済的弱者に対して、より厚く保護を与え、
それによって他の国民と同等の自由と生存を保障していく、という実質的平等の観念が要
請される。憲法14 条はこれを請けて、実質的平等を実現する国の義務を規定しており、
憲法14 条を根拠に、現実の経済的不平等の是正を国に請求する権利が認められる。(× →
芦部p.127)

⑮最大判S48.4.4 は、尊属に対する殺人罪について刑罰を加重する改正前刑法200 条を、
憲法に違反すると判示している。この判例の立場に立てば必然的に、尊属に対する傷害致
死罪について刑罰を加重する改正前刑法205 条2 項も憲法違反ということになる。(× →
最判S49.9.26)

⑯わが国最高裁判所の判例によれば、謝罪広告の中には、これを強制することが債務者の
人格を無視し著しくその名誉を棄損し意思決定の自由乃至良心の自由を不当に制限するこ
ととなるものもある、とされる。(○ → 芦部p.149/最大判S31.7.4)

⑰わが国最高裁判所の判例によれば、公の財産の利用提供行為が憲法89 条ひいては20 条
1 項に反するのは、それが信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当
とされる限度を超える場合であり、その判断は当該宗教施設の性格、当該土地が無償で当
該施設の敷地としての用に供されるに至った経緯、当該無償提供の態様、これらに対する
一般人の評価等、諸般の事情を考慮し、社会通念に照らして総合的に行うべきである、と
される。(○ → 芦部p .161/最大判H22.1.20)

⑱知る権利は、個人がさまざまな事実や意見を知ることによって政治に有効に参加するこ
とができることから、参政権的な役割をも演じることがある。このことから、知る権利に
は、国民が積極的に政府情報等の公開を要求することのできる具体的請求権も含まれる。
(× → 芦部p.171)

⑲わが国最高裁判所の判例によれば、憲法21 条2 項にいう「検閲」とは、公権力が主体
となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、
対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適
当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指す、とされ、税
関検査は、国外において既に発表済みのものを対象とする点、思想内容等それ自体を網羅
的に審査し規制することを目的とするものではない点、検査の主体である税関は、特に思
想内容等を対象としてこれを規制することを独自の使命とする機関ではない点、税関長の
判断に司法審査の機会が与えられている点において、検閲には当たらない、とされる。(×
→ 最大判S59.12.12)

⑳わが国最高裁判所の判例によれば、公安条例において集団示威運動の一般的許可制が定
められていたとしても、許可基準が明確である限りは憲法に違反しない、とされる。(× →
最大判S29.11.24


*****憲法2******

憲法2 短答式問題
①憲法22 条が、とくに「公共の福祉に反しない限り」という留保をつけているのは、公
権力による規制の要請が強いという趣旨を示したものであるが、それは、職業は性質上、
社会的相互関連性が大きいので、無制限な職業活動を許すと、社会生活に不可欠な公共の
安全と秩序の維持を脅かす事態が生じるおそれが大きいことのほか、現代社会の要請する
社会国家の理念を実現するためには、政策的な配慮に基づいて積極的な規制を加えること
が必要とされる場合が少なくないことを根拠とする。(○ → 芦部p.217)

②わが国において電力供給事業が一定の事業者のみに認められているのは、積極目的の規
制である。(○ → 芦部p.218)

③わが国最高裁判所の判例によれば、小売商業調整特別措置法3 条1 項による小売市場開
設の距離制限は積極目的の規制であり、その合憲性の判断に際しては、規制の必要性・合
理性の審査と、より緩やかな規制手段で同じ規制目的が達成できるかどうかの検討が必要
である、とされる。(× → 芦部p.219/最大判S47.11.22/最大判S50.4.30)

④「居住・移転の自由」は、その条文上の位置から経済的自由権と考えられ、それを規制
する法律の合憲性審査は、「緩やかな基準」に依拠すべきである。(× → 芦部p.222)

⑤憲法29 条1 項は、私有財産制を制度的に保障するもので、個人が現に有する具体的な
財産権を保障するものではない。(× → 芦部p.225)

⑥わが国最高裁判所の判例によれば、財産上の損失について法令上補償規定を欠く場合に
は、憲法29 条3 項を直接根拠にして補償請求をすることができることはもとより、財産
上の損失以外の損失、たとえば予防接種に起因する健康被害についても、補償規定を欠く
場合には、憲法29 条3 項を直接根拠として補償請求できる、とされる。(× → 芦部
p.231/東京地判S59.5.18/東京高判H4.12.18)

⑦わが国最高裁判所の判例によれば、憲法31 条の定める法定手続の保障は、直接には刑
事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続でないとの理由のみ
で、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当でない、とさ
れる。(○ → 最大判H4.7.1)

⑧わが国最高裁判所の判例によれば、憲法25 条にいう健康で文化的な生活水準の具体的
内容は固定的ではないが、理論的には特定の国における特定の時点においては一応客観的
に決定しうるから、厚生大臣の生活保護基準の設定行為は裁判的統制に服する羈束行為で
ある、とされる。(× → 芦部p.261/最大判S42.5.24)

⑨わが国の最高裁判所の判例によれば、国民年金制度について具体的にどのような立法措
置を講じるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、制定された法令にお
いて受給者の範囲、支給要件等につき不当な差別的取扱いが生じていたとしても、それが
著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用とみざるを得ないような場合を除き、裁判
所が審査判断するのに適しない事柄であるといわなければならない、とされる。(× →
最判H19.9.28)

⑩司法の観念は国や時代により異なるものであって、近代憲法における普遍的な司法の観
念は存在しない。(○ → 芦部p.328)

⑪司法試験の合格・不合格の判定は、具体的な権利義務または法律関係の存否に関する紛
争でもなく、法の適用によって終局的に解決することもできないから、裁判の対象にはな
らない。(○ → 芦部p.330/最判S41.2.8)

⑫わが国最高裁判所の判例によれば、条例に違反する建築工事の中止命令に従わない者に
対して、市長が同工事を続行してはならない旨の裁判を求める訴訟は、自己の主観的な権
利利益の保護救済を目的とするものではなく、法律上の争訟に当たらない、とされる。(○
→ 最判H14.7.9)

⑬わが国の最高裁判所の判例によれば、衆議院の解散は、内閣の自由裁量に基づく行為で
あって司法判断が及ばない、とされる。(× → 芦部p333-334/最大判S35.6.8)

⑭国を被告とする行政事件の第一審について専属管轄権を持つ裁判所を、東京地方裁判所
の支部として設置しても、この裁判所は憲法76 条2 項にいう「特別裁判所」には当たら
ない。(○ → 芦部p.337)

⑮わが国最高裁判所の判例によれば、最高裁判所裁判官の国民審査は、最高裁判所裁判官
の任命そのものを完成させる行為である、とされる。(× → 最大判S27.2.20)

⑯わが国最高裁判所の判例によれば、下級裁判所の裁判官も、憲法81 条に基づく違憲審
査権を有する。(○ → 最大判S27.10.8)

⑰憲法と条約の形式的効力の関係において、「条約優位説」を採った場合には、条約が違憲
審査の対象になるか否かは問題にならない。(○ → 芦部p373)

⑱違憲判決の効力について「一般的効力説」を採った場合、判決の効力は、必然的に法律
制定時まで遡及する。(× → 芦部p.378)

⑲選挙区選出の国会議員について、その選挙区の選挙人によるリコール(解職請求)の制
度を設けることは、憲法43 条1 項に違反する。(○)

⑳国会議員が委員会の議場で行った「ヤジ」にも、憲法51 条の「免責特権」は及ぶ。(×)
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法科大学院一年目前期のひと区切り。今、振り返ってみて。

2012-08-04 21:07:49 | シチズンシップ教育

 本日8/4、前期の最後の試験を持って、4月から始まった法科大学院前期の一区切りとなりました。

 朝から夕までかけて憲法1、憲法2、民法取引法分野の三科目の試験。
 先週は、刑法総論、民法家族法分野、民法不法行為法分野の三科目。

 その他、聴講も含め前期に履修した科目は、行政法演習、法情報学、国際私法、国際私法手続法、ジェンダーと法、法律文書の書き方。

 これら法律を学び、試験を終えて、法律を学ぶ入り口にようやく立てたようなところでしょうか。

 学習を振り返り、自分なりに反省をします。


*法科大学院に入るまでにすべきであったこと
 民法、刑法、憲法の基本的なテキストは、一度終わらせておくこと。自分もそれなりにやってはいたが、もっとやるべきだったと反省ひとしきり。

*五月連休には
 一度、4月分の復習を

*学習に学ぶ過程において
 進度に合わせて、択一問題を解く

 予習を必ずして臨む

 講義直後に、最も重要な事項は、整理してまとめる

 早めに、本試験問題になれる

*夏の課題
 弱点補強 自分の場合、民法か。


 どの講師の先生方も、非常にご教授の仕方が、熱心かつわかりやすいものでありました。とても感謝致しております。

 
 夏期集中講座では、いよいよ、医療と法が始まります。たいへん期待をしているところです。

 後期には、刑法各論、行政法、地方自治法、会社法、民事訴訟法、国際私法取引法、環境法等が控えています。
 それぞれ、楽しみではありますが、行政法、地方自治法、環境法は、特に期待をしているところです。
 憲法は、前期で1と2を学び終え講義がなくなりはするものの、その知識の定着を図らねばなりません。ひとつの大きな課題です。


 

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今日も 地域の子ども達 ぜひ、山車 引いてくださいね!待ってます。住吉神社お祭り8/4土-8/6月

2012-08-03 19:34:17 | NPO・地域力

 いよいよ地元 住吉神社の3年に一度のお祭りです。

 地域の子ども達、ぜひ、山車引いてくださいね!

 あすなろの木(斉藤さん)も全面協力で、お手伝いしています。

 あすなろの木もあけていますので、休憩で使ってください。


 下に、スケジュールも載せておきますね!




 以下、山車のスケジュールです。

8月4日土曜日 午前



8月4日土曜日 午後




8月5日日曜日 午前




8月5日日曜日 午後




8月6日月曜日 午後   (6日月曜日午前はなし)

 

以上。

 

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住吉神社大祭 地元月島四之部町内神輿 スケジュール

2012-08-03 19:22:04 | NPO・地域力

 三年に一度の地元 住吉神社のお祭り。

 お神輿、楽しみですね。
 街が揺れる・・・

 月島四之部町内神輿 スケジュールは、以下。

 よろしくお願いします。
 




 スケジュール



詳細








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憲法学 条約は、違憲審査の対象となりうるか。(一元説、憲法優位説と条約優位説) TPPでも重要課題。

2012-08-03 11:08:18 | 国政レベルでなすべきこと
憲法
第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

条約は違憲審査の対象となりうるか、考えてみたいと思います。


Q君 
  条約(国際法)と憲法の関係についてはどのような説がありますか。

A先生
 一元説と二元説があります。

 一元説では、条約と法律は一元的な法律関係にあるとします。

 二元説では、条約と法律は交わらない別の法律体系であるとします。

 通説は一元説であり、一元説を取った上で、条約優位説と憲法優位説に分かれます。
 憲法優位説に立たない限り、条約の違憲審査は説明がつかない、というのが従来の考え方です。

 また、条約(国際法)優位説をとりながらも、条約の違憲審査を肯定する見解も有力に主張されており、説得力をもった考え方です。


Q君

 憲法優位説の根拠を説明してください。


A先生 

 以下、3つの理由があります。

1)条約優位説では、憲法より簡易な手続で憲法改正がなされることになり、国民主権及び硬性憲法の建前に反すること。
2)国際協調主義からから直ちに、条約優位が導き出されるわけではないこと。
3)98条1項は、国内法における最高法規性を示したものであるから、その規定に条約は当然含まれないこと、98条2項の意味は、条約の中には批准と同時に国内法規になるものもあり、それを遵守するように求めたものであること。

Q君

 憲法優位説を取ったとしても、すべての条約を審査することが可能なのでしょうか。

A先生

 条約といっても、批准と同時に国内法的効力を有する条約(self-executing)の条約とそうではないものがあります。

 前者の審査が問題となります。

 後者は条約の内容を実現する国内法規が存在しない場合は、審査する必要がないし、また、国内法が制定された場合は、通常の法令の審査と同じことになります。
 例えば、カルデロン事件で、在留特別許可を下すべきであるという主張の根拠に、子供の人権条約の該当規定が挙げられていましたが、これは、対応する国内法規がないので、その精神を主張することはできても、実体法上の主張にはなりませんでした。


Q君
 憲法優位説を採用し、条約を審査することを積極的に肯定する根拠は、何ですか。

A先生

1)憲法81条は、違憲審査の対象を限定列挙したものではないし、条約は国会での批准手続を経ている以上、「法律」に準じるものである。
2)条約は国家間の合意であるから、その国際法上の効力は一国のみで決定することはできないが、その国内法上の効力は当該国の国内の問題である。
3)条約の内容が政治的かどうかは、統治行為あるいは自由裁量の問題である。



Q君

 判例は条約の審査を肯定していますか。

A先生

 砂川事件では、「安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」と判示しました。

 裁量権が逸脱しているかを審査するのであるから、実質的に条約の審査を肯定していることになります。


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国立の美しい景観を守る戦い、その後。2012/7/26国立景観訴訟シンポジウムの動画配信。

2012-08-03 10:05:58 | 街づくり

 注目している裁判のひとつです。 国立景観訴訟のその後。

 国立市の宝である景観を守るために戦った首長が、訴えられるという不条理の現実をどう受け止めていけばよいか、疑問を抱かざるをえないところです。
 行政法上の矛盾なのでしょうか。



 関連したシンポジウムが開催され、その動画がアップされたということです。

 日本の地方自治のあり方、首長のあり方、一緒に考えましょう。

******************************



国立景観訴訟シンポジウム


http://www.youtube.com/watch?v=za4J90idJIo



趣旨説明5分まで
1「裁判の経過説明と弁方針」田中隆弁護士・・・5 分から
2「国立景観訴訟の明暗」五十嵐敬喜法大教授・・・・28分から
3「上原裁判のどこが問題なのか?!」宮台真司首都大学東京教授・・・・41分から

後半のパネルディスカッション
http://www.youtube.com/watch?v=IJWqv8li6wc

 

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憲法学 司法権の限界について:自立権、裁量行為、統治行為、部分社会論

2012-08-02 15:55:54 | 築地を守る、築地市場現在地再整備


*****裁判所法*****
第三条 (裁判所の権限)  裁判所は、日本国憲法に特別の定のある場合を除いて一切の法律上の争訟を裁判し、その他法律において特に定める権限を有する。
○2  前項の規定は、行政機関が前審として審判することを妨げない。
○3  この法律の規定は、刑事について、別に法律で陪審の制度を設けることを妨げない。

**************



Q君 裁判所法3条の「一切の法律上の争訟」の例外を説明してください。


A先生

1)憲法が明文で認めたもの~議員の資格争訟、裁判官弾劾裁判
2)国際法によって定められたもの~国際法上の治外法権、条約による裁判権の制限
3)事柄の性質上裁判所の審査に適さないもの~議院の自律権、行政裁量・立法裁量
                      統治行為、団体内部の事項(部分社会論)

Q君
 十分な審議を行わないままに、国民生活に重大な影響を与える法律(たとえば、共謀罪など)が、衆参両院において強行採決で可決成立した場合、当該法律によって(訴追されるなどして)不利益を受ける国民は、法律の成立過程に瑕疵があって、法そのものが違憲の存在であるという主張を行うことができますか?

A先生

 自己に適用される法律が違法であることを争う審理には、二段階の審査があり、裁判所には、これに対応した二つの審査権があります。

 一つは、成立過程に国会法等に反する瑕疵があるかどうかという形式的審査権。もう一つは、当該法律が憲法に反するかどうかの実質的審査権です。

 明治憲法下の通説は、実質的審査権(違憲審査権)は否定していましたが、形式的審査権は肯定していました。

 そうすると、実質的審査権を付与された日本国憲法の下で、形式的審査権を放棄する理由がないことになります。
 裁判所の形式的審査権は、法の支配からみると当然の権限であって、自律権を侵害することにはなりません。
 重要な人権であれば、以下述べますが、なおさら、形式的審査権を行使すべきであります。


*ワンポイントアドバイス
 形式的審査権と実質的審査権の違いは、刑事事件・行政事件における、手続的違法と実体的違法の違いとパラレルに考えると分かりやすいはず。行政事件であれば、脱税で起訴され、課税処分の違法性を争う場合は、手続的違法(課税のための調査がプライバシーを侵害したなど)の主張と、実体的違法(税法の解釈適用が誤っている)の二つの主張がなされる。
 

<自律権>
Q君

 自律権に属する行為を説明してください。
 また、自律権に属する行為はどのような理由から、裁判所が審査できないのかを説明してください。


A先生
 
 議院の自律権とは、各議院が内閣裁判所など他の国家機関や議院か監督や干渉を受けることなく、その内部組織及び運営等に関し自主的に決定する権能のことをいいます。
 
 内部組織に関する自律権と運営に関する自律権があります。具体的には、審議が国会法・議院規則に違反していることの審理と懲罰の審理です。

 なぜ、自律権が司法審査の対象外かというと、司法権の独立とちょうど逆に考えると分かりやすいです。

 重要な法案の審議(イラク戦争関連法案とかを想定してください)をどのように進めるか、という問題は、国会からみると、国民の民意を背景にして必要な法案を成立させることであり、それは高度の政治性を有し、さまざまな判断を必要とすることから、他の国家機関の干渉に本来的にはなじみません。端的に言うと、権力分立に反するということです。

 懲罰についても、その事情をよく知っている内部の判断が尊重されるべきであり、裁判所が審査をすることは、権力分立に反することになります。



Q君

 自律権とされる事項が審査できないという説には、どのように反論が可能でしょうか?


A先生

 第一に、上で指摘したように、形式的審査権が当然裁判所にあるはずであること。

 第二に、人権が問題となっているときに、三権分立を持ち出すのは矛盾しています。
 そもそも、三権分立は何のためにあるのか、という点を無視しています。
 権力分立は、一つの権力(特に政治部門)が人権を抑制しないように相互をチェックするためのものであります。三権分立を持ち出して、人権侵害の可能性のある法律の審査を否定するのは問題です。
 また、懲罰権の場合は、議員の人権が問題となることから、権力分立原理を持ち出すことは説得力がありません。さらに、懲罰権は、少数会派の排除に用いられることが多いことから、デモクラシーの過程を維持する役割を担う裁判所が、審査をするのはむしろ必要なことであります。


<裁量行為>
Q君

 裁量行為の当不当と裁量行為の濫用・逸脱は、法的効果にどのような違いがあるかを説明してください。

A先生

 ある行政行為が、行政庁の自由裁量に委ねられていると判断された場合は、裁量権の範囲内であれば、違法性は生じません。裁量権が逸脱・濫用した場合に違法になります。(行政事件訴訟法30条参照)。
 例 典型的な自由裁量行為である公務員の懲戒処分の場合、比例原則におおむね従っているときは、違法にはなりません。痴漢と泥棒は、懲戒免職。度重なる遅刻は一カ月の停職など。しかし比例原則に反したり、別の理由で(組合つぶしなど)処分をしたりするのは、裁量権の逸脱・濫用になる。

 逸脱は処分の目的に反するもの、濫用は比例原則に反するなどして、度を越したり、過度に人権を侵害する内容となったりするもの、というように考えておくとよいでしょう。(逸脱と濫用が重なる場合もあって、概念的にはっきりと区別することが難しいのです。)

 では不当な裁量行為とは何か? 少し「やりすぎた」(軽度な比例原則違反・行政担当者から見て職務の目的からはずれる)場合など。不当な裁量行為は、行政不服審査によって是正されます。

 立法裁量の場合は、国会が裁量権を逸脱・濫用したものは、違憲となります。
 国会が不当な立法裁量を行ったと非難することは可能であるが、それは裁判所によって救済されないし、不当性が司法過程で是正されることはないです。裁判所の違憲審査権の範囲外であります。


Q君

 生存権・生活保護法を例にとって、立法裁量と行政裁量の違いを説明してください。

A先生

 生存権に係る立法裁量は、生存権を具体化する立法(生活保護法)を行う、行わないという裁量と、生活保護法をどのような内容にするか、という二段の裁量があります。

 判例は、プログラム規定説を採っていなくて(採っていると裁量権はない)、国会に広い裁量権があると言っている(堀木訴訟の「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられていて」という記述を参照してください。)。

 生存権に係る行政裁量は、生活保護法の執行の問題であります。生活保護の認定基準等をどのような内容・レベルにするかどうかは、行政庁である厚生労働大臣の裁量行為であります(朝日訴訟判決 )。
 
(注意 なお、朝日訴訟判決が憲法25条1項をプログラム規定説と解釈しているとしているテキストもあります。判決文を読むと確かに、判決当時は、プログラム規定説ととることができますが、今の判例理論は、堀木訴訟判決等に見られるように、生存権については、立法府に広い裁量を与えるという説を採っているので、抽象的権利説に近いものとなっています。)


Q君

 立法裁量は広い場合と狭い場合を分けて考えるべきであるとしていますが、立法裁量が狭い場合とはどのような場合を指すと考えるべきでしょうか。また、判例は、どういう領域について広い立法裁量を認めていますか。


A先生
 立法裁量が狭い領域とは、裁判所が積極的に違憲審査権を行使すべき領域であるので、精神的自由、経済的自由の消極的規制、選挙についての規制です。
 ただし、判例は、精神的自由については、信教の自由以外は、それほど立法裁量を狭いととらえているわけではありません。

 逆に広い領域は、経済的自由の積極的規制、租税政策、社会福祉の領域です。


<統治行為>
Q君

 統治行為とは何かを説明してください。

 また、統治行為を否定する説が主張されていますが、その根拠を説明してください。


A先生
 統治行為とは、直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為で、法律的な判断が可能であるのに、(事柄の性質上、)司法審査の対象から除外される行為です。

 ポイントとなる要素としては、1)高度な政治性があって、2)法律的な判断が可能であるのに裁判所が判断しない行為であります。

 否定説の論拠は、以下です。

 形式的理由 ○81条には除外事由がないので、あらゆる国家行為の審査が可能である。
       ○98条の最高法規性の宣言から違憲な行為はすべて存在しえないはずである。

 実質的理由 ○法治主義に反する。
       ○権力分立によって人権を保障することの意味が没却される。
       ○司法権の独立が保障されている以上、政治紛争に巻き込まれることはない。
       ○多数決に抵抗し、匡正作用を発揮することが裁判所の使命であるのに、政治性(つまり多数決)を理由に統治行為の存在を肯定するのは矛盾している。
       ○統治行為の概念があいまいであるので、本来裁判所が救済しなければならない事件についても用いられる危険性がある。

******憲法*******
第八十一条  最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。



Q君

 統治行為についての代表的判例を挙げて、説明してください。


A先生

 砂川事件では、「安保条約の如き、主権国としてのわが国の存立の基礎に重大な関係を持つ高度の政治性を有するものが、違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査の原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にあると解するを相当とする。」と判示しました。

 砂川事件は、政治部門の自由裁量の要素を残した「準統治行為論」を採用した。


 苫米地事件では、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきものである。」と判示しました。

 苫米地事件は、純粋な統治行為論を採用しました。また、その根拠づけとしては、内在的制約説を採用しました。



Q君
  砂川事件の「一見極めて明白に違憲無効である」とはどういう意味か説明してください。

A先生

 条約の違憲性の判断は、政治部門の自由裁量でありますが、裁量権の行使が逸脱・濫用した場合は、違憲無効になるという意味です。

 一見極めて明白に違憲とは、裁量権行使の枠組みを超えた場合を指します。したがって、裁判所は、政治部門による裁量権の濫用があったかどうかを審査できることになるので、砂川事件型統治行為(準統治行為)は、純粋な統治行為(苫米地事件型)とは、その点が異なります。



Q君

 統治行為の自制説と内在的制約説について説明してください。また、芦部説はどの立場をとっているのですか。

A先生
 
 自制説は、司法審査を行うことによる混乱を回避するために裁判所が自制すべきであるとします。自衛隊・安全保障問題のような事件に対する判断を下すことは、司法部に対する批判を招き、政治紛争に巻き込まれる可能性があるということを重視しています。

 内在的制約説は、非民主的で政治責任を負うことがなく、能力的な限界のある裁判所には、本来的に審査の対象外の事項がある、という見解であります。権力分立の概念からも、そのような判断は、政治部門に委ねられていると解するべきである、としています。


 芦部説は、内在的制約説を基本にしながら、自制説の要素を加味すべきであると考えます。
 すなわち、裁判の結果生じる事態、司法の政治化の危険性、司法手続の能力的限界、判決の実現性(以上は自制説的要素)と、政治過程の維持・権利保護の必要性(以上は否定説的要素)のバランスをとって慎重に、ケースバイケースで判断すべきであるとします。また、できる限り、他の理由で説明できるもの(裁量行為・自律権など)、裁判所の基本的な使命に属するものについては、統治行為を用いるべきではない、としています。



Q君

 統治行為を回避する方法の一つとして、違憲判決において、「違憲判断」と「効力」分離する考え方がありますが、どのようなものかを具体的な判例を挙げて説明してください。

A先生

 当該法令・処分が違憲であることを宣言しつつ、その効力を発生させない手法であります。

 行政事件訴訟法の事情判決の考え方を応用したものである。
 
 衆議院議員定数違憲判決「衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合であっても、それを理由として選挙を無効とする判決をすることによって直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる判示のような事情などがあるときは、行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。(事情判決)」判例 S51.04.14 大法廷・判決

 
Q君 この事情判決方式はどういうメリットがあるのですか。


A先生 

 自制説が懸念する混乱を回避しつつ、積極的に違憲判決を行使することができるようになります。



<部分社会論>
Q君

 部分社会論について説明してください。
 部分社会論に否定的な考え方がありますが、その根拠を説明してください。


A先生

 部分社会論とは、地方議会・大学・政党・労働組合など、一般社会の中にあって、これとは別個に自律的な法規範を有する部分社会に対しては、その内部的紛争はすべて司法審査の対象とならないという見解です。
 
富山大学単位不認定事件
「裁判所は、憲法に特別の定めがある場合を除いて、一切の法律上の争訟を裁判する権限を有するのであるが(裁判所法三条一項)、ここにいう一切の法律上の争訟とはあらゆる法律上の係争を意味するものではない。すなわち、ひと口に法律上の係争といっても、その範囲は広汎であり、その中には事柄の特質上裁判所の司法審査の対象外におくのを適当とするものもあるのであつて、例えば、一般市民社会の中にあってこれとは別個に自律的な法規範を有する特殊な部分社会における法律上の係争のごときは、それが一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、その自主的、自律的な解決に委ねるのを適当とし、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが、相当である。」「それゆえ、単位授与(認定)行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的な判断に委ねられるべきものであつて、裁判所の司法審査の対象にはならないものと解するのが、相当である。」
 以上のように、判例は、司法審査の対象の可否を考察するにあたっては、一般市民法秩序と直接の関係を有するかどうかを決め手としています。

 紛争に係る各団体の設立目的・性質・機能・憲法上の根拠の相違に応じ、かつ紛争の性質や権利の性質等を考慮にいれて考えるべきであって、法秩序の多元性を理由として、部分社会論を機械的に当てはめて、司法審査を否定すべきではないとしています。
 よって、部分社会論に対する否定的な考え方では、ケースバイケースで判断すべきであって、部分社会論を一律に当てはめるべきではないとします。


Q君 

 判例は除名または退学とそれ以外の内部の処分に分けて判断しているがそれはなぜですか。

 また、判例の問題点は、なにかありますか。


A先生

 判例理論の含意は、「部分社会の自律性を尊重し、できる限り内部で解決する方が、結果的には個人の人権保障と団体の自主性の維持に資するし、部分社会を抜け出す場合は、もはや市民社会の規範で裁判をすることが人権保障に適う」ということにあります。また、このような判例理論は、わかりやすいことから、法的安定性にも適います。
 さらに、「自主的にその社会に入ったのである以上、その内部にいる限りはその規範に従うべきである」という含意もあります。
 
注 含意(implication)とは、暗黙のうちにその中に含まれている意味のこと。
 
判例に対する批判点は、以下が考えられます。

 1)「一般市民社会の法秩序」の意味が曖昧である。
 2)部分社会の外に出なくても、重大な不利益を被ることがありうる。小さな不利益でも、卒業認定などの大きな不利益との因果関係が認められる可能性がある。
 3)部分社会という概念が、人権制約の理由として用いられる。
 4)個人の権利を団体の利益に優先させることになりかねない。
 5)多元的な法秩序に従うことが、必ずしも人権保障につながらない場合がある。特に、強制加入団体(税理士会など)において、当該ルールを強制される場合は裁判的救済を保障する必要がある。
 6)団体の性質に着目した、ケースバイケースの判断がなされていない。政党は公的資金を導入されていることから、むしろ公的機関に近い存在であり、内部での非民主的な統制は許されない。ただし、判例は、日本共産党袴田事件で、次のように述べる。
 「政党の結社としての自主性にかんがみると、政党の内部的自律権に属する行為は、法律に特別の定めのない限り尊重すべきであるから、政党が組織内の自律的運営として党員に対してした除名その他の処分の当否については、原則として自律的な解決に委ねるのを相当とし、したがって、政党が党員に対してした処分が一般市民法秩序と直接の関係を有しない内部的な問題にとどまる限り、裁判所の審判権は及ばないというべきであり、他方、右処分が一般市民としての権利利益を侵害する場合であっても、右処分の当否は、当該政党の自律的に定めた規範が公序良俗に反するなどの特段の事情のない限り右規範に照らし、右規範を有しないときは条理に基づき、適正な手続に則ってされたか否かによって決すべきであり、その審理も右の点に限られるものといわなければならない。」

 7)団体内部の少数者を救済できなくなる恐れがある。
 8)重大な人権侵害がありながら、一方で、団体に所属する利益がある場合は、比較衡領して、権利侵害が大きいときは、司法的救済を行う必要がある。

Q君

 部分社会論を事件性の要件という点から考察すると、どのように説明できますか。

A先生

 判例理論は次のとおり。
 事件性の要件のうち、第一要件については、一般市民社会秩序に直接関係することが、それを充足することになります。

 第二要件については、第一要件が満たされると、一般市民法秩序の法を適用して最終的に解決できることになります。


Q君

 富山大学単位不認定事件で、原告側としては、単位不認定に対してどのように主張して争うことができますか。弁護士の立場で考えればどうでしょうか。

A先生
 以下、反論が可能でしょう。

1)学説に基づく主張としては、単位不認定が重大な不利益であり、裁判による救済が必要であると主張する。
2)判例に理論に基づいた主張としては、単位の不認定が、卒業などに影響を与え、一般市民社会秩序に直接関係すると、主張する。
3)当時国立大学であったことから、不利益を課した単位認定手続が31条の適正手続に違反すると主張する。
4)単位認定が裁量行為であることから、裁量権の逸脱濫用であり、学習権の侵害につながると主張する。


以上
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