****未成年******
Q君
憲法上、未成年を特別扱いしている規定はありますか?
A先生
15条3項は、成年のみに選挙権を与えている。
26条2項は、子女に普通教育を受ける権利を保障している。
27条3項は、児童はこれを酷使してはならない、と規定している。
26条1項では、解釈論上、子供の学習権が保障されている。
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
○4 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第二十七条 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3 児童は、これを酷使してはならない。
Q君
児童・未成年が、成年と比べると、人権の制約を受ける根拠は何ですか?
A先生
以下の理由が考えられます。
1)心身ともに発達途上であり、成人に比して、判断力も未熟であること。
2)経済的・倫理的な責任を取ることが困難な場合もあること。民事・刑事の法的責任も制約されている。
3)パターナリズム(父子主義・温情主義と訳されているが、その人の利益にかなうという理由から、個人の自由に干渉すること。典型例は、オートバイのヘルメット。10万円以下の現金振込み禁止など。社会には多数存在する。年金の強制加入もその一種である。)
Q君
未成年の人権制約の根拠に照らしたとき、合理的な理由のあるもの(未成年の飲酒禁止)もありますが、合理的な理由の存在が疑わしいものもあるのではないですか?
A先生
合理的な理由の存在が疑わしいものもあります。
例えば、
男子の婚姻年齢18歳未満
バイクの禁止・中学生の丸刈り など
******天皇・皇族********
Q君
天皇・皇族が一般国民と比較して、人権が制約されていますが、その根拠は何ですか?
A先生
以下、理由が考えられます。
1)天皇が世襲であること。婚姻に対する手続的制約がある。
2)天皇が象徴であること。プライバシーの権利は大幅に制約を受ける。
3)その職務に政治的中立性が求められていること。テキストのいうところの、職務の特殊性とは、2)の象徴であることと3)の政治的に中立であることを示す。
Q君
天皇・皇族にプライバシーの権利は保障されますか。
A先生
まったく保障されないという説もありますが、人権の普遍性に照らすと、保障されるとすべきであると考えられます。
しかし、職務の特殊性からいうと、かなり制約があると解すべきであります。
国の象徴である以上は、きわめて公的な存在であり、私的な領域は狭くなります。
しかし、家庭内の問題、病歴、出産の経緯などは、慎重に取り扱われるべき事柄であります。
*******法人*******
Q君
法人に、人権規定が適用される根拠は、何ですか?
A先生
法人に、性質上可能な限り人権規定が適用されます。
以下、根拠が二つ考えられます。
1)法人の活動が可能な限り自然人を通じて行われ、その効果は究極的に自然人に帰属するから。(自然人還元論)
2)法人が現代社会において一個の社会的な実体として、重要な活動を行っているから。(法人社会的実在論)
Q 法人には、なぜ人権が与えられるのですか?上記、二説の批判は?そこから、いかに考えますか?
A先生
社会的実在説への批判→民法上の権利の主体だからといって、憲法上の人権を与える理由にならない。
自然人還元説への批判→自然人に人権を与えれば十分ではないか。法人内部の少数派には人権が還元されない可能性もある。
よって、公共の福祉に基づく人権を根拠に考えます。つまり、社会にとってプラスになるから人権を与えることになるのです。
そうすると、逆に、社会に対して不利益を与える場合は、人権は外国人よりも制約しやすいことに帰結します。(長谷部 憲法)
Q君
八幡製鉄事件最高裁判決の問題点は?
A先生
政治献金を自由に政党に提供できるとすると、個人よりもはるかに大きな影響力を行使することになり、政治過程における個人の民意反映の機会が相対的に減少することが問題であります。
上述の説明で行くと、社会にとって不利益を与えることになるので、政治献金提供の自由は一定程度制約すべきことになります。
また、現在の二重の基準論からみると、裁判所は、政治過程における公正な競争を確保する役割を担うことになっているので、その意味でも、政治献金提供の自由を制約する判決を出す必要があったということができます。
Q君
「人権の実質的公平を確保する社会国家の理念に基づいて、自然人よりも広範な積極的規制を加えることが許される」とは、どういう意味ですか?
A先生
小売市場調整特別法や旧大店法のように、社会的弱者の保護のために、積極的な規制が行われることも可能である、ということをいいます。
Q君
「一般国民の政治的自由を不当に制限する効果をともなったり」とは、具体的にどういうことを指すのですか?
A先生
政治献金を多額に寄附することによって、大企業が大きな政治的影響力を行使することは、一般国民の政治的発言力を相対的に弱めることにつながる、ということを指します。
「政治には金がかかる」という現実を直視すると、企業は献金によって見返りを求め、政治家・政党は資金提供者の意に沿う行動を取ることになるであろうことが懸念されます。
Q君
「法人内部の構成員の政治的自由と矛盾・衝突したりする場合」とは、どういうことですか?
A先生
たとえば、組合内部で支持政党が二つに分かれていたり、南九州税理士会事件判決に見られるように、寄付金・献金の対象や相手についての見解が分かれたりすることを指します。
Q君
最高裁の南九州税理士会政治献金事件判決と群馬司法書士会震災支援寄付金事件判決の違いはどこにありますか?
A先生
共通点は、ともに強制加入の団体であることです。
違いは、税理士会は、政治団体(税理士政治連盟)に寄付したことにあります。政治献金を内部の多数決によって、会員に強制することは、会員の思想信条と衝突して、会員の思想信条の自由を侵害する可能性があります。
また、当該政治活動には参加したくない、賛成の意思表示をしたくない、という、表現の自由の消極的側面を侵害します。
なお、判例理論としては、八幡製鉄所事件の場合は、会社であるから政治献金をすることも許されるが、税理士会は強制加入の団体であるために、政治献金をするという権利能力が制限されると考えられます。
司法書士会が行ったのは、震災への寄付金であり、これは政治的なものではないので、金額その他について社会的な相当性の範囲内で、寄付の権利能力が認められるとされました。
Q君
人権の享有主体のまとめとして考えると、外国人の人権と法人の人権の保障の程度、及びそれに対する基本姿勢はどのように異なっているのですか。
A先生
以下、まとめとして考えられます。
1)外国人については、個人の尊厳の原理から、性質が許す限りできる限り人権を保障すべきと考える。つまり人権保障を拡大する方向で考えるのが原則である。
2)法人については、自然人還元論に立つと、自然人に利益を与える限り保障すべきであり、社会的実在論に立つと、その社会的な影響力の強さを考慮して、限定的かつ、自然人に無関係なものは保障されないと考えるべきであろう。または、社会に利益を与える限度で人権を保障すべきであろう。
3)法人に対しても外国人対しても、「各主体の種類及び性質」を、人権享有の程度を考察する要因の一つとすべきである。
以上