憲法学1に前期期末試験の論述問題。
村上春樹氏が、『1Q84』でも、題材として取り上げていたことのひとつだったような。
現実問題十分ありうる題材だと思います。
試験本番では、うまく書けず、反省しているところ。
まずは、問題を掲載します。
****問題***
X会は、「農作業による人格の形成発展」を理念とする宗教団体である。X会は農場を経営し、そこでは、宗教行為の一環として、信者による農作業が行われていた。X会の農場では、子どもを含む集団生活が行われていて、同会の15歳未満の児童・生徒も、早朝から農作業を行った後で、所属する小中学校に登校していた。A県B市にあるX会経営のC農場では、信者の子ども(なお、彼らもX会に入信している)20人(以下「本件児童生徒」という。)が、小学校・中学校への登校の前と下校後に作業をしていた。X会の児童労働が、メデイアで取り上げられ社会問題となっていたことから、所轄のB労働基準監督署は、C農場に対する立ち入り調査を実施し、児童労働の実体を把握した。調査によると、C農場では、本件児童生徒に対して、早朝から登校まで間に農作業をさせていること、放課後クラブ活動や交友をさせないで、帰宅後は日没まで農作業をさせていること、学休日は一日中農作業をさせていることが確認できる。
以下は、立ち入り調査の際行われた、C農場の責任者であるYとB労働基準監督署の監督官Zのやりとりである。
Z「児童労働は、労働基準監督署の許可を得ない限り、労働基準法によってきんしされているので、速やかに中止してください。」
Y「X会の理念は、人間社会のあり方を探求しそれを実践することによって、『すべての人が幸福である社会』を実現しようとするものです。経済基盤を農業に置き、有機農法を行って自然との共生を図りつつ、基本的には自給自足を行い、どうしても必要な物資は農作物を販売して得た資金で購入します。個人財産という概念はなく、構成員ならいつでも誰でも必要なときに必要なだけ手にして良いという、ユートピアの建設をめざしています。ユートピア建設のためには、農作業が特別重要な活動になっています。」
Z「理念はともかく、許可なく児童労働がなされていることは違法です。」
Y「児童生徒といえども、憲法で保障された信教の自由があり、かれらも、喜んで農作業に従事しているのですよ。強制労働でも、苦役でもありません。自発労働です。これを禁止することは、むしろ人権侵害ではないのですか。学校にも登校しているし、学業に何ら影響が有りません。それは親も同意しています。また、クラブ活動するか、しないかは、本人の自由なはずです。」
Z「児童の労働の理念や意義を論じる必要がありません。国民の法的義務として、児童労働は禁止されているのです。」
結局、Yが労働基準監督署の中止要請に従わないことから、Yは、労働基準法56条に違反するとして、起訴された(労働基準法118条1項)。なお、YはB労働基準監督署長から、労働基準法56条2項における許可を得るために、本件児童生徒が通学する小中学校長から、「その者の修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書」(年少者労働基準規則1条)を得ようとした。しかし、当該学校長は、上述の証明書を発行することを拒否した。
問1 あなたは、本件Yに係る刑事裁判において、Yの弁護人であるとすれば、どのような憲法上の主張を行いますか。
問2 検察官の反論を想定しつつ、本件刑事裁判に係る憲法上の争点について、あなた自身の見解を述べなさい。
以上
村上春樹氏が、『1Q84』でも、題材として取り上げていたことのひとつだったような。
現実問題十分ありうる題材だと思います。
試験本番では、うまく書けず、反省しているところ。
まずは、問題を掲載します。
****問題***
X会は、「農作業による人格の形成発展」を理念とする宗教団体である。X会は農場を経営し、そこでは、宗教行為の一環として、信者による農作業が行われていた。X会の農場では、子どもを含む集団生活が行われていて、同会の15歳未満の児童・生徒も、早朝から農作業を行った後で、所属する小中学校に登校していた。A県B市にあるX会経営のC農場では、信者の子ども(なお、彼らもX会に入信している)20人(以下「本件児童生徒」という。)が、小学校・中学校への登校の前と下校後に作業をしていた。X会の児童労働が、メデイアで取り上げられ社会問題となっていたことから、所轄のB労働基準監督署は、C農場に対する立ち入り調査を実施し、児童労働の実体を把握した。調査によると、C農場では、本件児童生徒に対して、早朝から登校まで間に農作業をさせていること、放課後クラブ活動や交友をさせないで、帰宅後は日没まで農作業をさせていること、学休日は一日中農作業をさせていることが確認できる。
以下は、立ち入り調査の際行われた、C農場の責任者であるYとB労働基準監督署の監督官Zのやりとりである。
Z「児童労働は、労働基準監督署の許可を得ない限り、労働基準法によってきんしされているので、速やかに中止してください。」
Y「X会の理念は、人間社会のあり方を探求しそれを実践することによって、『すべての人が幸福である社会』を実現しようとするものです。経済基盤を農業に置き、有機農法を行って自然との共生を図りつつ、基本的には自給自足を行い、どうしても必要な物資は農作物を販売して得た資金で購入します。個人財産という概念はなく、構成員ならいつでも誰でも必要なときに必要なだけ手にして良いという、ユートピアの建設をめざしています。ユートピア建設のためには、農作業が特別重要な活動になっています。」
Z「理念はともかく、許可なく児童労働がなされていることは違法です。」
Y「児童生徒といえども、憲法で保障された信教の自由があり、かれらも、喜んで農作業に従事しているのですよ。強制労働でも、苦役でもありません。自発労働です。これを禁止することは、むしろ人権侵害ではないのですか。学校にも登校しているし、学業に何ら影響が有りません。それは親も同意しています。また、クラブ活動するか、しないかは、本人の自由なはずです。」
Z「児童の労働の理念や意義を論じる必要がありません。国民の法的義務として、児童労働は禁止されているのです。」
結局、Yが労働基準監督署の中止要請に従わないことから、Yは、労働基準法56条に違反するとして、起訴された(労働基準法118条1項)。なお、YはB労働基準監督署長から、労働基準法56条2項における許可を得るために、本件児童生徒が通学する小中学校長から、「その者の修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書」(年少者労働基準規則1条)を得ようとした。しかし、当該学校長は、上述の証明書を発行することを拒否した。
問1 あなたは、本件Yに係る刑事裁判において、Yの弁護人であるとすれば、どのような憲法上の主張を行いますか。
問2 検察官の反論を想定しつつ、本件刑事裁判に係る憲法上の争点について、あなた自身の見解を述べなさい。
以上