「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

尖閣諸島問題、英知を出し、戦争回避の方向性を。上陸合戦では解決しない。

2012-08-21 16:02:51 | 戦争と平和
 尖閣諸島の問題のひとつの見解として掲載します。

 私たちは、英知を出して、決して戦争を起こさない方向性を見出さねばならないと思います。


*****琉球新報(2012/08/21)*******
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-195921-storytopic-1.html
社会


「慰霊祭利用された」 遺族会、署名を拒否 尖閣上陸  2012年8月21日


 【石垣】尖閣列島戦時遭難者遺族会の慶田城用武会長(69)は20日、琉球新報の取材に応じ「日本の領土を守るため行動する議員連盟」の山谷えり子会長(自民党参院議員)から洋上慰霊祭を目的とした上陸許可申請に署名を求められ、拒否したことを明かした。慶田城会長は「遺族会の気持ちを踏みにじり、慰霊祭を利用して上陸したとしか思えない」と話し、議連の洋上慰霊祭や地方議員らの魚釣島上陸を厳しく批判した。
 慶田城会長によると、約10日前に領土議連の山谷会長から電話があり、政府に提出する上陸許可申請への署名を求められた。慶田城会長は「領土を守るという議連の考えと、み霊を慰めるとの遺族会の考えに違いがある」と、依頼を断った。
 領土議連は尖閣諸島へ出港する前の18日、石垣島にある尖閣列島戦時遭難死没者慰霊之碑前で慰霊祭を開催したが、遺族会に案内はなく、参加した遺族は1人だけだった。洋上慰霊祭への参加依頼もなかった。
 尖閣列島遭難事件は沖縄戦で日本軍の組織的な戦闘が終了した後の1945年7月、石垣島から台湾に向かった2隻の疎開船が米軍の攻撃を受け、1隻が沈没、もう1隻が尖閣諸島の魚釣島に漂着し、米軍の攻撃や漂着後の餓死などで多くの犠牲者が出た事件。慰霊碑は魚釣島と石垣島の両方にある。
 事件で兄を亡くした慶田城会長は「私たちは毎年、尖閣が平和であることを願って慰霊祭を開催し、二度と戦争を起こしてはならないと誓っている。慰霊祭を利用して戦争につながる行動を起こすことに対し、無念のうちに死亡したみ霊は二度目の無念を感じていると思う」と強調した。
 領土議連や上陸した地方議員の行動に「上陸合戦で問題は解決しない。日中の緊張を高める意味で、尖閣に上陸した香港の活動家と同じように映る」と指摘。「日中ともに上陸した後の目的がなくエスカレートするばかりだ」と危惧した。
 また「上陸に異を唱える発言をすると『非国民』と批判が出る空気がある。私もよく『中国寄り』と批判を受けるが、愛国心の出方が違うだけだ。戦争に向かうような行動はしてほしくない」と話した。(稲福政俊)

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憲法27条3項「児童は、これを酷使してはならない。」 栃木県足利市中学三年生の工事現場労働と事故死の問題

2012-08-20 17:51:26 | 子育て・子育ち

 憲法27条3項において、児童労働は禁止されています。

 
第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3  児童は、これを酷使してはならない


 ブログ2012/08/18提示http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/85e49f3e3f439c957cf2efe8b60f2ea3 の演習例題は、「ありそうで、でも、ないかもしれない。」程度と思いきや、類似ケースが奇しくも東京新聞(2012/08/20)で解説をされていました。


 児童労働は、国際的には大きな問題でありますが、小児科医師としても、重大なテーマであります。

****東京新聞(2012/08/20)******
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2012082002000123.html 

【社会】


働く14歳の命消えた 学校・市教委「職場体験」と容認

2012年8月20日 朝刊

 わずか十四歳の男子中学生が、真夏の工事現場で働き、事故に巻き込まれた。栃木県足利市立西中学校三年の石井誠人君はなぜ、現代日本では考えにくい状況で命を落としたのか。検証していくと、義務教育を投げ出し、労働基準法の認識も欠けた教育現場に行き当たった。 (稲垣太郎)


 炎天下、中学生のように見える少年が黙々と作業をしていた。西中の学区から渡良瀬川を渡ってほどない群馬県太田市の堤防近く。石井君がアルバイトをしていた会社の作業所は空き缶などが入ったビニール袋が山のように積まれ、高い鉄板で囲まれていた。


 石井君もここで空き缶などの分別や圧縮などの作業をしていた。こうした作業も労基法では十四歳の少年には禁止されているが、今月六日には、群馬県桐生市の中学校体育館改修工事に伴うがれき撤去作業の現場に出され、崩れてきた壁の下敷きになり、搬送先の病院で死亡した。


 伏線は五月下旬。同級生の男子生徒(15)の父親が、学校を休んで親戚の鮮魚店で働かせたいと求め、西中は了解した。授業を休んでのアルバイトが公然と認められれば、ほかに希望者が出てきてもおかしくない。


 実際には鮮魚店でなく、太田市のこの会社で働いていたことが分かったが、学校は学習活動の一環である「職場体験」として認めた。板橋文夫教頭は「卒業後に土木の職に就きたいという希望があり、学校での様子や学習意欲の状況を見て判断した」と説明する。


 六月二十二日に岩下利宏校長と担任が作業所に社長(45)を訪ね、「よろしくお願いします」と依頼までしていた。


 一方、石井君は六月下旬から土曜日にこの会社で働き始めた。夏休みに入ると、平日は毎日働きたいと学校に希望。卒業後に建設会社への就職希望もあったため、これも職場体験として認められた。板橋教頭は「机に座ってじっとしているより、体を動かして働きたいという希望が本人にあった」と話す。


 ただ、足利市教育委員会から報告を受けた文部科学省によると、学校側は、二人のアルバイトが本来の職場体験とは異なることを当初から認識していた。


 学校の対応からは、労働基準法に対する意識が感じられない。同級生が学校を休んで働くことを認めたのは義務教育の放棄に映る。板橋教頭は会社と「長年の信頼関係があった」と言い「若い人たちを受け入れて仕事をさせる面倒見の良い会社」と評した。


 学校を管理する立場の市教委も、平日働くことに指導もせず、仕事内容も確認しないで認めてしまった。


 会社も違法の認識があった。社長は八年ほど前から計約二十人の中学生を日当五千円で雇ってきたと話し「親からも頼まれ、違法と知りながら義理人情で受け入れてしまった」と説明。石井君については「知らないうちに従業員が工事現場に出した」とずさんな管理を認めた。


 文科省の担当者は「学校、教育委員会とも労働基準法に関する認識が希薄だったために生徒が働くことを認めてしまい、亡くなった子どもが工事現場に行ってしまった」と指摘。同級生が学校を休んで働くことを学校、市教委とも認めたことには「職場体験という誤った認識で認めてしまった。学校は保護者に就学義務の履行を求めなければならなかったし、生徒には登校を促さなければならなかった」と批判する。


 西中が、教育機関としての責任を投げ出し、生徒のアルバイトを「職場体験」にすり替えて容認。市教委もチェックを怠り、会社も法を守らなかった果てに、将来のある子どもの命が犠牲になった。


<労働基準法> 労働に関する規制などを定めた法律。年少者が15歳に達した日から最初の3月31日が終わるまでの使用を原則として禁じている。


 主に非工業的な事業で健康と福祉に有害でなく、労働が軽易なものについては13歳以上、映画や演劇の仕事なら13歳未満の児童でも、勉強に差し支えないことを証明する校長の証明書などを添えて申請して労働基準監督署が許可すれば、修学時間外に使用することを例外的に認めている。


<職場体験> 生徒が事業所などの職場で働くことを通じ職業や実際の仕事について、体験したり働く人と接したりする学習活動。2008年度の学習指導要領の改定で、中学校では職場体験活動を重点的に推進することになり、10年度は公立中学校の97.1%で実施された。文部科学省によると、職場体験は学校の教育活動として実施するもので、生徒や保護者が個別に希望して認められるものではない。

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認知症や障がいがあっても、住み慣れた地域で暮らし続けるためのサポート体制。

2012-08-19 23:00:00 | NPO・地域力
どの地域でも、住みなれた場所が、そのひとのふるさとになり、最後の最後まで、その場所で暮らし続けることが理想です。もちろん、それが、ここ中央区であれば、中央区においてでもです。
 その場合、それをささえることができる、地域(ご近所さん、民生委員、町会・自治会、NPO、消防団など)-医療(ケアマネージャー、ヘルパー、訪問看護、訪問診療など含め)-行政(社会福祉協議会含め)の連携が大切だと思います。

 認知症になったとしても、また、障がいを持たれていたとしても、具体的にいうなれば、1)顔見知りのご近所の助け合いと、2)食事準備が難しい場合の配食サービスと、3)月に一度のそのご本人の財布をしっかりと守るサポート(毎月の入金チェック、家賃など支払い)に入っていれば、最後の最後まで暮らし続けることが可能であると思います。
 
 そのサポート3)は、ささやかなサポートであるけど、誰もができるようになるには責任重大な大事なサポートです。
 どうしても、個人の財布とかかわる点で、しっかりとしたサポートでなくてはなりません。この点では、公的なもの(行政)、準公的なもの(社会福祉協議会及びNPOの連携)であらざるを得ないかもしれません。
 社会貢献型のボランティアの力がもっともっとこの領域に入り、広がることを期待いたしております。

 民法は、後見、補佐、補助制度を持っていますが、それら制度を利用することも視野に入れながら、地域で支える仕組みが、広がればと思っています。

*ここでは、述べていませんが、別途、4)災害時には、どのように助け合うか、ひとりひとりの個別避難計画を構築することはやらねばなりません。
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宗教活動としての小中学生の農作業、その「信教の自由」と「児童労働」の権利衝突。憲法学上の論点を考える

2012-08-18 23:00:00 | シチズンシップ教育
 憲法学1に前期期末試験の論述問題。

 村上春樹氏が、『1Q84』でも、題材として取り上げていたことのひとつだったような。

 現実問題十分ありうる題材だと思います。

 試験本番では、うまく書けず、反省しているところ。
 まずは、問題を掲載します。

****問題***

 X会は、「農作業による人格の形成発展」を理念とする宗教団体である。X会は農場を経営し、そこでは、宗教行為の一環として、信者による農作業が行われていた。X会の農場では、子どもを含む集団生活が行われていて、同会の15歳未満の児童・生徒も、早朝から農作業を行った後で、所属する小中学校に登校していた。A県B市にあるX会経営のC農場では、信者の子ども(なお、彼らもX会に入信している)20人(以下「本件児童生徒」という。)が、小学校・中学校への登校の前と下校後に作業をしていた。X会の児童労働が、メデイアで取り上げられ社会問題となっていたことから、所轄のB労働基準監督署は、C農場に対する立ち入り調査を実施し、児童労働の実体を把握した。調査によると、C農場では、本件児童生徒に対して、早朝から登校まで間に農作業をさせていること、放課後クラブ活動や交友をさせないで、帰宅後は日没まで農作業をさせていること、学休日は一日中農作業をさせていることが確認できる。

 以下は、立ち入り調査の際行われた、C農場の責任者であるYとB労働基準監督署の監督官Zのやりとりである。

Z「児童労働は、労働基準監督署の許可を得ない限り、労働基準法によってきんしされているので、速やかに中止してください。」

Y「X会の理念は、人間社会のあり方を探求しそれを実践することによって、『すべての人が幸福である社会』を実現しようとするものです。経済基盤を農業に置き、有機農法を行って自然との共生を図りつつ、基本的には自給自足を行い、どうしても必要な物資は農作物を販売して得た資金で購入します。個人財産という概念はなく、構成員ならいつでも誰でも必要なときに必要なだけ手にして良いという、ユートピアの建設をめざしています。ユートピア建設のためには、農作業が特別重要な活動になっています。」

Z「理念はともかく、許可なく児童労働がなされていることは違法です。」

Y「児童生徒といえども、憲法で保障された信教の自由があり、かれらも、喜んで農作業に従事しているのですよ。強制労働でも、苦役でもありません。自発労働です。これを禁止することは、むしろ人権侵害ではないのですか。学校にも登校しているし、学業に何ら影響が有りません。それは親も同意しています。また、クラブ活動するか、しないかは、本人の自由なはずです。」

Z「児童の労働の理念や意義を論じる必要がありません。国民の法的義務として、児童労働は禁止されているのです。」

 結局、Yが労働基準監督署の中止要請に従わないことから、Yは、労働基準法56条に違反するとして、起訴された(労働基準法118条1項)。なお、YはB労働基準監督署長から、労働基準法56条2項における許可を得るために、本件児童生徒が通学する小中学校長から、「その者の修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書」(年少者労働基準規則1条)を得ようとした。しかし、当該学校長は、上述の証明書を発行することを拒否した。

問1 あなたは、本件Yに係る刑事裁判において、Yの弁護人であるとすれば、どのような憲法上の主張を行いますか。

問2 検察官の反論を想定しつつ、本件刑事裁判に係る憲法上の争点について、あなた自身の見解を述べなさい。


 以上
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「公安を乱すおそれ」の条例文言で、市民会館での政治集会開催使用許可申請を取消処分することが許されるか

2012-08-17 10:29:20 | シチズンシップ教育
 憲法学2 前期期末試験問題です。

*****設問****

 A教団は仏教系の新興宗教であったが、教団内部で仏典の解釈を巡る教義上の紛争を契機として、200×年に約3分の1の信徒が分派して、B教団を結成した。B教団は、その後、A教団に対する宗教的な論争を挑み、機関誌及び教団HP等で激しいA教団批判を展開してきた。さらに、A教団の指導者Pに対する人格攻撃をも開始した。これに憤慨したA教団の信徒は、B教団を「悪の巣窟」であると論難し、全国のB教団の支部に押し掛けて、論争を挑み、日本中で紛争を展開していた。この争いは、暴力行為に及ぶことはなかったが、双方の多数を巻き込む、激しい闘争が発生し、社会問題になっていた。

201×年4月に、A教団は信徒を中心に、同教団の政治部門として、日本仏教党を結成した。日本仏教党は、Pの高弟Qを党首として、次期総選挙で国政進出を企図していた。P党のマニフェストは、仏教の理想を掲げると同時に、現世利益の実現、特に信徒に中小企業主が多いことから、中小企業の発展を謳っていた。同年8月、Qは、同党の政策を訴えるために、全国遊説を企画した。その最初の場所である千葉県M市の市民会館に、政治集会を目的とした使用許可を申請し、同年9月×日の使用許可(以下「本件使用許可」という。)を得た。この政治活動に対して、B教団は、「A教団は、仏教の教えを曲解する邪宗門である。P及びQは、破戒僧であり、政治を担当する能力はない。」として、日本仏教党の全国遊説に合わせて、反A教団活動及び反日本仏教党の活動を行うことを、同教団の機関誌及びHPで明言していた。

 M市は、上記の動向に係るメディアの報道に接し、日本仏教党(以下「党」と表示する。)と次のような協議を行い、市民会館使用の取り下げを求めた。なお、M市市民会館は、住宅街にあり、駅から同市民会館までは、地元商店街を通る一本道を利用する者が多いが、他にも、数本の同市民会館に通じる道路は存在した。また、メインホール前には、広いスペースがあり、団体専用バスから降りた数百人の利用者の点呼などを行うことが可能であった。


M市「9月×日の集会ですが、B教団の信徒が市民会館周辺に集結し、混乱が生じる可能性がありますので、本件使用許可申請を取り下げていただけませんか。」

党「ちょっと待ってください。この集会は、政治集会であり、我が党にとって極めて重要なものです。納得できません。」

M市「条例の不許可条件にありますように、(1)善良な風俗を害し、又は公安を乱すおそれがあると認めるとき、(2)会館の管理上支障があると認めるとき、(3)その他会館の運営上不適当と認めるときは、使用を許可することができませんし、使用を許可した後でも、同様の事情が発生した場合は、使用許可を取り消すことができるのです。」

党「A教団とB教団との間に論争等が発生しているのは事実ですが、この集会は、日本仏教党の政治集会であり、我々の党とA教団は別の団体です。A教団を信仰していなくても、我が党を支持している人もたくさんいるのです。仮に、争いが当日発生したとしても、それはB教団が勝手に仕掛けたのであって、彼らの認識の誤りですよ。」

M市「我々は、集会の内容を判断して使用の是非を判断しているのではありません。集会を規制すべき理由があると認識しているのです。ご理解願えませんでしょうか。」

党「そうではないでしょう。本件集会の使用を規制する理由に該当するものが存在しないはずです。だいたい、急に使用を取り消されても、代替施設を見つけることが困難なのですよ。

(協議は平行線に終わる。)

 上記の通り、M市は、使用許可の申請の取り下げを要請したが、日本仏教党が従わないことから、M市は、M市民会館条例12条(3)に基づいて、本件使用許可を取り消した(この取消し処分を以下「本件取消し処分」という)。


問1 日本仏教党は、本件取消し処分に対する取消訴訟を提起した。あなたが、日本仏教党の訴訟代理人の弁護士であるとすれば、当該訴訟において、どのような憲法上の主張を行うかを述べなさい。

問2 M市側の反論を想定しつつ、本件取消し訴訟に係る憲法上の争点について、自己の見解を述べなさい。



*****************
 以下、正誤は別にして、自分の回答です。論理が至らぬ点多々あり、今後、改めて行きたいと思っているところです。
 
問1

1)党主張1 「公安を乱すおそれがあるとき」という条文の文言が過度に広汎であるがゆえに、無効

2)党主張2 政治的言論を封じる条例は、違憲であるがゆえに、その条例をもとにした取消は、無効

3)党主張3 条例は違憲でないとしても、その条例を、本件に適用することは、違憲(違法)であり、無効




問2

M市側の反論

1)M市反論1 党主張1に対し、条文の文言は、過度に広汎ではない。

 公安を乱すという状態は、一般のひとなら誰でも、平穏な生活が害された状態であることを想像することができる。
 党主張1は、あてはまらない。


2)M市反論2 党主張2に対し、政治的言論と社会の安全の保護を比較衡量すると、社会の安全の保護が優位に立ち、政治的言論を制限することができる。(利益衡量)

 集会の自由は、重要な人権であるが、社会的利益に資するという側面が強いことから、社会に不利益を与える場合は、必要かつ合理的な範囲で一定の制限を受けざるを得ない。
 例えば、交通の秩序の維持、周辺住民の平穏と安全の維持に支障が来す場合は、集会の自由は制限される。

 基本的人権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を考量して決せられるべきものである。

 本件条例による本件会館の使用の規制は、このような較量によって必要かつ合理的なものとして是認される限りは、集会の自由を不当に侵害するものではないということができる。


3)M市反論3 党主張3に対し、今回は、政治的言論も、危険な事態が生じる蓋然性がある場合にあたり、適用することができる。(限定解釈)

 本件条例は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、同号は、広義の表現をとっているとはいえ、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものとして限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解することが相当である。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではないというべきである。

 このたびの集会では、B教団信徒が、集会開催を妨害する可能性があり、M市市民会館内や周辺で、A教団信徒とB教団信徒の衝突が起こる可能性が大いに考えられ、集会の開催を制限することはやむを得ない。
 


それに対する自分の考え



1)自分の考え1 
 M市反論1に対し、M市側は、過度に広汎にならないというが、M市側の恣意的運用ができる可能性が大いに残る。どのような場合が、公安を乱す場合に当たるのか、具体的に条文に列挙すべきであり、それを持たない条文は、過度に広汎であると言わざるを得ない。
 過度に広汎な条文ゆえ、その条文は、無効であり、その適用もまた、許されないと考える。
 

2)自分の考え2 
 M市反論2に対し、政治的言論と社会の安全の保護との比較衡量がなされる考え方であるが、政治的言論は、どのような人権よりももっとも優位に考えるべきものである。
 
 集会の自由が、社会的な利益(自己統治と思想の自由市場の側面)は、基本的人権の核心部分とも言え、どのような人権からも守られてしかるべきである。


3)自分の考え3 M市反論3に対し、本件の場合を限定的に解釈したとしても、街の構造、広場の大きさから考え、警備体制を十分に整えれば、未然に衝突は抑えることが可能であると考えられる。

 よって、本件に条例を適用することは、違憲(違法)であると考える。

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東日本大震災二重ローン問題を解決する「被災ローン減免制度」たいへんわかりやすい無料動画解説

2012-08-16 09:55:22 | 防災・減災

 東日本大震災での二重ローン問題を解決する

「被災ローン減免制度」こと「個人版私的整理ガイドライン」がたいへんわかりやすく解説されています。

 youtube動画 約12分(無料)
 http://www.youtube.com/watch?v=gRGSIKMboFc&feature=youtu.be



 岩手県宮古市の弁護士小口幸人が説明されています。
 内容につきましては,複数の登録専門家に内容を確認した上で,実際の制度と齟齬がない旨の確認を取られているとのこと。

 ぜひ、ご利用ください。

 小口弁護士、作成ありがとうございます。感謝申し上げます。


 「法はひとを守るために存在する」、ひとつの好例だと思います。

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憲法学5 人権と公共の福祉による制限(一元的内在的制約説)、比較衡量論・二重の基準論の考え方

2012-08-15 17:59:00 | シチズンシップ教育
 憲法学5として続けます。

 芦部『憲法』第6章 一 人権と公共の福祉 に関連しています。


*********************
Q君
 人権が制約される局面として、どんな場合がありますか。


A先生
 次の3つの場合に想定されます。
1)権利行使が他者に害を与える場合。
2)権利行使が他者の正当な権利ないしは利益と衝突する場合。
3)権利行使が社会全体の利益にとってマイナスになる場合。

 それぞれの場合を具体例を挙げてみます。

1)権利行使が他者に害を与える場合。
 政治団体の街宣車がフルボリュームで、音楽を流すことは、彼らの表現の自由の行使ではあるが、市街地の平穏を乱し、市民に不快感を与えていることから、他者に害を与えている。人権は、まず、他者に迷惑をかけてはならない、という制約がある。

2)権利行使が他者の正当な権利ないしは利益と衝突する場合。
 マスコミが、有名人のプライバシーや名誉を傷つける報道を行う場合は、マスコミの表現の自由(報道の自由)と有名人のプライバシーが衝突する。表現の自由もプライバシーもともに、極めて重要な人権である。

3)権利行使が社会全体の利益にとってマイナスになる場合。
 空港や高速道路を建設する際には、その用地を買収しなければならないところ、地権者が用地買収に協力してくれない場合は、建設が遅れ、社会全体に大きな不利益を与える場合がある。


Q君
 憲法で、公共の福祉の制限がついている条文とは。


A先生
12条・13条・22条・29条

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十九条  財産権は、これを侵してはならない。
○2  財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
○3  私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。


Q君
 一元的外在的制約説とは何ですか。

A先生
 人権に内在する制約ではなく、公共の福祉という、「社会全体の利益や要請」を理由にして人権の制約を正当化する説です。

 いわば、人権を制約する側の公権力が、国民に有無を言わせずに、公共の福祉を人権制約の「ジョーカー(切り札)」として用いることを可能にする説であります。
 切り札としての人権の逆であると考えるとわかりやすいです。
 この考え方をとると、容易に人権制約が正当化される恐れがあります。

Q君
 一元的外在的制約説をとった場合、「ひいては、明治憲法における「法律の留保」のついた人権保障と同じことになってしまわないか」とはどういう意味ですか。

A先生
 法律の留保は、法律に根拠がある限り人権をかなりの程度、制約することができますが、この一元的外在的制約説でも、公共の福祉という言葉を根拠にすれば、人権を制約することができることを意味します。



Q君
 内在・外在二元的制約説とは何ですか。


A先生
 以下、三つの考え方です。
1)12・13条は訓示的規定で裁判規範にならない。
2)22・29条と社会権は公共の福祉による制限(外在的制約)を受ける。
3)上記以外の人権は、内在的制約のみを受ける。



Q君
 一元的内在的制約説とは何ですか。

A先生
 以下の考え方です。
 1)公共の福祉とは、人権相互の矛盾・衝突を調整するための実質的公平の原理である。
   注 社会権でさえも、それを厚く保障すると他者の経済的自由と衝突する。
     税率のアップは、財産権の行使を制約するからである。
 2)公共の福祉は、すべての人権に内在する。
 3)自由権を各人に公平に保障するために人権制約を根拠づけるときは、必要最小限の規制を認める。
 4)社会権を保障するために、自由権を規制するときは、必要な限度の規制を認める。


Q君
 比較衡量論と公共の福祉はどういう関係にあるのですか。

A先生

 比較衡量論は、人権相互の矛盾衝突の調節という公共の福祉原理を具体化し、人権の限界を明確にするために存在します。(芦部憲法�P208)


Q君
 比較衡量論における、A「それ(ある自由)を制限されることによって得られる利益」とB「それを制限しない場合に維持される利益」を、判例ではどのように認定していますか。


A先生
 博多駅事件(判例集�-4-33)を具体的に考えてみます。

 Aの「制限されることによって得られる利益」は、公正な刑事裁判の実現です。

 一方、Bのそれを制限しない場合に維持される利益は、「報道の自由」であり、ひいては、「将来の取材の自由が妨げられるおそれ」であります。

 なお、判例は、報道の自由そのもの妨げられるとは述べていません。


Q君
 比較衡量論の問題点とは、


A先生
 比較の基準が明確ではなく、また、何を利益として拾い上げるかが、裁判所の裁量にゆだねられていることです。

 たとえば、上述の博多駅事件で、Bの利益を判例は、将来の取材活動が妨げられるおそれとしているが、報道の自由そのものとか、取材活動ができなくなるという不利益というように重くとることもできるはずであるが、判決では、狭くとっています。

 さらに、国の利益が重く認定される可能性があることです。
 そうすると、結局は、法律の留保論=一元的外在制約説と、実質的に変わらない論理構成になってしまいます。



Q君
 二重の基準論とは?


A先生
 「裁判所が議会の制定した法律の合憲性を審査する場合には、表現の自由を制約する立法と経済的自由を制約する立法では、異なる態度で挑むべきである」という理論です。


Q君
 二重の基準論を用いた場合、表現の自由以外の一般的な自由は、合憲性の推定を受けると言われています。
 「合憲性推定」とは?


A先生
 合憲性の推定とは、立法府の下した判断に合理性があるということから来ています。
 これは、選挙を経て、民意が反映され、国会という公開された場所で十分な討論を経て成立した立法には、おそらく、関与する行政の立法作業も含めて、ある程度の合理性が存在するであろうと、推定できるという姿勢です。
 逆に言えば、裁判所は高度な経済問題などには、審査能力や判断能力が十分でないことが指摘できます。


Q君
 では、表現の自由には、合憲性の推定が働かず、裁判所は違憲が疑われる立法については、厳しく審査すべきであるとされています。
 なぜですか。

A先生
 表現の自由は、傷つきやすく、かつ、いったん傷つくと自己回復が困難であることからきています。

 傷ついた表現の自由は、萎縮し収縮する方向に進んでいきます。

 治安維持法ができる前は、治安維持法についての批判をすることが可能であるが、いったん同法制定されると、表現の自由を収縮・萎縮させる同法に対する批判をすることが禁じられることから、表現活動がさらに、収縮する方向に進んでいきました。


Q君
 二重の基準論の考え方に関連して、裁判所の役割を考え直すと。


A先生

 裁判所は、以下の三点について基本的な役割を担うものであると考えられます。

 �選挙権・政治的表現の自由のような民主主義の基盤を維持するために必要な自由を保障する。
 �マイノリティーの権利を保障する。マイノリティーは、票も政治資金もなく、政治過程において発言力がないから。
 �信教の自由・思想良心の自由のような、人格的生存に係る権利を保障する。


以上


*****小坂メモ*****
 

�テキストP101~P102の�の記述の意味を説明しなさい。
 表現の自由中では、政治的表現の自由・集会結社の自由が最も厳しい基準(厳格審査)で審査すべきものであり、表現内容中立規制がこれに続く(中間審査)。しかし、わいせつ表現・プライバシーを侵害する表現・差別的言論・商業的言論(CMや広告など)などに対する規制立法は、厳格な審査はなされない。一方、経済的自由のうち、消極的規制については、表現の自由の表現内容中立規制と同程度の審査基準が適用する。テキストの意味は、この部分は、表現の自由と経済的自由の審査基準は重なっていることを指す。

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「終戦の詔勅」、いわゆる“玉音放送”を読む。67年目の敗戦の日に。

2012-08-15 15:38:51 | 戦争と平和

 ブログ Chikirinの日記 2008-08-15 終戦の詔勅(ちきりん語訳とともに)というところで、『終戦の詔勅』(玉音放送)が掲載されていました。

 玉音放送は知っていても、その内容をすべて知る人はなかなかいらっしゃらないのではないでしょうか。

 とても貴重な内容だと思います。
 玉音放送を再生すると熱いものが込み上げてきます。

 ちきりんさんに感謝するとともに、こちらでも掲載します。
 ちきりんさんの訳を青字で入れています。


 東日本大震災を経験して、改めて、私達日本人が、賢明になったことのひとつ。政府や政治家、人任せであっては、決してならないということ。
 平和を築くことにもあてはまると思います。
 
 
 戦争を絶対に繰り返さない。
 67年目の敗戦の日に、誓いをあらたにするとともに、
 戦争で亡くなられた方々、犠牲になられた方々すべての方に心より哀悼の意を捧げます。
 

-------------------------
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20080815


朕深く世界の大勢と帝國の現状とに鑑み

非常の措置を以て時局を収拾せむと欲し

茲(ここ)に忠良なる爾(なんぢ)臣民に告

世界の情勢と日本の現状をよくよく検討した結果、

ありえないと思われる方法をあえてとることにより、この状況を収拾したい。

常に私に忠実であるあなたがた日本臣民の皆さんに、今から私の決断を伝えよう。




朕は帝國政府をして

米英支蘇四國に対し

其の共同宣言を受諾する旨通告せしめたり

私は日本政府担当者に

米、英、中国、ソビエト連邦の4カ国に対して、

日本が(ポツダム)共同宣言を受け入れると、伝えるよう指示した。





抑々帝國臣民の康寧を図り

万邦共榮の楽を偕にするは

皇祖皇宗の遺範にして

朕の拳々(けんけん)措(お)かさる所

そもそも私たち日本国民が穏やかで安心な暮らしができ、

世界全体と繁栄の喜びを共有することは、

歴代の天皇が代々受け継いで守ってきた教えであり、

私自身もその教えを非常に大事なことと考えてきた。




曩(さき)に米英二國に宣戰せる所以も

亦実に帝國の自存と東亞の安定とを庶幾するに出て

他國の主權を排し領土を侵すか如きは固(もと)より朕か志にあらす

最初に米英二カ国に宣戦を布告した理由も

日本国の自立とアジアの安定を願う気持ちからであり、

他の国の主権を侵したり、その領土を侵したりすることが、私の目指すところであったわけではない。




然るに交戰已に四歳を閲し

朕か陸海將兵の勇戰

朕か百僚有司の励精

朕か一億衆庶の奉公

各々最善を尽せるに拘らす

戰局必すしも好轉せす

世界の大勢亦我に利あらす

けれども戦争は既に4年も続いており、

我らが陸海軍人たちの勇敢な戦いぶりや

行政府の役人らの一心不乱の働きぶり、

そして一億の庶民の奉公

それぞれが最善を尽くしたにも関わらず

戦況は必ずしも好転せず、

世界情勢を見るに、日本に有利とはとてもいえない状況である。




加之敵は新に残虐なる爆彈を使用して

頻(しきり)に無辜を殺傷し惨害の及ふ所眞に測るへからさるに至る

而(しか)も尚交戰を継続せむか

終に我か民族の滅亡を招來するのみならす

延て人類の文明をも破却すへし

その上、敵は、より残虐な新型爆弾を使用して多くの罪のない者達を殺傷し、その被害の及ぶ範囲は、はかることもできないほどに広がっている。

もしもこれ以上戦争を続ければ、最後には我が日本民族の滅亡にもつながりかねない状況であり、 ひいては人類の文明すべてを破壊してしまいかねない。



斯の如くは

朕何を以てか億兆の赤子を保し

皇祖皇宗の神霊に謝せむや

是れ朕か帝國政府をして共同宣言に応せしむるに至れる所以なり

そのようなことになれば、

私はどのようにして一億の民を守り、

歴代天皇の霊に顔向けすることができようか。

これが私が政府担当者に対し、共同宣言に応じよと指示した理由である。




朕は帝國と共に終始東亞の解放に協力せる諸盟邦に対し

遺憾の意を表せさるを得す

帝國臣民にして戰陣に死し職域に殉し非命に斃れたる者及其の遺族に想を致せは五内爲に裂く

且戰傷を負ひ災禍を蒙り家業を失ひたる者の厚生に至りては

朕の深く軫念(しんねん)する所なり

私は、アジアを(西欧列強から)開放するために日本に協力してくれた友好国にたいして大変申し訳なく思う。

また日本国民であって、戦地で命を失った者、 職場で命を落とし、悔しくも天命を全うできなかった者、そしてその遺族のことを考えると、 心も体も引き裂かれんばかりの思いがする。

戦争で傷つき、戦災被害にあって家や仕事を失った者たちの暮らしについても、 非常に心配に思っている。



惟ふに今後帝國の受くへき苦難は固より尋常にあらす

爾臣民の衷情も朕善く之を知る

然れとも朕は時運の趨く所

堪へ難きを堪へ忍ひ難きを忍ひ

以て万世の爲に太平を開かむと欲す

この後、日本が受けるであろう苦難は言うまでもなく尋常なものではないであろう。

皆さん臣民の悔しい思いも、私はよくよくそれをわかっている。

けれども私は時代の運命の導きにそって、

耐え難きを耐え

忍び難きを忍び

これからもずっと続いていく未来のために、平和への扉を開きたい。



朕は茲に國體を護持し得て

忠良なる爾臣民の赤誠に信倚し

常に爾臣民と共に在り

私はこうやって日本の国の形を守ることができたのだから

忠誠心が高く善良な臣民の真心を信頼し、

常にあなたがた臣民とともにある。




若し夫れ情の激する所濫に事端を滋(しげ)くし

或は同胞排擠(はいせい)互に時局を亂り

爲に大道を誤り信義を世界に失ふか如きは

朕最も之を戒む

感情の激するがままに事件を起こしたり、

もしくは仲間同士が争って世の中を乱し、

そのために道を誤って世界からの信頼を失うようなことは、

もっとも戒めたいことである。




宜しく挙國一家子孫相傳へ確く神州の不滅を信し

任重くして道遠きを念(おも)ひ総力を將來の建設に傾け

道義を篤くし志操を鞏(かた)くし

誓て國體の精華を発揚し世界の進運に後れさらむことを期すへし

爾臣民其れ克く朕か意を體せよ

なんとか国全体が一つとなり、子孫にまでその思いを伝え、神国日本の不滅を信じ

責任はとても重く、行く道は非常に遠いことを覚悟して、将来の建設に向けて総力を結集し

道義を守り志と規律を強くもって、 日本国の力を最大に発揮することを誓い、

世界の先進国に遅れをとらずに進むのだという決意をもとうではないか。




私の臣民達よ、是非ともこの私の意思をよくよく理解してもらいたい。




御名御璽

昭和二十年八月十四日

内閣総理大臣 男爵 鈴木貫太郎
海軍大臣 米内光政
司法大臣 松阪広政
陸軍大臣 阿南惟幾
軍需大臣 豊田貞次郎
厚生大臣 岡田忠彦
国務大臣 桜井兵五郎
国務大臣 左近司政三
国務大臣 下村宏
大蔵大臣 広瀬豊作
文部大臣 太田耕造
農商大臣 石黒忠篤
内務大臣 安倍源基
外務大臣兼大東亜大臣 東郷茂徳
国務大臣 安井藤治
運輸大臣 小日山直登
-------------------------


また、昭和天皇の玉音放送音声はこちらから聞くことができます。

NHKのサイト→ 
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/sp/movie.cgi?das_id=D0001410387_00000


バックアップ (http://www2.tokai.or.jp/isya/souko/gyokuon.html


************ご参考 開戦の詔勅******
http://www.geocities.jp/taizoota/Essay/gyokuon/kaisenn.htm

太平洋戦争 開戦の詔勅  (米英両国ニ対スル宣戦ノ詔書)

<原文>

天佑ヲ保有シ萬世一系ノ皇祚ヲ踐メル大日本帝國天皇ハ昭ニ忠誠勇武ナル汝有衆ニ示ス

朕茲ニ米國及英國ニ対シテ戰ヲ宣ス朕カ陸海將兵ハ全力ヲ奮テ交戰ニ從事シ朕カ百僚有司ハ

勵職務ヲ奉行シ朕カ衆庶ハ各々其ノ本分ヲ盡シ億兆一心國家ノ總力ヲ擧ケテ征戰ノ目的ヲ

達成スルニ遺算ナカラムコトヲ期セヨ抑々東亞ノ安定ヲ確保シ以テ世界ノ平和ニ寄與スルハ丕顕ナル

皇祖考丕承ナル皇考ノ作述セル遠猷ニシテ朕カ拳々措カサル所而シテ列國トノ交誼ヲ篤クシ萬邦共榮ノ

樂ヲ偕ニスルハ之亦帝國カ常ニ國交ノ要義ト爲ス所ナリ今ヤ不幸ニシテ米英両國ト釁端ヲ開クニ至ル

洵ニ已ムヲ得サルモノアリ豈朕カ志ナラムヤ中華民國政府曩ニ帝國ノ眞意ヲ解セス濫ニ事ヲ構ヘテ

東亞ノ平和ヲ攪亂シ遂ニ帝國ヲシテ干戈ヲ執ルニ至ラシメ茲ニ四年有餘ヲ經タリ幸ニ國民政府更新スルアリ

帝國ハ之ト善隣ノ誼ヲ結ヒ相提携スルニ至レルモ重慶ニ殘存スル政權ハ米英ノ庇蔭ヲ恃ミテ兄弟尚未タ牆ニ

相鬩クヲ悛メス米英両國ハ殘存政權ヲ支援シテ東亞ノ禍亂ヲ助長シ平和ノ美名ニ匿レテ東洋制覇ノ非望ヲ

逞ウセムトス剰ヘ與國ヲ誘ヒ帝國ノ周邊ニ於テ武備ヲ強シテ我ニ挑戰シ更ニ帝國ノ平和的通商ニ有ラユル

妨害ヲ與ヘ遂ニ經濟斷交ヲ敢テシ帝國ノ生存ニ重大ナル脅威ヲ加フ朕ハ政府ヲシテ事態ヲ平和ノ裡ニ囘復

セシメムトシ隠忍久シキニ彌リタルモ彼ハ毫モ交讓ノナク徒ニ時局ノ解決ヲ遷延セシメテ此ノ間却ツテ

々經濟上軍事上ノ脅威ヲ大シ以テ我ヲ屈從セシメムトス斯ノ如クニシテ推移セムカ東亞安定ニ關スル

帝國積年ノ努力ハ悉ク水泡ニ帰シ帝國ノ存立亦正ニ危殆ニ瀕セリ事既ニ此ニ至ル帝國ハ今ヤ自存自衞ノ爲

蹶然起ツテ一切ノ障礙ヲ破碎スルノ外ナキナリ皇祖皇宗ノ靈上ニ在リ朕ハ汝有衆ノ忠誠勇武ニ信倚シ祖宗ノ

遺業ヲ恢弘シ速ニ禍根ヲ芟除シテ東亞永遠ノ平和ヲ確立シ以テ帝國ノ光榮ヲ保全セムコトヲ期ス

  御 名 御 璽

   平成十六年十二月八日

 

<現代語訳文>

神々のご加護を保有し、万世一系の皇位を継ぐ大日本帝国天皇は、忠実で勇敢な汝ら臣民にはっきりと示す。

私はここに、米国及び英国に対して宣戦を布告する。私の陸海軍将兵は、全力を奮って交戦に従事し、

私のすべての政府関係者はつとめに励んで職務に身をささげ、私の国民はおのおのその本分をつくし、

一億の心をひとつにして国家の総力を挙げこの戦争の目的を達成するために手ちがいのないようにせよ。

そもそも、東アジアの安定を確保して、世界の平和に寄与する事は、大いなる明治天皇と、

その偉大さを受け継がれた大正天皇が構想されたことで、遠大なはかりごととして、

私が常に心がけている事である。そして、各国との交流を篤くし、万国の共栄の喜びをともにすることは、

帝国の外交の要としているところである。今や、不幸にして、米英両国と争いを開始するにいたった。

まことにやむをえない事態となった。このような事態は、私の本意ではない。 中華民国政府は、

以前より我が帝国の真意を理解せず、みだりに闘争を起こし、東アジアの平和を乱し、ついに帝国に

武器をとらせる事態にいたらしめ、もう四年以上経過している。

さいわいに国民政府は南京政府に新たに変わった。帝国はこの政府と、善隣の誼(よしみ)を結び、

ともに提携するようになったが、重慶に残存する蒋介石の政権は、米英の庇護を当てにし、兄弟である

南京政府と、いまだに相互のせめぎあう姿勢を改めない。米英両国は、残存する蒋介石政権を支援し、

東アジアの混乱を助長し、平和の美名にかくれて、東洋を征服する非道な野望をたくましくしている。

あまつさえ、くみする国々を誘い、帝国の周辺において、軍備を増強し、わが国に挑戦し、更に帝国の

平和的通商にあらゆる妨害を与へ、ついには意図的に経済断行をして、帝国の生存に重大なる脅威を

加えている。

私は政府に事態を平和の裡(うち)に解決させようとさせようとし、長い間、忍耐してきたが、

米英は、少しも互いに譲り合う精神がなく、むやみに事態の解決を遅らせようとし、その間にもますます、

経済上・軍事上の脅威を増大し続け、それによって我が国を屈服させようとしている。

このような事態がこのまま続けば、東アジアの安定に関して我が帝国がはらってきた積年の努力は、

ことごとく水の泡となり、帝国の存立も、まさに危機に瀕することになる。ことここに至っては、

我が帝国は今や、自存と自衛の為に、決然と立上がり、一切の障害を破砕する以外にない。

 皇祖皇宗の神霊をいただき、私は、汝ら国民の忠誠と武勇を信頼し、祖先の遺業を押し広め、

すみやかに禍根をとり除き、東アジアに永遠の平和を確立し、それによって帝国の光栄の保全を期すものである。

 

<読み下し文>

 天佑(てんゆう)を保有(ほゆう)し、万世一系(ばんせいいっけい)の皇祚(こうそ)を践(ふ)める大日本帝国天皇は、昭(あきらか)に

忠誠(ちゅうせい)勇武(ぶゆう)なる汝(なんじ)、有衆(ゆうしゅう)に示(しめ)す。

 朕(ちん)、茲(ここ)に米国及(およ)び英国に対して戦(たたかい)を宣(せん)す。朕(ちん)が陸海将兵(りくかいしょうへい)は、全力を奮(ふる)って交戦に従事し、朕(ちん)が百僚有司(ひゃくりょうゆうし)は、励精(れいせい)職務を奉行(ほうこう)し、朕(ちん)が衆庶(しゅうしょ)は、各々(おのおの)其(そ)の本分を尽(つく)し、億兆(おくちょう)一心(いっしん)にして国家の総力を挙げて、征戦(せいせん)の目的を達成するに遺算(いさん)なからんことを期(き)せよ。

 抑々(そもそも)、東亜(とうあ)の安定を確保(かくほ)し、以って世界の平和に寄与(きよ)するは、丕顕(ひけん)なる皇祖考(こうそこう)、丕承(ひしょう)なる皇考(こうこう)の作述(さくじゅつ)せる遠猷(えんゆう)にして、朕(ちん)が拳々(きょきょ)措(お)かざる所(ところ)。

 而(しか)して列国との交誼(こうぎ)を篤(あつ)くし、万邦共栄(ばんぽうきょうえい)の楽(たのしみ)を偕(とも)にするは、之亦(これまた)、帝国が、常に国交の要義(ようぎ)と為(な)す所(ところ)なり。今や、不幸にして米英両国と釁端(きんたん)を開くに至(いた)る。洵(まこと)に已(や)むを得(え)ざるものあり。豈(あに)、朕(ちん)が志(こころざし)ならんや。

 中華民国政府、曩(さき)に帝国の真意を解(かい)せず、濫(みだり)に事を構えて東亜(とうあ)の平和を攪乱(こうらん)し、遂(つい)に帝国をして干戈(かんか)を執(と)るに至(いた)らしめ、茲(ここ)に四年有余を経たり。幸(さいわい)に、国民政府、更新するあり。帝国は之(これ)と善隣(ぜんりん)の誼(よしみ)を結び、相(あい)提携(ていけい)するに至(いた)れるも、重慶(じゅうけい)に残存(ざんぞん)する政権は、米英の庇蔭(ひいん)を恃(たの)みて、兄弟(けいてい)尚(なお)未(いま)だ牆(かき)に相鬩(あいせめ)ぐを悛(あらた)めず。

 米英両国は、残存政権を支援して、東亜(とうあ)の禍乱(からん)を助長(じょちょう)し、平和の美名(びめい)に匿(かく)れて、東洋制覇(とうようせいは)の非望(ひぼう)を逞(たくまし)うせんとす。剰(あまつさ)え与国(よこく)を誘(さそ)い、帝国の周辺に於(おい)て、武備(ぶび)を増強して我に挑戦し、更に帝国の平和的通商に有(あ)らゆる妨害(ぼうがい)を与へ、遂に経済断交を敢(あえ)てし、帝国の生存(せいぞん)に重大なる脅威(きょうい)を加う。

 朕(ちん)は、政府をして事態(じたい)を平和の裡(うち)に回復せしめんとし、隠忍(いんにん)久しきに弥(わた)りたるも、彼は毫(ごう)も交譲(こうじょう)の精神なく、徒(いたづら)に時局の解決を遷延(せんえん)せしめて、此(こ)の間、却(かえ)って益々(ますます)経済上、軍事上の脅威(きょうい)を増大し、以って我を屈従(くつじゅう)せしめんとす。

 斯(かく)の如くにして、推移(すいい)せんか。東亜安定(とうああんてい)に関する帝国積年(せきねん)の努力は、悉(ことごと)く水泡(すいほう)に帰し、帝国の存立(そんりつ)、亦(またこ)正に危殆(きたい)に瀕(ひん)せり。事既(ことすで)に此(ここ)に至る帝国は、今や自存自衛(じそんぼうえい)の為、蹶然(けつぜん)起(た)って、一切の障礙(しょうがい)を破砕(はさい)するの外(ほか)なきなり。

 皇祖皇宗(こうそそうそう)の神霊(しんれい)、上(かみ)に在(あ)り、朕(ちん)は、汝(なんじ)、有衆(ゆうしゅう)の忠誠勇武(ちゅうせいぶゆう)に信倚(しんい)し、祖宗(そそう)の遺業を恢弘(かいこう)し、速(すみやか)に禍根(かこん)を芟除(せんじょ)して、東亜(とうあ)永遠の平和を確立し、以って帝国の光栄を保全(ほぜん)せんことを期(き)す。

 

天皇の署名と印

昭和十六年十二月八日

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憲法学4 人権享有主体:未成年、天皇・皇族、法人(八幡製鉄、南九州税理士会、群馬司法書士会事件)

2012-08-14 17:50:29 | シチズンシップ教育
 人権の享有主体として、外国人以外を、未成年、天皇・皇族、法人の順で見ます。


****未成年******

Q君
 憲法上、未成年を特別扱いしている規定はありますか?

A先生

15条3項は、成年のみに選挙権を与えている。
26条2項は、子女に普通教育を受ける権利を保障している。
27条3項は、児童はこれを酷使してはならない、と規定している。
26条1項では、解釈論上、子供の学習権が保障されている。


第十五条  公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
○2  すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
○3  公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。
○4  すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

第二十六条  すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
○2  すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

第二十七条  すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
○2  賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
○3  児童は、これを酷使してはならない。



Q君
 児童・未成年が、成年と比べると、人権の制約を受ける根拠は何ですか?


A先生
 以下の理由が考えられます。
1)心身ともに発達途上であり、成人に比して、判断力も未熟であること。
2)経済的・倫理的な責任を取ることが困難な場合もあること。民事・刑事の法的責任も制約されている。
3)パターナリズム(父子主義・温情主義と訳されているが、その人の利益にかなうという理由から、個人の自由に干渉すること。典型例は、オートバイのヘルメット。10万円以下の現金振込み禁止など。社会には多数存在する。年金の強制加入もその一種である。)


Q君
 未成年の人権制約の根拠に照らしたとき、合理的な理由のあるもの(未成年の飲酒禁止)もありますが、合理的な理由の存在が疑わしいものもあるのではないですか?

A先生
 合理的な理由の存在が疑わしいものもあります。
 例えば、
 男子の婚姻年齢18歳未満
 バイクの禁止・中学生の丸刈り など



******天皇・皇族********

Q君
 天皇・皇族が一般国民と比較して、人権が制約されていますが、その根拠は何ですか?

A先生
 以下、理由が考えられます。
1)天皇が世襲であること。婚姻に対する手続的制約がある。
2)天皇が象徴であること。プライバシーの権利は大幅に制約を受ける。
3)その職務に政治的中立性が求められていること。テキストのいうところの、職務の特殊性とは、2)の象徴であることと3)の政治的に中立であることを示す。


Q君
 天皇・皇族にプライバシーの権利は保障されますか。

A先生
 まったく保障されないという説もありますが、人権の普遍性に照らすと、保障されるとすべきであると考えられます。
 しかし、職務の特殊性からいうと、かなり制約があると解すべきであります。

 国の象徴である以上は、きわめて公的な存在であり、私的な領域は狭くなります。
 しかし、家庭内の問題、病歴、出産の経緯などは、慎重に取り扱われるべき事柄であります。



*******法人*******

Q君
 法人に、人権規定が適用される根拠は、何ですか?


A先生
 法人に、性質上可能な限り人権規定が適用されます。
 以下、根拠が二つ考えられます。
1)法人の活動が可能な限り自然人を通じて行われ、その効果は究極的に自然人に帰属するから。(自然人還元論)
2)法人が現代社会において一個の社会的な実体として、重要な活動を行っているから。(法人社会的実在論)


Q 法人には、なぜ人権が与えられるのですか?上記、二説の批判は?そこから、いかに考えますか?

A先生
社会的実在説への批判→民法上の権利の主体だからといって、憲法上の人権を与える理由にならない。

自然人還元説への批判→自然人に人権を与えれば十分ではないか。法人内部の少数派には人権が還元されない可能性もある。

よって、公共の福祉に基づく人権を根拠に考えます。つまり、社会にとってプラスになるから人権を与えることになるのです。
そうすると、逆に、社会に対して不利益を与える場合は、人権は外国人よりも制約しやすいことに帰結します。(長谷部 憲法)

Q君
 八幡製鉄事件最高裁判決の問題点は?


A先生
 政治献金を自由に政党に提供できるとすると、個人よりもはるかに大きな影響力を行使することになり、政治過程における個人の民意反映の機会が相対的に減少することが問題であります。
 上述の説明で行くと、社会にとって不利益を与えることになるので、政治献金提供の自由は一定程度制約すべきことになります。
 また、現在の二重の基準論からみると、裁判所は、政治過程における公正な競争を確保する役割を担うことになっているので、その意味でも、政治献金提供の自由を制約する判決を出す必要があったということができます。


Q君
 「人権の実質的公平を確保する社会国家の理念に基づいて、自然人よりも広範な積極的規制を加えることが許される」とは、どういう意味ですか?

A先生
 小売市場調整特別法や旧大店法のように、社会的弱者の保護のために、積極的な規制が行われることも可能である、ということをいいます。



Q君
 「一般国民の政治的自由を不当に制限する効果をともなったり」とは、具体的にどういうことを指すのですか?


A先生
 政治献金を多額に寄附することによって、大企業が大きな政治的影響力を行使することは、一般国民の政治的発言力を相対的に弱めることにつながる、ということを指します。
 「政治には金がかかる」という現実を直視すると、企業は献金によって見返りを求め、政治家・政党は資金提供者の意に沿う行動を取ることになるであろうことが懸念されます。



Q君
 「法人内部の構成員の政治的自由と矛盾・衝突したりする場合」とは、どういうことですか?

A先生
 たとえば、組合内部で支持政党が二つに分かれていたり、南九州税理士会事件判決に見られるように、寄付金・献金の対象や相手についての見解が分かれたりすることを指します。


Q君
 最高裁の南九州税理士会政治献金事件判決と群馬司法書士会震災支援寄付金事件判決の違いはどこにありますか?

A先生
 共通点は、ともに強制加入の団体であることです。

 違いは、税理士会は、政治団体(税理士政治連盟)に寄付したことにあります。政治献金を内部の多数決によって、会員に強制することは、会員の思想信条と衝突して、会員の思想信条の自由を侵害する可能性があります。
 また、当該政治活動には参加したくない、賛成の意思表示をしたくない、という、表現の自由の消極的側面を侵害します。
 なお、判例理論としては、八幡製鉄所事件の場合は、会社であるから政治献金をすることも許されるが、税理士会は強制加入の団体であるために、政治献金をするという権利能力が制限されると考えられます。

 司法書士会が行ったのは、震災への寄付金であり、これは政治的なものではないので、金額その他について社会的な相当性の範囲内で、寄付の権利能力が認められるとされました。


Q君
 人権の享有主体のまとめとして考えると、外国人の人権と法人の人権の保障の程度、及びそれに対する基本姿勢はどのように異なっているのですか。


A先生
 以下、まとめとして考えられます。
1)外国人については、個人の尊厳の原理から、性質が許す限りできる限り人権を保障すべきと考える。つまり人権保障を拡大する方向で考えるのが原則である。
2)法人については、自然人還元論に立つと、自然人に利益を与える限り保障すべきであり、社会的実在論に立つと、その社会的な影響力の強さを考慮して、限定的かつ、自然人に無関係なものは保障されないと考えるべきであろう。または、社会に利益を与える限度で人権を保障すべきであろう。
3)法人に対しても外国人対しても、「各主体の種類及び性質」を、人権享有の程度を考察する要因の一つとすべきである。


以上
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憲法学3 外国人の人権 参政権(国と地方)、公務就任、生活保護、出入国、政治活動・マクリーン事件

2012-08-14 16:55:39 | シチズンシップ教育

 憲法学3として、続けます。

 芦部『憲法』 「第五章 基本的人権の原理 四 人権の享有主体」に関連しています。


****人権の享有主体 3 外国人*********


Q君
 外国人は、どのように定義されますか?

A先生
 以下に大別されます。

1)一般外国人~短期滞在者など(観光その他で日本に在住している。27種のビザあり)
       難民と永住者を除く外国人のことである。
2)難民~難民条約1条の定義に当てはまる人
3)永住者(永住外国人)~一般永住者と特別永住者
特別永住者とは、在日外国人の方の中でも、終戦前から日本に居住している朝鮮半島、台湾出身の方でサンフランシスコ平和条約(1952年)の発効によって日本国籍を失った後も引き続き日本に在留している外国人の方とその子孫の方々のことをいう。特別永住者は、「出入国管理及び難民認定法(入管法)」ではなく「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」によって定義されている。
4)不法滞在者(パスポートなしで入国またはビザ切れで滞在している者)ももちろん外国人のカテゴリーの一つである。


Q君
 憲法では、外国人には人権の保障は、どのように規定されていますか?


A先生
 外国人の人権も保障されると肯定説が通説です。

 否定説は、「第3章 国民の権利及び義務」という文言にこだわってなされます。


Q君 
 外国人の人権が保障されるその根拠は何ですか?


A先生
 以下の根拠が考えられます。
1)人権の普遍性・前国家性・前憲法性からは、人である以上外国人にも当然認められることになる。
2)人権の国際化(人権思想の進展にともない、人権を国内法的に保障するだけではなく、国際法的にも保障しようという傾向が強まっていること)。
3)憲法98条が謳う国際主義。

第九十八条  この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
○2  日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。


Q君
 すべての人権が保障されるのですか。


A先生
そうではありません。保障されない人権もあります。



Q君
 ある人権が外国人に保障されるかどうかを決定する基準は何ですか。


A先生
 文言説、性質説があって、基準が決定されます。

 文言説は、憲法の記載で、「何人」と規定されているときは、外国人にも保障され、「国民」と規定されているときは、国民のみに保障されるとします。

 性質説(通説・判例)は、権利の性質にしたがって、外国人に保障されるかどうかが決定されるとします。

 判例もマクリーン事件(�-1-2)で「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」と判示しています。


Q君
 文言説の問題点は、なにですか。

A先生
 22条2項の国籍離脱の自由について、「何人」もとしている点の説明が困難になります。

 外国人が日本国憲法の下で、日本国政府や裁判所に対して、国籍離脱の自由を主張する事は意味がありません。

 23条のように、何人もとも、国民とも書いていない条文もあります。

第二十二条  何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
○2  何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

第二十三条  学問の自由は、これを保障する。




Q君
 国レベルの参政権は認められますか?


A先生
 国民主権の原理から認められません。(通説・判例)

 ヒッグス・アラン事件(判例集�-3-2)の「事実」における、主張�及び�に注目してください。
  �国民は、国籍保持者だけではなく、社会の構成員として日本の政治社会における政治決定に従わざるを得ないものを指す。
  �原告は永住許可を得ている者であり、納税義務も負担している以上、帰化している者と同様に扱わないのは差別である。

Q君
 納税義務の負担は、外国人の人権を保障することの根拠となりうりますか。

A先生
 なりうると考え方と、なりえないという考え方ができます。

 なりうる(積極説)。近代憲法は、イギリスのマグナカルタからアメリカの独立宣言においても、「納税者」の権利の政治的権利を確保するという意味があったことから、ここの沿革を重視すると、外国人であって、かつ日本に生活の根拠を置いている以上は、納税義務を果たしていることは、外国人に人権(参政権)を保障することの根拠となりうる。

 なりえない(消極説)。税金は、ある社会に生活していることで発生するコストに対して、応分の負担を支払うものであり、そのことが参政権を保障することの理由にはならない。さらに、納税負担を根拠とすると、生活保護を受けている者や貧困のために納税負担にたえられない者の参政権を否定することになり、これは、戦前の制限選挙と同じ根拠づけになってしまう。


Q君
 では、地方レベルの参政権は認められますか?
 判例は、外国人に対する地方レベルの参政権の付与について、どう判断しているのですか?

A先生
 以下の論理に立っています。

  1)15条1項は外国人に適用されない。
  2)93条2項の「住民」は日本国民である。
  3)外国人に対する地方レベルの参政権付与は憲法上禁止されていない。
    (付与しなくても違憲ではないし、付与しなければならないものでもない)
    もっぱら立法政策の問題である。

  その理由は、次の通りです。
  「住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」


Q君
 判例上、外国人が就任できない公務は存在するのですか。存在するとすればその理由は何ですか?


A先生
地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とする者である、「公権力行使等地方公務員」は、外国人が就任できない。と判例ではされています。(外国人管理職選考受験拒否事件上告審判決 判例集�-3-4)

その理由
1)公権力行使等地方公務員の職務の遂行は,住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものであることから、国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものである(憲法1条,15条1項参照)。
2)このことから、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきである。
3)また、我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。

Q君
 この判決の論理の問題点は何ですか?


A先生
 公権力行使等公務員の範囲が無限定であることです。
 外国人に能力の発揮の場を与え、幸福追求の可能性を保障するためには、公権力行使の等公務員の範囲を狭くすべきであり、実際、判例の言うところの「統治のあり方」に影響を与える業務は、警察・検察・国税・入管等の権力業務に限られるのではないかと考えられます。


Q君
 外国人は生活保護を受けられますか?


A先生
 実務上は、生活保護の認定をしています。

 適法に日本に滞在し、活動に制限を受けない永住、定住等の在留資格を有する外国人については、国際道義上、人道上の観点から、予算措置として、生活保護法を準用しています。

 すなわち、
1)出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)の在留資格を有する者(永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等)
2)日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法の特別永住者(在日韓国人、在日朝鮮人、在日台湾人)
3)入管法上の認定難民
が生活保護法の準用の対象となります。

 したがって、これら以外の者は対象とならない。
 不法滞在者は生活保護の対象となりません。これは、ある種のジレンマであります。


Q君
 外国人に入国の自由は認められない理由は何ですか。


A先生
国家が国際法上、自己の安全と福祉に危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否するのは、当該国家の主権に属し、自由に裁量することができるとされています。(国際協調主義・普遍性の例外。)


Q君
 不法入国者には、日本人と同じ刑事手続が保障されないか。

A先生
 保障されます。


Q君
 外国人に在留の権利を認めていますか。

A先生
入国の自由がない以上、在留の権利も認められないとされています。(判例)



Q君
 外国人の出国の自由を認めていますか?

A先生
 認めています。(判例)



Q君
 外国人の政治活動の自由は大きな制限を受けるとしているが、その根拠は何ですか?

A先生
 外国人の表現の自由は原則として保障されています。

 ただし、国政レベルの参政権が否定されているので、日本国民よりも大きな制約を受けるとされています。

 大きな制約としては日本の政治に直接介入する政治結社の組織、政府打倒運動は禁止されます。
 また、マクリーン事件判決は、ある種の政治活動が、在留資格更新のための消極的要因となることを認めています。

 上記には、以下の反論がなされるところです。

 反論 
 1)表現の自由の自己統治・思想の自由市場という側面からすると、政府転覆等の反政府活動以外は、外国人に自由な言論を許し、言論を活発にして、真理に到達するための道を確保すべきではないか。
 2)実際に、外国人しかできない批判もあるはずであり、デモクラシーの運営にとって、マイナスになる。  
 3)この論理からすると、地方レベルの参政権は否定されていないのであるから、地方レベルの批判はできることになるが、地方レベルの政治批判と国レベルの政治批判の境界があいまいなものもある。
 4)以上のとおり、マクリーン判決は、表現活動を萎縮させ、政治活動が実質的に全面否認になる可能性を秘めている。


Q君
 マクリーン事件(判例集�-1-2)を読んで、要旨を三点にまとめるとすると。


A先生
1)外国人には、入国の自由もない以上、在留する権利もない。
2)法務大臣の在留許可の更新は、自由裁量行為であり、その判断が事実の基礎を欠くか、事実の評価がまったく合理性を欠く場合以外は、違法とはならない。
3)外国人にも権利の性質上許される限り、人権が保障され、表現の自由も政治的意思決定に影響を与えるもの以外は認められるが、当該表現活動が合憲・合法のものであっても、当不当の面から、法務大臣は、それを理由として在留許可を与えないことができる。
 判決は、「消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない」としています。


以上

******小坂メモ****
積み残し課題
○18テキストP97L1~2「在留期間の更新を入国の場合とほぼ同視し、広い裁量権を認めている点に問題がある」とはどういう意味か。☆
P94~95にあるように、正規の手続で入国した外国人には、在留資格をみだりに奪われないことを保障されていることから、入国の自由のように、広い裁量にすることは不当(場合によっては違法)である、ということ。

○19テキストP97L2~3「法人の政治的行為の自由と比べ権衡を失する」とはどう意味か。☆
 八幡製鉄事件では、大企業の政治献金が容易に是認されているが、社会への影響力という点では、大企業の方が極めて大きいという意味。ただし、私見では、影響力の大きい外国人もいることから、この点は、もう少し議論が必要ではないかと思われる。

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ブログコメント「大阪府池田市伏尾台在住の女性」様にメッセージ届きますように いじめ 負の連鎖を断ち切る

2012-08-14 16:48:06 | 教育
 私のブログにご自身のいじめを受けた体験をコメントいただいた「大阪府池田市伏尾台在住の女性」様

 http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/d68e3e342b02eddb65b14d77ffdda898

 「amana」様から、以下のメッセージをいただきました。どうか、このメッセージが、届きますように。


******いただいたメッセージ******

 負の連鎖を断ち切る (amana) 2012-08-14 01:19:24

いじめはいつの世でも苦しみを生む病原菌のようなものです。
いじめる側は、より弱い存在を求めて魔の手を伸ばします。

中学時代~職場で自分もいじめの対象になりましたが、「いじめる側が心の病気なのだ。自分は彼らが言うようなゴミのような存在ではない」そう思えたのは、家族愛と理解者のがいたからです。
いじめられても、孤独でなければその苦しみを乗り越えられると思います。彼らの復習に心を囚われるのは、彼らを増長させるだけだと思います。彼らが一番悔しいのは無視されることです。
彼らに心を支配されるなんてばかばかしいことだと思います。

大阪の方には、本来のご自分の価値に輝きを与えるために、背の高さなど気にせず、負の連鎖を断ち切って欲しいです。

自分も背が低いですが、自分のことをそれなりに気に入っています。

あなたが仰るように、お母様を誇りに思ってご自身の事を大切になさって下さい。担任の先生も無力で間違っていたのは確かですが、できれば寛容な心で許してあげて欲しいです。

彼らのあおりに乗るとご自身を貶めるような気がします。

偉そうなことを言ってすみません。どうかお幸せになれますように!
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2011年3月~2014年2月末 街頭設置の防犯カメラの顔画像と容疑者と照合 警視庁“非公開”運用

2012-08-14 16:26:43 | 国政レベルでなすべきこと
 2011年3月~2014年2月末の三年間、街頭設置の防犯カメラの顔画像と容疑者と照合することを、警視庁が非公開運用しているとのこと。

 カメラに写った映像の中から人の顔を検出し、警視庁が作成したテロリストや指名手配容疑者の顔画像のデータベース(DB)と自動的に照合。DBと一致した顔が見つかると、カメラの設置場所を管轄する警察署に自動通報され、警察官が急行する。一致しなかった画像は廃棄する。 

 一歩間違えば、たいへん危険な運用がありうると考えられます。
 
 非公開の形で進められていますが、3年間の試験運用後は、公開の形で、実施結果を検証すべきものです。





*****東京新聞(2012/08/14)******
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2012081490070620.html
【社会】


街角の顔画像 容疑者と照合 昨春から非公開運用

2012年8月14日 07時06分


 民間の事業者が街頭に設置している防犯カメラの画像と、警視庁が所有するテロリストらの画像を機械的に照合するシステムを、警視庁が昨年三月から試験運用していることが、警視庁への取材や情報公開請求で開示された文書で分かった。カメラの所有者や設置場所、具体的な運用方法は明らかにされておらず、いつ、どこで、どのような画像が使われているのか、都民に知らされないままの運用が続いている。

 開示された文書などによると、試験運用しているのは「三次元顔形状データベース自動照合システム」で、民間の防犯カメラ二十台と接続している。

 カメラに写った映像の中から人の顔を検出し、警視庁が作成したテロリストや指名手配容疑者の顔画像のデータベース(DB)と自動的に照合。DBと一致した顔が見つかると、カメラの設置場所を管轄する警察署に自動通報され、警察官が急行する。一致しなかった画像は廃棄する。

 テロリストらの二次元画像を情報技術(IT)で三次元にし、さまざまな角度の顔画像をDBに登録することで、正面からだけではないカメラ画像との照合を可能にした。

 試験運用は二〇一四年二月末までの三年間。警視庁はカメラを所有する事業者と昨年二月、協定書を交わしたが、開示された文書では、事業者名は黒塗りだった。また、カメラ映像の中から顔の画像を検出する装置一式を、月額百二万円で民間会社から借りる契約を一〇年十二月に交わしたが、相手先や装置の詳細は非公開だった。

 カメラの所有者を非公開にした理由を警視庁は「開示すれば運用場所が明らかになり、容疑者らが場所を回避するなど、捜査に支障を及ぼす恐れがある」と説明。装置の詳細を非公開にした理由には「システムへの不正アクセスや不正利用を容易にする恐れがあるため」としている。

 警視庁は試験運用前、研究者や法曹関係者がメンバーの有識者委員会に、システムの効果的な運用方法や適正な活用について諮問。委員会は〇九年十二月、報告書をまとめた

 報告書では、DBに登録する対象者をテロリストや手配容疑者に限定した上で、厳格な登録基準を定めて運用すべきだと指摘している。だが、警視庁は本紙の取材に対し、登録基準はもとより、どのような人物が何人登録されているかといったことも明かさなかった。テロリストや容疑者の逮捕など試験運用中の「実績」の有無についても答えなかった。

(東京新聞)
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憲法学2 幸福追求権・平等権・自由権・受益権・参政権・社会権、法律の留保と制度的保障

2012-08-13 17:40:33 | シチズンシップ教育

 「憲法学1」に引き続き、人権を進めていきます。

 芦部『憲法』の「五章 基本的人権の原理 三人権の内容1 自由権・参政権・社会権」です。


**************************

Q君 
 自由権とは何ですか。

A先生
 国家が個人の領域に対して権力的に介入することを排除して、個人の自由な意思決定と活動とを保障する権利です。
 「国家からの自由」と言われます。


 自由権は、三つに分類されます。

 精神的自由 思想良心の自由・表現の自由・信教の自由・学問の自由
 経済的自由 職業選択の自由・財産権
 身体の自由 人身の自由・刑事手続の保障


Q君
 精神的自由を、内面的と外面的の二つに分ける理由は何ですか。

A先生

 外面とは他者に働きかける作用をもつという意味であり、内面とは、あくまでも個人の心の内部の問題であり、他者に対しては、少なくとも「自ら」働きかけることはありません。

 内面的自由は、基本的に国家からの制約を受けないが、外面的な自由は国家から制約を受ける可能性があるから分けられます。

 たとえば、憲法20条の信教の自由は、内面の信仰の自由と、外面の宗教活動の自由・宗教的な結社の自由を含みます。
 カルト宗教の活動を見てもわかるように、外面的な自由としての宗教行為の全てが保障されるわけではありません。

 なお、その他、精神的自由を、内面、外面でとらえてみると、

 19条は、内面の自由のみ。
第十九条  思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。

 20条は、信仰の自由は内面の自由。その他は、外面の自由。
第二十条  信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
○2  何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
○3  国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

 21条は、外面の自由のみ。
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2  検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

 23条は、研究の自由は内面の自由。その他は外面の自由。
第二十三条  学問の自由は、これを保障する。


Q君
 「参政権は、国家への自由とも言われ、自由権の確保に仕える。」とは、具体的にどういう意味ですか。

A先生

 国民が政治に参加することによって、国政に民意が反映されると、国民の望まない立法、国民の権利を侵害する立法がなされる可能性が低い、ということです。
 ただし、多数者の意思が反映されて、少数者の人権が保障されない可能性があります。
 一方、国会で公開された論争がおこなわれる以上は、極端な人権侵害立法が生まれる可能性は低いとも言いうります。
 端的に言うと、この文は、「自ら代表者を選んだ以上は、自分の首を絞める(自由を侵害する)立法を行う可能性は低い。」という意味であります。



Q君
 社会権が保障される意義は何ですか?なぜ、生存権は保障されるのですか。


A先生
 資本主義社会の弊害であるところの、失業・貧困・労働条件の悪化などの弊害から、社会的・経済的弱者を保護し、その個人の尊厳を保障すること。つまり、資本主義・自由競争社会のセイフティーネットの構築を国家に求めることにあります。

 もう少し詳しく言うと、「憲法学1」に述べた人権保障の二つの意義がここでも当てはまります。

 �各個人が経済的な側面で個人の尊厳を保つことができるようにすること、�能力があり発展可能性のある個人の能力を発揮させる土台作り(社会的な基盤の形成)をすること、の二つが社会権保障の意義であります。
 �が重要であり、�は補充的な意義であります。


Q君 社会権では、「憲法の規定だけを根拠として権利の実現を裁判所に請求することのできる具体的な権利ではない。」とはどういう意味ですか。

A先生
 例えば、生存権を例にとって述べます。
 生活に困っている人が、裁判所に生活保護を求めても、裁判官が最低限度の生活の内容(実体要件)や支給条件(手続要件)を決定することは困難です。
 あくまでも、生活保護法の決めた基準がないと、裁判による救済は難しいという意味であります。
 つまり、「25条は、裁判所が依拠する規範とはなりえない。」という意味です。
 25条は、生活保護法の制定を求める権利(抽象的権利)である。ということです。
 


****2 分類の相対性*****

Q君、 人権を分類するとどうなりますか。

A先生 以下、6つに分類できます。

 包括的基本権(総則的規定)13条 幸福追求権
 法の下の平等(総則的規定)14条 平等権
 自由権 精神的自由 19条 20条 21条 23条 
     経済的自由 22条 29条
     人身の自由 18条 31条以下
 受益権 17条 32条 40条
 参政権 15条(公務員の選定権・選挙権)・国民投票をする権利
 社会権 25条 26条 27条 28条

Q君 「知る権利の自由権的性格と社会権的性格」を説明してください。


A先生
 メディア(新聞等)を例にとって説明します。

 メディアの知る権利は、自分の情報の獲得を国家から妨害されないという、自由権的側面を有します。
 また、一方で、国家に対して情報公開を求めて(社会権・請求権的性格)いかないと、適正な取材を行って、政府の活動を監視するという重要な役割を担うことができなくなります。


Q君 「生存権の自由権的側面が侵害される場面」とは?

A先生

 住民税の滞納者に対して、納税を促すために、水道などのライフラインの供給を市役所が停止する場合などがそれに該当します。健康で文化的な最低限度の生活が、ライフラインの停止によって、「自由に」営むことができなくなります。

 あるいは、財政上の理由から、生活保護の支給額を大幅に切り下げることも、自由権的側面を侵害する可能性があります。


Q君「もっとも、社会権及び社会国家の思想を過大に評価すると、・・・・自由権の領域にまで国家が介入することを認める結果になるおそれが生じる。」とは、どういう意味ですか。


A先生
 生活保護を例にとって考えてみます。

 最低限度の経済生活を営むことができるように、生存権が保障され、生活保護の支給を受けることは、個人の尊厳を保障するという意味で十分に意味があります。
 しかし、生活保護を受けることと引き換えに、生活全般が国家の管理のもとにおかれることになります。社会的に更生するために、各種の指導を受けざるを得ず、自由な生活がかなりの程度制約されることになるのです。これが、自由の領域にまで国家が介入することなのである。
 また、充実した福祉社会を実現するためには、増税が必要になる。そうすると、消費など自由な経済活動が、その分、阻害されることになる。この意味でも、社会権・社会国家の強調は、国家の介入を招くということが説明できます。
 社会権の拡大は、自由権の後退という側面があることを理解することがとても大切です。


******3 制度的保障********


Q君 制度的保障とは?

A先生

 具体例(~の自由を保障するための・・・・)としてあげます。

 信教の自由を保障するための政教分離原則(判例の見解~ただし芦部説は否定的)
 学問の自由を保障するための大学の自治
 経済的自由を保障するための私有財産制


Q君 制度的保障は何のために存在するのですか。

A先生
 ある自由を保障するために、立法によってもその核心ないし本質的内容を侵害することができない特別な保護を与えるために存在します。
 簡単にいうと、制度的保障とは、ある自由を保障するために、当該人権の侵害をブロックしてくれると期待される制度を保障することを指します。
 学問の自治と大学の自治の関係が分かりやすい例です。かつては、学問の中心は大学であったので、自由な研究活動を保障するためには、人事その他を含めて、大学への国家権力の介入を排除することが必要でありました。

Q君 
 法律の留保とは何ですか。

A先生
 法律の範囲内で、人権が保障されるという形の、人権保障のあり方です。
 
 例えば、「表現の自由が、法律の範囲内で保障される」という規定が存在するとすれば、法律によって、表現の自由を大幅に制限することも可能ということになります(マイナスの側面)。
 しかし、法律によらないかぎり自由が制限されない(勅令や政府の命令では制限できない)という意味もあります(プラスの側面)。
 また、法律を制定する国会が、公正な選挙で選出された議員から構成され、メディアも正常に機能しているとすれば、権利を不当に制約する法律は制定されない、はずであると期待されます。

Q君
 法律の留保と制度的保障はどのような関係にあるのですか。


A先生
 制度的保障は、法律の留保に対抗する法理論です。

 法律の留保の下では、法律によって人権が大幅に侵害される可能性がありますが、制度的保障があると、人権の核心部分の侵害が防止できます。


Q君 「制度が人権に優越し、人権保障を弱める機能を営む可能性すらある」とはどのような場合でしょうか。

A先生
 政教分離を例にとると、政教分離原則の内容が不明確であったり、政教分離が十分に行われないものであったりする場合、国家の宗教への関わりを抑止することができず、そのために、(社会の少数派の)信教の自由が制約される可能性があるということです。
 「仏作って魂入れず」という諺は、仏(この場合は仏像のこと)を大事にするばかりで、大事な魂(信心のこと)の方がおろそかになる傾向にあるという意味であるが、制度的保障も、仏としての「制度」だけを作って、魂であるところの「自由」が保障されないということになりがちなのです。
 なお、テキストP87*を読むと、芦部説では、政教分離原則を制度的保障とすることに消極的であります。芦部憲法学�でも、制度的保障の議論は日本では不要としています。

以上

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憲法学1 人権の概念、その固有性、不可侵性、普遍性、切り札としての人権

2012-08-13 16:57:15 | シチズンシップ教育
 憲法学1・2の全範囲を、Q君とA先生の会話を通して概観してみたいと思います。

 憲法学1から初めて、通し番号をつけて行きます。

 初回の今回は、芦部『憲法』の「五章 基本的人権の原理 二 人権の観念」の部分に該当します。

 内容は、私の学んだ講義・レジュメをもとに作成していますことをあらかじめお断りします。


**************************************
Q君 人権の固有性とは何ですか?

A先生
人権は、憲法や神から恩恵として与えられたものではなくて、人間であることにより当然に有するとされることをいいます。
つまり、「もともと、生まれつき持っていた」ということです。
条文としては、11条と97条を参照してください。

第十一条  国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。



Q君 人権の固有性から新しい人権が導き出されることの意味を説明してください。

A先生
 憲法に明文で書いていなくても、新しい人権が認められる余地があることです。
 たとえば、プライバシーの権利は、憲法上に明文がないが、判例上確立しています。これは、新しく人権を作ったと考えるよりも、国家の人権侵害の形態にあわせて(個人の尊厳を蹂躙する形態が変化して)、個人の尊厳を尊重するために、人権の保障の形を追加・変更したと考えるべきであろうと思われます。
 憲法の具体的な条文がなくても、13条が保障する個人の尊厳が、蹂躙・侵害される場合は、判例の展開や立法によって、新しい人権が保障されるようになります。
 個人の尊厳という、人権の源泉があって、そこから、国家の干渉・侵害の形態に応じて、新しい人権が発生すると考えて下さい。一方、憲法第3章に規定する人権は、憲法成立時までの、国家の侵害の形態を示した歴史と考えることができます。


Q君 次に、人権の「不可侵性」です。
  人権侵害を行う存在は「誰・何?」であると想定しているのでしょうか。

A先生
 人権侵害を行う存在は、公権力であると想定しています。
 ただし、現代では企業などの私的団体による人権侵害の重要性も高まっています。


Q君 
 なぜ「公権力」に対して不可侵性を主張するようになったのでしょうか。

A先生
 以下の理由が考えられます。
  1)歴史的にみて、国家が一番多くの場面で人権を侵害してきた。
  2)近代立憲主義では、国家からの自由が問題となった。
  3)自由主義経済思想が普及した。税金、関所などといった国の干渉を排除することによって、経済が発展すると、近代国家では考えられていた。
  4)国家法人説の影響(国家法人説は、人権・自由というのは、神ではなくて、国が国民に対して与えるもの、と考える。)

 民法と異なり、憲法の場合は、権利行使の対象は、国家です。
 人権は国家に対して請求するものという点をまず押さえておくことが、とても大切です。


Q君
 公権力とは具体的に何を指すのですか。


A先生
 行政権・立法権を指します。冤罪などは、司法権による人権侵害であります。

 また、不可侵性からは、憲法を改正しても、基本的人権を削除することはできない、ということが導かれます。


Q君
 人権が不可侵である以上、人権は絶対無制約であることを意味するのでしょうか。

A先生
 人権には一定の限界が存在する。最低限人には迷惑をかけてはいけない、という制約があります。

 財産権のように、公共の利益のためには、人権は制約される場合があります。すなわち、合理的な理由がある場合は、人権の制約が許容されるということです。

 判例は、自衛隊の官舎内に立ち入ってビラ配りをしたことが住居不法侵入に問われた事件(判例集P225-2参照)でも、表現の自由は重要であるが、絶対的に無制約ではなく、他人の権利を不当に害するものは許されない、とされています。
 加持祈祷事件(判例集P128)も、基本的人権は、公共の福祉に反しない限り、立法その他、国政の上で最大限の尊重を必要とする、と述べています。

 まとめますと、不可侵性から導くことができることは次の点です。
 1)人権は、合理的な理由がない限り、国家により侵害されることはない。
 2)人権の中には、絶対侵害できないものがある。(後述の切り札としての権利)


Q君
 人権の普遍性とは何ですか。憲法上、その例外はありますか。

A先生
 人間である以上、誰に対しても、遍く(あまねく)人権が保障されるということです。

 普遍性とは、「いつでも、どこでも、誰にでも、どんな場合でも人権は保障される。」ことを意味します。

 ただし、天皇は、普遍性の例外であります。外国人も、日本国民と全く同じように人権が保障されるというわけではありません。

Q君
 普遍性の例外をどのように考えるべきですか。


A先生
 人権の保障は、次の二つのレベルで論じることになるということです。
1)そもそも人権が保障されるか、否か。(人権保障の有無)
2)仮に保障されるとしたら、どの程度が保障されるか。(人権保障の程度)

 普遍性は、1)を論じています。
 天皇や外国人は、1)の問題については、肯定されますが、2)の問題では、一般の国民と比較すると、人権保障が十分ではない、ということになります。

Q君 
 なぜ、普遍性が問題となるのでしょうか。

A先生

 人権が十分に保障されない集団、特に、社会的マイノリティーの人権侵害が問題となるからです。
 普遍性で問題となるのは、マイノリティーの人権です。

 なぜ、マイノリティーの人権を守らなくてはならないのか、その意味をよく考えることが大事です。
 社会的に差別され、政治過程、経済過程に影響力を行使することができないことが理由のひとつとしてあります。



Q君 
 人権が保障される根拠は、何ですか。なぜ、人権は保障されなければならないのでしょうか。

A先生

 人間が社会を構成する自律的な個人として自由と生存を確保し、その尊厳性を確保するためです。個人の尊厳を保障するためです。
 「人が人間らしく生きることができるために存在する。」別のいい方をすると、「人格的生存」を保障するために、権利が保障されるのであります。

 ところで、人権の保障の根拠には、もう一つ別の側面が存在します。
 それは、社会全体の利益を理由として保障されている人権が存在する、ということであります。

 後者の権利は、場合によっては、他の社会的利益が大きい場合は、権利保障が後退される可能性を秘めているということです。極論をいえば、社会にとって、有益ではない、または利益を与える可能性が低いと、判断されると、権利保障が後退する、という危険性をはらんでいます。

 たとえば、学問の自由は、研究者の自己実現としての研究の自由を与えています。しかし、大学等の高度な研究機関に在籍する者に特に与えられている理由は、研究の成果が社会に大きな恩恵を与えるから、という説明も可能であります。そうすると、社会に害悪を与えそうな場合は、研究を制限することもありうる、ということになります。

 したがって、人権保障の根拠は、第一に個人の尊厳であり、第二に、社会・公共の利益促進という順になるであろうと考えられます。



Q君

 「切り札(注 トランプのジョーカーのようなもの)としての人権」が行使される場面は、具体的には、どのような人権をどのように用いたときですか。

A先生

 切り札とは、トランプのジョーカーのように、状況に関わらず、有無を言わせずに権利行使を行うことを指しています。

 近代の自然権的権利、たとえば、信教の自由・政治的表現の自由のように、国家権力の妨害に対して、有無を言わせずに権利を行使するような場面であります。

 つまり、ほぼ、制約を認めずに、権利が絶対的に近い状況で保障されることを指します。
 切り札としての権利は、多数者の意思に対して、少数者の自由を保障するという局面で重要な意味をもちます。

 例えば、仏教徒の学生が、キリスト教施設の見学、神社の参拝などを公立学校の学校行事の一環として、強制された場合、本人がそれを強く忌避したいときには、信教の自由が「切り札」の人権として機能する(この場合は参加拒否)可能性があるということです。

 つまり、人権という全体集合の中には、基本的人権があり、基本的人権の中に、さらに、「切り札」としての人権という部分集合がある、と考えて下さい。
 そして、この「切り札」としての人権は、個人の尊厳・人格的生存に直結するものが該当します。例えば、信仰の自由のように、侵害されると、「人間らしい生き方ができなくなる」ものが該当します。


以上、
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難病筋萎縮性側索硬化症ALS、新薬の期待 進行抑える蛋白特定「膜貫通糖蛋白質nmb」(GPNMB)

2012-08-13 16:14:32 | 築地を守る、築地市場現在地再整備
 筋萎縮性側索硬化症(ALS)の新薬の開発、期待しています。


*****朝日新聞(2012/08/13)******
http://www.asahi.com/science/update/0813/NGY201208120029.html
難病ALS、新薬の期待 進行抑えるたんぱく質特定


 全身の運動神経が徐々に衰える難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の患者の体内で増加し、進行を遅らせる働きがあるたんぱく質を、岐阜薬科大などの研究チームが特定した。新薬の開発や病気の早期発見につながることが期待される。13日付の英科学誌サイエンティフィック・リポーツ(電子版)で発表した。

 このたんぱく質は「膜貫通糖たんぱく質nmb」(GPNMB)。岐阜薬科大薬効解析学研究室の原英彰教授らの研究チームが、ALSの原因遺伝子の一つとされる酵素SOD1の変異型遺伝子を過剰に発現させたマウスを調べたところ、GPNMBが通常より多くなっていた。

 さらに、このマウスにGPNMBを過剰に発現させたところ、通常のマウスよりも病気の発症時期が遅くなり、生存期間も長くなることが判明。GPNMBを細胞に加えると運動神経細胞への障害が改善されるほか、ALS患者の血清や脳脊髄(せきずい)液などでGPNMBの発現量が増えることもわかった。
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