京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

塀の中の読書会

2021年06月30日 | こんな本も読んでみた
本を読むのは極めて私的な愉しみで、自分の本棚をさらけ出したいとは思はない。けれど、時には同じ本を読む仲間を欲しいと思うこともある。


カナダの二つの刑務所で開かれた月1回の読書会の模様を描いたノンフィクション『プリズン・ブック・クラブ』。
キャロルが立ち上げた「刑務所読書会支援の会」。この読書会は受刑者の更生が目的ではないにせよ、文学作品を読むことが他者への共感につながるという報告がこれまで何度もなされてきたという。

「この読書会がすごく面白いのは、自分では気づきもしなかった点をほかのやつらが掘り起こしてくれるからさ。たとえばガーンジー島の話だと、おれは歴史とか恋愛とかに目がいっていたけど、人のやさしさについては考えなかった」
メンバーたちはそれぞれに自分の考えを口にして、互いの意見を聞いて、時には見かたを変えていく。個々の人生での体験が滲む。素直に自分を語るメンバーとアンとの交流に、読んでいて胸が熱くなることも時々だった。

「どんな状況でも、読む能力さえあれば、本を読み本について語り合うことで、コミュニティや、逃げ場や、人のやさしさや、自分の居場所を見つけだせる」ということを学びとった、と著者アンは述べている。
読書会仲間を敬意をこめて「巣立っていったメンバーたち」とアンは記す。

長いことかかったが6月中を目標にしてようやくのこと読み終えた。読書会で取り上げられた多くの本が紹介されている。いくつか読んでみたいと思うものもあった。少し振り返る時間を取ってみよう。
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