京の辻から   - 心ころころ好日

名残りを惜しみ、余韻をとどめつつ…

神話と言わず例話

2023年01月12日 | 日々の暮らしの中で
― あそこの家の、どうしようもない息子が、どういう心境の変化だか、寝たきりのオバアチャンの世話を熱心に始めた。

― 病院に置いとけばよさそうなものを、勝手に家に連れもどして、そうかと思えば髪をキンキンに染めて、気まぐれもいい加減にしろと見ていたら、あんがいに続いている。

― 昼間は介護さんにまかせて二階でグウタラしているらしいが、夜にはかならずオバアチャンのベッドのそばの簡易ベッドで寝て、朝まで幾度か、オムツの換えを欠かさないそうで、それは感心だが、心配して見舞いに来るオバアチャンの肉親たちに白い眼を剝いてろくに口もきかない。
変なものを吸っているという噂で、目つきもなにやら、あぶない。いつまでアテになるものやら。
ほんとうだかどうだか、あんな孫に、じつは血もつながっていないのに、オバアチャンもなついているそうだが、なまじのこと、途中で放り出されたら、迷惑するのはまわりの者だ。

少しずつ読み進めている『書く、読む、生きる』の中に芥川龍之介賞選評の章があって、第131回の受賞作『介護入門』(モブ・ノリオ)の古井由吉選評がある。
その書き出し部分だが、作品を読んでいないので引用なのか(だと思うが)は定かではないが、
けれどもっとわかりにくいのは、氏の評であって、…。

「…この窮地の内にこそ、剥離解体しかけた言葉と、さらに現実を回復する足掛かりを見いだしつつあるとすれば、ここに今の世の、ひとつの神話と言わず例話の、始まりがひそむ。(略)
言葉の過不足を量っていられるような境ではない。」 ? ?

こういう作品があったのも初めて知るところで、選評を理解するには読むしかないのだろうが、どうしましょ。


それはさておき、この階段を休み休みながらでも上がってきた。


ふた休み、息を整えて

拝殿まで、石段は133段かしら。汗が流れる陽気。

あるのは鳥の声、木々を渡る鳥の羽ばたき、葉ずれの音、白川のせせらぎ。

今のところは、まあ足元健康体と言えそう。
しかし、やはり予習すべき“介護入門編”なのかしら。気は進まないけど‥。

コメント (4)
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