モロッコは遠かった。
途中経由地のドバイまでは11時間。これは想定内。
しかしその先、カサブランカまでなんとなく4、5時間と思っていたら、これがなんと8時間。
考えてみればアフリカ大陸の一番広い所を東から西まで完全に横断するのだから時間がかかって当たり前。
ふところに余裕があればパリ経由で行くべきところと痛感した。
そんな長距離の機内でもさすがはエミレーツ、映画の選択肢がえらく豊富なので、どうせ眠れないならと見まくった。
まずは金目鯛の煮つけ(意外においしい)を食べながら
「ヒューゴの不思議な発明」 Hugo
この映画、テレビの予告編から完全に子供のための映画だと思い込んでいた。スコセッシ監督とはいえ3Dだと言うし。
しかしそれにしてはアカデミー賞の作品賞候補になるなど評判がいいので見てみたら、なんと映画黎明期へのオマージュではないか。しかもフランスの映画人への。
原作は児童書だそうだが、この映画は子供を狂言回しにした大人のための映画。ベン・キングスレーがさすがの貫禄で見せる。
しかしこのタイトルはおかしいよね、だってかわいいヒューゴ君は何も発明していないもの。
「ファミリー・ツリー」 The Descendants
ジョージ・クルーニーの奥さんが意識不明の重体になって、仕事中毒の男が家族のきずなを見つめなおすという、よくあると言えばよくある話。
でもその奥さんが実は不倫していて、しかも相手が「えっ、こいつなの?」というのが現代的なひねりだろうか。
長女役の子がかわいいし、そのしょーもないボーイフレンドもちょっといい役。
ジョージ・クルーニーはいい男のくせになさけない亭主役がよく似合う。
ハワイでは身なりで相手の地位はわからない(みんなアロハに短パン、サンダル姿だから)とか、海に遺骨を流す方法とか、ちょっとためになったりもして。
そうこうしているうちに朝食が出て、ドバイ到着。
ドバイを出発したらもう一度朝食が出て
昼食は羊の肉団子カレー。
いつも思うが、ドバイ発の機内食は日本初よりボリューム満点。
カサブランカへの機内では
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 The Iron Lady
予想はしていたがとにかくメリル・ストりープの「サッチャーぶり」を見る映画。
話し方、唇の結び方、身振りや手振り、ここまでやられたらアカデミー賞をやらないわけにはいくまい。
現在の姿の老けメークもすばらしくて、どこまでが本当のメリルのしわなの、とか思っちゃう。
ご主人のデニスの扱いもいいが、映画全体としてはサッチャーに深く切り込んだとは思えない。
Chak de! India
2007年のインド映画だが、その年にインドに行った時大当たりしていて見たかった一本。
シャールーク・カーン率いるインドの女子フィールドホッケーチームがワールドカップで優勝するまで、仲が悪かったチームが一つになり、男どもの偏見をはねのけ、強豪チームに一度は惨敗しながら二度目は僅差で勝って、とスポーツ映画の定石をすべて踏んでいるがこういう映画は予想通りに進んでもらってこそカタルシスがある。
インド各州から集められた選手たちなので言葉が違ったり、肌の色が違ったり。結婚問題やら女性差別、パキスタンとの感情的軋轢から宗教問題までさりげなく盛り込まれているところも見事な脚本。
大スターのシャールーク・カーンはさすがのかっこよさで、特に笑った時のえくぼがたまらない。
この映画、なんで日本で公開しなかったのだろうか。
と行きだけで4本の映画を見て、さらに帰路。
昼食だか夕食だかよくわからない食事はビーフのクスクスを選択。肉がパサパサ、サイドもチキンサラダでちょっとげんなり。デザートのパイナップル・タルトはおいしかったけれど。
映画は「アーティスト」 The Artist
今年のアカデミー作品賞受賞と言うことで大いに期待してみた一本。
「ヒューゴ」とは逆にフランス人によるハリウッドへのオマージュと言うところが面白く、ダグラス・フェアバンクスやらウィリアム・パウエル、ジョーン・クロフォードなど元ネタを想像しながら見るのが古い映画ファンにはクイズのようで楽しい。
映画のストーリーもショットも古いハリウッド映画そのままなのだが、ストーリーにはもうひとひねりあった方が2011年にこの映画を作る意味があったのではないだろうか。
企画の面白さとこだわりはわかるが、アカデミー賞を取るほどの作品だろうか。
「ヒューゴ」よりもこちらの方が子供っぽく、ちょっと期待外れ。
食欲もない所にまたパサパサのサンドイッチが出てドバイ到着。
心配した乗り継ぎもなんとかうまく行って成田行き機内で
鶏のあんかけご飯よりちょびっとのそばがおいしい。
選択肢は多いものの、見たいものはなくなってきた映画からようやくもう一本。
Game Change
これはおそらく日本では公開されないだろう、2008年のアメリカ大統領選におけるマケイン、ペイリンの敗北を描いたテレビ映画。マケインをエド・ハリス、ペイリンをジュリアン・ムーアと好きな俳優が演じているので見たのだが、メリル・ストリープのサッチャー同様、こちらも化ける、化ける、本物にそっくり。
テーマは現代の大統領選が「大統領にふさわしい人をおす」のではなく、「選挙に勝てる人間をかつぐ」ことになってしまっていることへの批判なのだが、そのためにペイリンを優れた女優ではあってもアラスカ以外のことは何も知らない田舎者として描いているところがすごい。「ソーシャル・ネットワーク」の時にも思ったが、欧米の映画は現役の人間を描くにも遠慮がない。おかげでテーマが明確になるのだが。
政治を描いた映画としては「鉄の女」よりもこちらの方がおもしろい。
それにしても大統領選のために専用ジェットを飛ばし、各地で大イベントをひらき、多くのブレインを雇って、毎回どのくらいの金が動くのだろうか。それで食ってる連中が山のようにいるのだろうが、もっと生産的なことにその金が使えないのかといつも思ってしまう。
メッカも後方に去り
最後の「朝食」をいただいたら夕方の日本に到着。
ランディングの見事さに思わず拍手したくなる締めだった。
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途中経由地のドバイまでは11時間。これは想定内。
しかしその先、カサブランカまでなんとなく4、5時間と思っていたら、これがなんと8時間。
考えてみればアフリカ大陸の一番広い所を東から西まで完全に横断するのだから時間がかかって当たり前。
ふところに余裕があればパリ経由で行くべきところと痛感した。
そんな長距離の機内でもさすがはエミレーツ、映画の選択肢がえらく豊富なので、どうせ眠れないならと見まくった。
まずは金目鯛の煮つけ(意外においしい)を食べながら
「ヒューゴの不思議な発明」 Hugo
この映画、テレビの予告編から完全に子供のための映画だと思い込んでいた。スコセッシ監督とはいえ3Dだと言うし。
しかしそれにしてはアカデミー賞の作品賞候補になるなど評判がいいので見てみたら、なんと映画黎明期へのオマージュではないか。しかもフランスの映画人への。
原作は児童書だそうだが、この映画は子供を狂言回しにした大人のための映画。ベン・キングスレーがさすがの貫禄で見せる。
しかしこのタイトルはおかしいよね、だってかわいいヒューゴ君は何も発明していないもの。
「ファミリー・ツリー」 The Descendants
ジョージ・クルーニーの奥さんが意識不明の重体になって、仕事中毒の男が家族のきずなを見つめなおすという、よくあると言えばよくある話。
でもその奥さんが実は不倫していて、しかも相手が「えっ、こいつなの?」というのが現代的なひねりだろうか。
長女役の子がかわいいし、そのしょーもないボーイフレンドもちょっといい役。
ジョージ・クルーニーはいい男のくせになさけない亭主役がよく似合う。
ハワイでは身なりで相手の地位はわからない(みんなアロハに短パン、サンダル姿だから)とか、海に遺骨を流す方法とか、ちょっとためになったりもして。
そうこうしているうちに朝食が出て、ドバイ到着。
ドバイを出発したらもう一度朝食が出て
昼食は羊の肉団子カレー。
いつも思うが、ドバイ発の機内食は日本初よりボリューム満点。
カサブランカへの機内では
「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」 The Iron Lady
予想はしていたがとにかくメリル・ストりープの「サッチャーぶり」を見る映画。
話し方、唇の結び方、身振りや手振り、ここまでやられたらアカデミー賞をやらないわけにはいくまい。
現在の姿の老けメークもすばらしくて、どこまでが本当のメリルのしわなの、とか思っちゃう。
ご主人のデニスの扱いもいいが、映画全体としてはサッチャーに深く切り込んだとは思えない。
Chak de! India
2007年のインド映画だが、その年にインドに行った時大当たりしていて見たかった一本。
シャールーク・カーン率いるインドの女子フィールドホッケーチームがワールドカップで優勝するまで、仲が悪かったチームが一つになり、男どもの偏見をはねのけ、強豪チームに一度は惨敗しながら二度目は僅差で勝って、とスポーツ映画の定石をすべて踏んでいるがこういう映画は予想通りに進んでもらってこそカタルシスがある。
インド各州から集められた選手たちなので言葉が違ったり、肌の色が違ったり。結婚問題やら女性差別、パキスタンとの感情的軋轢から宗教問題までさりげなく盛り込まれているところも見事な脚本。
大スターのシャールーク・カーンはさすがのかっこよさで、特に笑った時のえくぼがたまらない。
この映画、なんで日本で公開しなかったのだろうか。
と行きだけで4本の映画を見て、さらに帰路。
昼食だか夕食だかよくわからない食事はビーフのクスクスを選択。肉がパサパサ、サイドもチキンサラダでちょっとげんなり。デザートのパイナップル・タルトはおいしかったけれど。
映画は「アーティスト」 The Artist
今年のアカデミー作品賞受賞と言うことで大いに期待してみた一本。
「ヒューゴ」とは逆にフランス人によるハリウッドへのオマージュと言うところが面白く、ダグラス・フェアバンクスやらウィリアム・パウエル、ジョーン・クロフォードなど元ネタを想像しながら見るのが古い映画ファンにはクイズのようで楽しい。
映画のストーリーもショットも古いハリウッド映画そのままなのだが、ストーリーにはもうひとひねりあった方が2011年にこの映画を作る意味があったのではないだろうか。
企画の面白さとこだわりはわかるが、アカデミー賞を取るほどの作品だろうか。
「ヒューゴ」よりもこちらの方が子供っぽく、ちょっと期待外れ。
食欲もない所にまたパサパサのサンドイッチが出てドバイ到着。
心配した乗り継ぎもなんとかうまく行って成田行き機内で
鶏のあんかけご飯よりちょびっとのそばがおいしい。
選択肢は多いものの、見たいものはなくなってきた映画からようやくもう一本。
Game Change
これはおそらく日本では公開されないだろう、2008年のアメリカ大統領選におけるマケイン、ペイリンの敗北を描いたテレビ映画。マケインをエド・ハリス、ペイリンをジュリアン・ムーアと好きな俳優が演じているので見たのだが、メリル・ストリープのサッチャー同様、こちらも化ける、化ける、本物にそっくり。
テーマは現代の大統領選が「大統領にふさわしい人をおす」のではなく、「選挙に勝てる人間をかつぐ」ことになってしまっていることへの批判なのだが、そのためにペイリンを優れた女優ではあってもアラスカ以外のことは何も知らない田舎者として描いているところがすごい。「ソーシャル・ネットワーク」の時にも思ったが、欧米の映画は現役の人間を描くにも遠慮がない。おかげでテーマが明確になるのだが。
政治を描いた映画としては「鉄の女」よりもこちらの方がおもしろい。
それにしても大統領選のために専用ジェットを飛ばし、各地で大イベントをひらき、多くのブレインを雇って、毎回どのくらいの金が動くのだろうか。それで食ってる連中が山のようにいるのだろうが、もっと生産的なことにその金が使えないのかといつも思ってしまう。
メッカも後方に去り
最後の「朝食」をいただいたら夕方の日本に到着。
ランディングの見事さに思わず拍手したくなる締めだった。
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