用事がなければとても外を出歩く気になれない今日この頃、仕方なく出かけたからには映画館で涼もうと考えた。
しかし夏休みのせいもあってやっているのはお子様映画ばかり。
そんな中、アメリカのどうやら人情コメディらしい、という情報だけで選んだのはこちら。
「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」 The Holdovers
やって来たのは勝手知ったる日比谷のシャンテシネマ。
平日の昼間なのに意外にも結構混んでいて、客席の6割以上は埋まっていただろう。
ただし客の年齢層はかなり高そうで、皆さん考えることは一緒だったか。
舞台は1970年、ニューイングランドの寄宿学校。クリスマス休暇でみんないなくなる中、金持ちの問題児が一人に教師一人、料理人だけがそれぞれわけあって取り残される。
アメリカの寄宿学校の生徒と先生の話というとロビン・ウィリアムズの「いまを生きる」を思い出すが、裕福な坊ちゃんの苦悩や教師と心を通わせるところなど共通点はありながら、こちらは全体のトーンがずっと軽い。
軽さの元は教師を演じるポール・ジアマッティで、偏屈で厳格な教師と言う設定の割にどこかコミカルで愛嬌がある。斜視を生徒にからかわれるのだが、ジアマッティ本人は斜視ではない。どうやって斜視にしているのだろう。
上手いのはコック役のダバイン・ジョイ・ランドルフという女優さん。ふてぶてしくて不愛想だが実は親切と言うのを実に自然に演じていて、これでアカデミー助演女優賞を取ったとは帰ってから知った。
この映画、他にも作品賞を始め5部門にノミネート、ジアマッティも主演賞候補だったとはまったく知らなかった。地味で助演の印象の方が強い人なので、この作品は代表作になるだろう。
コメディというよりは人情話、ちょっと昔のアメリカ映画と言う感じで、先日機内で見た「ボーイズ・イン・ザ・ボート」もそうだったが、ハリウッドはいささか懐古趣味になっているのだろうか。
ただしこの映画の設定である1970年は、コックの息子がベトナム戦争で死んだという以外にはまったく必然性がなく、時代背景が生かされているとは言い難い。現代の話であってもまったく問題なく、黒人スタッフとの交流もその方がずっと自然だっただろう。
ストーリーに意外性はないがラストまで気持ちよく見られて、こういう素直なアメリカ映画はいい。
しかし何よりよかったのはこれがまったく時季外れのクリスマスの話だったところ。
ニューイングランドの冬は雪景色でなにもかも凍っているが、寒そうというより涼しそうと思ってしまった。
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