![]() | 虫たちの生き残り戦略 (中公新書) |
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中央公論新社 |
実は私、昆虫大好きで、子供のころは昆虫博士になりたかった。だから、昆虫図鑑や虫に関する本を読むのが大好きだった、さすがに、中学生くらいになると、この道で飯を食べていくのは大変だと気づき、この夢はすっぱり諦めたのだが、「三つ子の魂百まで」の言葉があるように、今でも、昆虫関係の本があると、つい読みたくなってしまう。
昆虫の種類数は、全動物の70%以上を占め、未発見の者まで入れると300万種以上にもなると言われている。本書、「虫たちの生き残り戦略」(安富和男:中公新書)は、その昆虫たちの繁栄の秘密を探ろうとするものだ。
本書中には、24種類の昆虫たちについて、生き残っていくために、どのような巧妙な仕組みを身につけているかが語られている。そのなかから、いくつか興味深いものを紹介してみよう。
まずは、鶏糞のなかで育つガイマイゴミムシダマシという甲虫。鶏糞だけでなく、イエバエの幼虫や卵なども食べてくれるという、人間にとってはありがたい虫だ。イエバエの発生を抑制するのに、シロマジンという殺虫剤が使われるのだが、なんとこの薬は、ガイマイゴミムシダマシにとっての強壮剤となり、繁殖力が増すというのだ。
次に、どこでも見かける蝶の代表のようなモンシロチョウ。この蝶は、はるばる海を渡って、大陸から日本に移住してきたという説が有力らしい。あの可憐な姿からは想像できない、驚くような飛行能力だ。人間には、モンシロチョウの雌雄の区別はぱっと付かないが、彼らの目で見ると、雌の翅は紫外線が輝いているため、雄は容易に識別ができるという。
マダラチョウの生態も面白い。雄は、毒であるピロリディン・アルカロイドを植物から摂取し、これを性フェロモンの材料として使うのみならず、交尾の際にメスに分け与える。メスは更に、卵にピロリディン・アルカロイドを移して、外敵からの防御に使うのである。
「雪虫」とも呼ばれるトドノネオオワタムシは女性優位だ。通常は単為生殖でメスを生み、晩秋のころになって初めてオスが出現する。これは、冬越しのため、有性生殖により、卵を生産するためなのだ。
このほか、シロアリには、働き蟻や兵蟻にも雌雄の区別があるとか、カマキリは原ゴキブリ類から進化をしたということなど、興味深い話題が満載である。本書を読めば、昆虫たちが、実はすごいやつだったということが実感でき、彼らが愛おしくなってくるのではないだろうか。しかし、最近は、これだけ環境への適応性に優れた昆虫たちも、見かける種類がどんどん少なくなっている。一度失った生態系を回復するのはほとんど不可能である。たまには、本書のような本を読んで、自然環境の大切さに思いを寄せてみることも必要だろう。
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