文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:耳袋秘帖 妖談うつろ舟

2015-04-18 17:37:03 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
耳袋秘帖 妖談うつろ舟 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


、還暦を過ぎてもますます元気、綺麗な若い恋人もいるというスーパーシニア、元祖刺青奉行の根岸肥前守が、お江戸の怪事件に挑む、「耳袋秘帖」シリーズのうち、「妖談うつろ舟」(風野真知雄:文春文庫)。このシリーズは、更に、「殺人事件」シリーズと「妖談」シリーズに分かれているが、本作は、「妖談」シリーズの完結編となるようだ。

 根岸が奉行を務める南町奉行所同心の椀田が、酔っ払いから銭をくすねたとして捕まえた、寿安という奇妙な男。その男は、数々の殺人事件への関与を疑われ、金で殺しを請け負う闇の者たちとも関係していると見られている、さんじゅあんと呼ばれる謎の人物だった。この男、元は僧侶だったが、今は新興宗教の教祖のような存在だ。その名前から想像がつくように、その教えには、キリシタンバテレン的な要素が見られるが、彼がどうして、そのような教義に至ったかはよく分からない。しかし、その信者は、一般庶民だけではなく、幕閣にまでも存在している。

 さんじゅあんの評価は二通りに分かれている。彼を救世主のように崇める者と、こずるくてウソつきでちっぽけな男と思う者たち。もちろん、根岸たちの評価は後者なのだが、その一方で、彼に救われたと思う者たちもたくさんいるのだ。しかし、考えてみれば、宗教の教祖とは、誰にしてもこのような二面性を持っているものではないだろうか。それにしても、その最後は、意外なほどあっけないものだった。

 この巻では、対照的な二人の女性が登場する。さんじゅあんの本質を知りながら、それでも彼に魅かれる哀しい過去を持ったまりやと、根岸の恋人力丸の妹分である小力だ。小力は、同心の椀田のプロポーズを受け、幸せな未来が開けているかのようだ。一方まりやは、さんじゅあんが乗るはずだったうつろ舟に乗り、海をさまよう。うつろ舟とは、江戸時代に始まる伝説で、異国人らしい女が、奇妙な舟に乗って、日本の海岸に流れ着いたというものである。まりやもまた、どこかの海岸に流れ着くことになるだろうか。それとも、このまま永遠に流離続けることになるか。とても未来など開けていそうにはないが。

 シリーズ完結編だからだろうか。この作品では、根岸のスタッフ勢揃いで事件に挑んでいる。同心の椀田と栗田、根岸家家臣の宮尾と坂巻、そして、岡っ引きの辰五郎と、彼の義母で下っ引きのしめ。このさんじゅあんとの最後の対決という本筋の物語の他に、白蛇が人の後をおってきた話や、旗本が幽霊を食べた話といった小ネタ的な話も織り込まれており、読者の興味を逸らせないようになっている。

☆☆☆☆

※本記事は、姉妹ブログと同時掲載です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする