マツリカ・マジョルカ | |
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角川書店(角川グループパブリッシング) |
相沢沙呼の青春ミステリー「マツリカ・マジョルカ」(角川書店)。
主人公の柴山祐希は高校1年生。中学の時にひきこもり歴があり、クラスにも溶け込めない。姉に対しては、極度のシスコン。そんな彼が、ある日、廃墟のような雑居ビルに住むマツリカという謎の美少女と出会った。このマツリカという少女、なぜか、そのビルからずっと学校を観察しているという変人で、かなり高ビー。祐希は、柴犬と呼ばれて、完全にパシり扱いだ。
祐希がマツリカから命じられるのは、ヘンなことばかり。学校で目撃されたという原始人や手すり女、ゴキブリ男などを見張れというのだ。ところが、その最中に、決まって、これまた奇妙な事件が起きる。これをマツリカが、祐希から聞いた情報を元に、解き明かしているという、一種の安楽探偵ものだというのが、本作品の基本的な性格である。
上から目線で、かなり口が悪いお姫様と、下僕扱いされる少年。そしてお姫様は、名探偵でもある。この構造は、「GOSICK」(桜庭一樹)の世界と似ている。違うのは、同じ美少女でも、ヴィクトリカがちっちゃいビスクドールのような女の子なのに対して、こちらのマツリカさんは、すらりとしたモデルのような娘だというところ。そして、その相棒となる少年も、ヒロインに振り回されるのはいっしょでも、久城一弥には特に問題はかかえてないのに対して、こちらの祐希は、色々と抱え込んでいるようだ。
マツリカの横暴さに辟易しながらも、彼女に魅かれている祐希。時には、彼女の無防備な姿にドキドキしたりもしているのが、いかにもこの年ごろの少年らしい。マツリカは、ヘンな命令ばかり下しているが、祐希に勉強も教えてくれ、おかげで、低空飛行だった彼の成績も上がった。
そして、もう一人のヒロインとも言える、同じクラスの小西さん。ボーイッシュで、男のような言葉づかいだが、おしゃれをすればかなりの美少女のようだ。彼女は、なにかと孤立している祐樹をを構ってくれる。こちらも、なかなか気になる存在だ。
ある出来事がきっかけで、心に苦しみを抱え、人と関わることを避けてきた祐希。そんな彼が、マツリカのおかげで心の傷が癒され、小西さんをはじめとするクラスの生徒たちとも、次第に人間関係ができてくる。そんな祐希の再生と成長を描いた物語だというのが、この作品の、もうひとつの性格だろう。
しかし、なぜ、マツリカは廃墟ビルに住んでいるのか、祐希と小西さんとの関係に何か発展はあるのか。気になることを色々と残しながら、この巻は終わっている。この作品には、「マツリカ・マハリタ」という続編があるようなので、また機会があれば、そちらも読んでみたい。
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