・東京大学建築学専攻
本書は東京大学の無料オンラインコース「現代日本建築の四相」シリーズの「第一相 理論」をベースにしたものだ。この四相とは、「理論」、「技術」、「都市」、「人間」のことで、丹下健三の建築活動から得られた成果から見出されたもののようだ。
この丹下健三を第一世代とすれば、現代は第五世代に当たるようである。本書は、この第四世代までの代表的な建築家の活動に、丹下健三という軸を通すことにより、気付きにくかった関係性や一貫性を浮かび上がらせることを狙ったものだという。
本書は、各世代から2名を選び、自ら設計した建築を基にそれぞれの建築理論を語るという構成になっている。
しかし、この理論というのが、実は私にはよく分からない。建築学というのは、一応工学部に所属しているものの他の理工系分野とは異なっている部分がある。それは、感性というものに大きく依存していることだろう。もちろん構造力学などといった分野などは、他の理工系と大きくは変わらないないだろうが、通常建築と言えばどちらかと言えば美術的な側面の方にスポットが当たっているように見える。
他の理工系分野では、確立した理論というものは、客観的で人によって内容が違うようなことはない。しかし、本書に言う理論は、主観的であり、どちらかと言えば信念だとか考え方に近いもののように思える。だから本書を読んで思ったのは、人によっていろいろな建築に関する考え方があるんだなということ。だけど、通常の理工書を読むようなすっきり感はない。
※初出は、
「本が好き!」です。