文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:リケコイ

2017-08-24 09:39:14 | 書評:小説(その他)
リケコイ。 (集英社文庫)
クリエーター情報なし
集英社

・喜多喜久

 これは、一人のバカヤロウ(注:作品中の表現)の物語だ。主人公は、東大大学院で農学を専攻している森くんという学生。彼が修士1年の時に、他大学から卒業研究のためにやってきた羽生さんという眼鏡っ娘。アニメオタクで眼鏡っ娘萌えの主人公は、そんな彼女に一目ぼれした挙句に暴走しまくる。

 実は羽生さん、タカナシ(字は不明)という彼氏持ちだった。だから森くん、彼女に告白するも、あっさり撃沈。しかしこの羽生さん、森くんになんだか思わせぶりな態度も。

 そこから、森くんバカヤロウ道をまっしぐら。研究室の旅行で酔っぱらって寝ている羽生さんの乳を揉もうとしたり(これはブラがうまく外せなかったために未遂に終わった)、DTを捨てようと、自販機でコンド-さんを買ったり、果ては、やらせてくれと土下座までする始末。 もうダメダメやん。

 もちろん、そんなことでDTが捨てられるはずもなく、羽生さんとの関係も悪くなってしまうのだが、そんな彼を置き去りにして、研究室のDT仲間たちは、先に大人の階段を上ってしまう。結局森くんはDTのまま修士課程を終えて、就職することになってしまった。

 この作品に出てくる女子たちは、ビッチ(失礼)いや経験豊富なお姉さまが多い。羽生さんにしても相当のやり手だ。何しろ初体験が中二のときで、今の彼氏が5人目だというのだから。おまけに、森くんの送別会の日には、同じ研究室の後輩とラブホに。

 しかし、この作品が面白いかどうか問われれば、そんなに面白くないと答えるだろう。誰が人のバカヤロウな片思いの話など聞いて面白がるものか。

 ということで、ここからは少々ツッコミ?を。この作品は、こう締めくくられている。

<恋する理系男子にも、恋する理系女子にも、いつか幸せが訪れますようにと。この物語が、その一助になれば幸いである。>(p324)

 しかしちょっとまて!ここで「理系男子」とひとくくりにしているが事はそれほど単純ではないだろう。まず工学系と理学系、物理・数学系と化学・生物系の間にはそれぞれ暗くて深い河が流れている。文化も大分違うし、肝心の女子比率だって違うのだ。私が在籍していた工学部電気系なんて、女子学生なんか一人もいなかったよ!身近に女子がいる環境なんて羨ましいぞ、チクショー!!(失礼、つい興奮を)だから、こんな物語なんて最初から成り立たねーよ。

 そして、羽生さんだ。研究室が交流のある私立大学から、卒業研究生を受け入れる習わしがあるということだが、いくらなんでも習わしでは無理だろう。色々アドバイスを受けるくらいならともかく、机も置かれて、完全に研究室の一員になっているのである。おそらく学校間でそのような協定があるのではないだろうか。まさかヤミだったりということはないよね?

<クリスマスイブ。その呪わしき日 - クリスチャンの方申し訳ありません - の夜、世のあまたのカップルと同様、羽生さんとタカナシは性交渉に励んだのだろう。>(p151)
 最後にひとつ感じたのは、ニッポンでは、クリスマスってのは、恋人同士がエッチをする日になってしまっているんだな。キリストさまも空の上からさぞお嘆きだろうと思う。

☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

コメント
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