・矢口高雄
言わずと知れた、伝説の釣りマンガの3巻までのレビュー。内容は、釣り好き少年の三平三平(みひらさんぺい)が、その天才的な釣りの才能で、いろいろな魚を釣り上げるというのが基本的なストーリーである。アニメでも放映されたし、実写映画にもなった。
少年マガジン(講談社)に連載されていたのが、1973年から約10年間らしいので、これらの巻は半世紀近く前に描かれたことになる。そういった目で見ると、三平の家が藁ぶき屋根だったり、三平の祖父の服装が江戸時代のお百姓さんのようだったりと、なんとなく時代を感じてしまう。
今回読んだのは3巻までだが、1巻は三平が鮎釣大会で優勝する話、2巻がカルデラ湖の青鮒に挑む話、3巻が夜泣谷の左膳イワナ釣る話と、巻ごとに釣りの対象が変わっている。
ところで、この三平、学校にも行かずに釣りばっかりしていることをよく突っ込まれていたようだが、連載誌は週刊だ。きっと毎週日曜日に釣りをしていたんだろう。2巻の青鮒釣りでは、祖父の一平や幼馴染のユリといっしょに温泉宿に何泊もしているようだが、これはきっと夏休み中だったんだよね(笑)。
3巻までを読んだ限りでは、この作品の底に流れている思想(というと大げさになるが)には、「釣り好きには悪人はいない」ということだろうか。1巻では三平の優勝にクレームをつける釣りグループ、2巻では県会議長のドラ息子が敵役として登場するが、最後は結局仲良くなっているのだから。
昔読んでいるはずなのだが、すっかり記憶から抜け落ちており、新鮮な気持ちで読むことができた。たまには昔の定番的な作品を読んでみるのもいいものである。なお、これらの巻ではまだ三平にとって重要な人物となる魚紳さんは出てきていない。
☆☆☆☆
※初出は、
「風竜胆の書評」です。