文系のための理系読書術 (集英社文庫) | |
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集英社 |
・齋藤孝
世の中では、理系だとか文系だとかいった二元論をよく聞く。しかし私には、このようなレッテル貼りをするのにどのような意味があるのかよく分からない。
これを突き詰めていくと、結局二十歳前後でどのような学問を学んだかということに尽きるだろう。しかし私の場合、専業学生のころは確かに工学を学んだが、社会人になってからは放送大学で、経営学、経済学、文学を学び、今は心理学を専攻している。会社員としての仕事も、技術畑と経営企画や内部監査といったような部署が半々だ。資格なども文理の両方面で多数取得している。さて私は理系だろうか文系だろうか。
結局のところ。理系だとか文系だとか言うのは、実際問題として、次のような区分になるのが正解だろうと私は思う。
①純粋理系:理系の学問以外は受け付けない。極めて少数と思われる。
②理系ベース系:理系をベースにしているが、小説なども読み、程度の差はあるが文系の学問や仕事も理解できる。いわゆる理系と呼ばれる人の大多数はこれに分類されると思う。
③純粋文系:理系の話題をとにかく毛嫌いして理解しようとしない。だから根拠のないデマを信じ込む。日本人の過半数がこれかも。
④隠れ文系:一応理系の学校を出ているが、その内面は極めて③に近い。いわゆる理系の皮を被った文系で、少数ながら存在しているようだ。
なお、この他に文系ベース系もいる可能性はあるが、いたとしても極めて数が少ないので、その存在は無視できるだろう。
おそらく本書は、上記の③の人を対象に書かれたものだろうと思う。しかし、本書に紹介された本を眺めると、やっぱり著者も③に近いなと感じてしまう。なにしろ半分くらいが人間も含めた生物系なのだから。
世間では理系とひとくくりにしてしまうが、理学系と工学系の間にも風土の違いがあるし、生物系と物理系などはとてもひとくくりにはできるものではない。その中でも、生物系の話は③の人にとっては、比較的入りやすいのだろう。
しかし工学系の話がまったく入っていないというのは残念である。いわゆる文系人にとっても、理系の成果を直接目にするのは、それを各種製品に応用した工学を通してだというのに。
☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。