擬人化と異類合戦の文芸史 | |
クリエーター情報なし | |
三弥井書店 |
・伊藤慎吾
本書でいう異類とは、物語世界にキャラクターとして登場する人間以外のものである。異類は、擬人化という手法により、人間に擬えらて表現される。
本書は、この擬人化の種類として次のような分類を与えている。
①原型:全身が元の姿をとどめて、外見上は人間化した部分はないが、物語中では人間のように扱われるもの。
②獣人型:基本的には獣だが、二足歩行をして、形態も人間に近いもの。
③頭部異類型:人間の体の頭部だけが異類なもの。
④着装型:姿は人間だが、体の一部に異類のシンボルを装着しているもの。
⑤象徴型:姿は人間だが、着物の文様などに異類を表すシンボルが描かれているもの。
⑥本体型:異類の本体に、手足や目鼻が付いているもの。
⑦人間型:キャラクター単独では、何を表しているかわからないもの。
この擬人化の目的は、①比喩、②啓蒙、③批判、④空想・遊び、⑤親近性だという。
このような擬人化は、古来より物語をはじめとするいろいろな媒体によって行われており、それを多くの資料と共に、ひとつの文芸史として纏めたのが本書である。
本書の性質としては、非常にまじめな学術書といったところだろうか。多くの資料をこつこつと読み込み、それを一つの文芸史として集大成するというのは大変な労力を要するものと思われる。
ただし、それが面白いかどうかというのは、また別の問題だ。おそらく一般的な読者は、タイトルに魅かれて読み始めたとしても、途中で投げ出してしまうのではないかと思う。しかし、この方面の研究をしている人なら、本棚に1冊置いておいても損はないだろう。
☆☆☆
※初出は「本が好き!」です。