・川崎一洋
「大師は弘法に奪われ・・・」という言葉がある。歴史上朝廷から大師号を受けた高僧は25人いるらしいが、一般には「大師」と言えば、弘法大師空海のことだろう。
この空海は、一言で言えば万能の天才。真言宗を開いた宗教者であることはもちろん、書や文章などでも類まれなる才能を発揮している。また四国香川には満濃池という灌漑用のため池があるが、この改修にも空海が関わっていたのだ。
空海は、774年(宝亀5)に、讃岐国多度郡(現在の香川県西部)で生まれた。現在の75番霊場善通寺が大師の誕生地とされている。791年(延歴10)に当時の最高学府である大学に入学するも、仏門を志し、私度僧となってしまった。804年(延歴23)には、学僧として唐に渡り、恵果和尚の弟子として密教を修める。本来の留学期間は20年だったが、空海は恵果から胎蔵法および金剛界法の両部を伝授されるとわずか2年で帰国してしまう。帰国した空海は、大宰府に3年もの間留め置かれたものの、その後真言宗の開祖として大活躍したことは周知のとおりだ。
本書は、そんな空海の生涯や伝説、彼のもたらした様々な密教美術、空海を描いた絵画や彫像、彼の著作などを新書というコンパクトな形式で紹介したものである。
四国八十八か所のお遍路に興味のある人も多いだろうが、実際に寺を回る前に、まず本書を読んで、弘法大師とはどのような人物だったのかを知った上での方が一層熱が入るに違いない。
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※初出は、
「風竜胆の書評」です。