インデックス (光文社文庫) | |
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光文社 |
・誉田哲也
本書は、「ストロベリーナイト」に始まる姫川玲子シリーズの第7弾となる。8つの短編を収めた短編集でもあり、短編集としては、「シンメトリー」に続く2冊目だ。
「インビジブルレイン」で本庁の主任から、池袋署の担当係長に左遷させられていた玲子だが、本書では彼女が警察になる前から再び本庁に復帰するまでが描かれている。
玲子が警察になる前を描いているのは「彼女のいたカフェ」という短編。ブックカフェに勤務していた賀地未冬は、ある女性客を意識するようになった。モデルのような容姿をしたその客が、玲子だったわけだが、凄まじい集中力で「刑事訴訟法」などの難しい本を読んでいたようだ。彼女なら弁護士でも会計士でもなんにでもなれると思った未冬だが、時折寝落ちするのに気が付いた。だめやん!
どうも玲子はお勉強の方はあまり得意ではないようで、本庁に復帰するというのに、前回の警部試験では筆記で不合格になったらしい。統括警部捕のラインにも達していなかったというから、相当ひどいできだったのだろう。このあたり、ノンキャリア警察官としてはほぼ最速で警部補になったとは思えないところだ。玲子は、「名前さえ書けば通す」という昇任試験があることを耳にしていたので、自分の場合もきっとそうだろうと思っていたようである。ちょと考えが甘いんじゃないかな(笑)「お裾分け」
しかし落としのテクニックは凄い。玲子を呼び戻してくれたかっての係長で今は管理官に昇任した今泉を居酒屋でさんざんやりこめて、「ほんとうにお前は、追い詰める側委に回ると、とことん容赦がないな・・・・・・」(p340)と言わせているくらいだ。
次のやり取りにも爆笑。やはり玲子は女王さま気質か(笑)。
今泉:「・・・お前みたいに理詰めで相手を追い詰めて、ギャフンと言われて落とすばかりじゃ」
玲子:「私だって、ホシに気持ちは持ってます。相手が涙を流して自供したことだってありましたよ」
今泉:「本当かぁ?・・・・・・それはお前の、お得意の言葉責めで、ただ泣かせただけなんじゃないのか」(pp334-335)「落としの玲子」
ところで、新生姫川藩の連中だが、一癖も二癖もある連中ばかりだ。彼女の部下は、嫌みなおばちゃんに、やさぐれおっちゃん、年齢も階級も一つ上の玲子を嫌っている小僧。なかなか苦労しそうだが、最後では元姫川班だったあの男が帰ってきた。果たして新生姫川班はどうなっていくのか。今回は復帰できなかった元姫川班の残りのメンバーはどうなるのか。今後の展開が楽しみだ。
☆☆☆☆
※初出は、「風竜胆の書評」です。