[カラー版]昆虫こわい (幻冬舎新書) | |
クリエーター情報なし | |
幻冬舎 |
・丸山宗利
皆さんは「アオバアリガタハネカクシ」という虫をご存じだろうか。時折話題になることがあるが、アリによく似た虫で、ひどい毒を持っているために、うっかり触ると炎症を起こしてひどい目にあう。
この虫の仲間であるハネカクシ類には、形がアリに似ているだけでなく、本当にアリの群れの中で生活しているものが結構いるという。いやハネカクシだけではない。昆虫には、アリやシロアリといっしょに暮しているものが結構おり、それぞれ「好蟻性昆虫」、「好白蟻性昆虫」と呼ばれているようだ。著者は、これらの昆虫を求めて、世界中を飛び回っている研究者である。
それにしてもアリと一緒に暮らしているハネカクシは、本当にアリそっくりだ。いくつも写真が掲載されているが、DNA上はまったく違った系統の生物が、同じような生活をしていると姿も似てくるという自然の神秘には感心する。
タイトルは、「昆虫こわい」になっているが、本書を読む限りそんなことはまったく感じられない。確かにツェツェバエや、金目アブの一種に刺されたりして、アフリカ睡眠病やロア糸状虫症(失明の原因になる)の恐怖に怯えたりしたこともあった。マダニに陰部を刺されたり、今話題のヒアリの仲間にも刺されている。しかし、そんなことではくじけない。根っからの虫好きなのだ。
著者は、南米からの帰国後に睡眠障害で心療内科を受診したというが、障害の原因が、南米での調査があまりにも楽しくて、その時の気持ちの昂ぶりが蘇り短時間しか眠れないためだというと、家族間や仕事での人間関係から来るストレスが原因であることを期待していた医者からはヘンな目で見られたらしい。
「カラー版」とタイトルの最初に付いているように、収められている写真は、すべてカラーである。メインのハネカクシ以外にも美しいチョウや変わったツノゼミの写真など、見ているだけで楽しくなってくる。虫好きにはたまらない一冊だろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。