我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち (ブルーバックス) | |
クリエーター情報なし | |
講談社 |
・川端裕人、(監修)海部陽介
このメインタイトルだけを見て、まず思ったのは、宇宙人に関する話題だろうかということ。オカルティックなものは別にして、現在のところ地球以外に人類がいるという明確な証拠はない(いないという証拠もない。もっともいないことを証明するのは「悪魔の証明」になる。)。しかし、副題と表紙イラストを見て、ああこれは人類学のことだなと思い当たった。
かって人類は、猿人⇒原人⇒旧人⇒新人とリニアに進化したものと思われていた。しかし今では、人類はいわゆるホモ・サピエンス以外に多く表れ、現在残っているのはホモ・サピエンスのみだという見解が優勢のようだ。
本書はアジアを舞台に、主としてジャワ原人、フローレス原人、澎湖人について解説されている。ジャワ原人は、私が学生のころはたしか「直立猿人」つまり「ピテカントロプス・エレクトス」と呼ばれていたと思う。今では「ホモ・エレクトス」と呼ばれているようだ。フローレンス原人は成人でも身長1m程度しかないという原人。澎湖人とは台湾の海底から引き揚げられた化石から判定されたもののようだ。
実はかって存在した人類は、混血することにより今の人類の中でも生きているという。実際ネアンデルタール人などは、現生人類に続くクロマニヨン人と混血していることが分かっている。
<ぼくたちはぼくたちだけだと思っていたら、ぼくたちだけではなかった。ぼくたちの中に彼らはいて、ぼくたちの一部である。そのような可能性を感じるだけで、自分自身も、ホモ・サピエンスという種も、限りなく開かれた存在に思えてくる。>(p271)
私たち現生人類以外に多くの人類種がいたというのは極めて興味深い。もし彼らが進化して生きていたらと思うとちょっと残念かな。もしそうなら異世界ものにあるような多彩な人類がいるに違いない。獣人はちょっと無理だと思うが、エルフとかドワーフとか・・・。人類学に興味がある人に一読を勧めたい。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。