本書の主張を簡単に纏めると、リーダーになったら、なんでもかんでも自分で抱え込まないで、部下に任せた方が、部下の成長にもつながるし、組織としてのパフォーマンスも上がるというものだ。
それでは本書で言うリーダーとはどのあたりの職位を想定しているのだろう。もちろん会社では社長以下すべてリーダーであり、それらの職位に当てはまることも多いのだが、私が一読した限りは主に係長(会社によっては職位の体系が違うので同等の職位)クラスだろうと思う。なぜなら、本書にはナンバー2の部下をつくれと書かれている。つまり部下がいる職位ということだ(p185にも「管理職なのですから」という表現がある。)。そして課長は複数の係長を見ていることが多い(部長だと課長:以下同様)ので、特定の係長を恣意的にナンバー2にしてしまってはちょっとまずいんじゃないかな。(もちろん、係長より下の部下をナンバー2として扱うともっとまずい。) 係長だと特定の部下と相談などをよくやっても(程度問題だが)それほど問題にはならないだろう。またリーダーの発言として次のようなものがある。
「最終的に部長に承認をもらいに行くのは私がやるよ」(p173)
本来は、部長に承認をもらいにいくのは課長の役目なのだが、別に係長が行ってもそう変ではない。現に私は係長相当職(係長とは呼ばれてなかったが)の時によく部長の承認をもらいに行った。
そして部下のことをよく見られるのは、係長である。本書に、「リーダーが一人で管理できる部下の人数は、せいぜい7人くらいまで」(p087)とあるが賛成である。私も係長相当職の時はよく部下のことを見ることができたが、課長になると、人数の関係で細かいところまでは見ることができなくなった。
また自分がよく知っていることならいいのだが、職位が上がるにつれて、自分の知らないところまで管理スパンに含まれてくる。だから人にまかせるということも重要になってくる。だから、係長くらいから人に仕事を任せるということを覚えないといけないと思う。もっとも上司としての責任をとることは当然ではあるが。
「リーダーは夜遅くまで残業をしてはいけないのです。」(p069)とあるが、これには諸手を上げて賛成したい。日本でサービス残業が多いと言われる理由は、実はこれではないかと思う。上司が残っているから帰りにくいとか先輩がまだ仕事をしているから帰れないからとかいうのがあるのではないのか。私は時間が来たらなるべくさっさと帰るようにしていた。毎日遅くまで残って仕事をしているのは、はた迷惑なだけ。私はそういう人間は能力がないんだと評価していた(もちろん与える仕事量を考慮しないといけないが)。
人に任せることには勇気がいる。自分でやった方が早いと思うこともあるだろう。しかし、部下の成長や組織としてのパフォーマンスを上げようと思ったら、部下に任せるということも必要なのだ。そして自分も楽になる。人間である以上何でもかんでも自分でできる訳がないのだ。あなたもリーダーになったら心構えを持つために読んでおくといいと思う。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。