本書は、送電、変電、配電などの電力流通技術に関する専門書だ。このような電圧の高いものを扱う電気工学を、俗に強電と言うが、この強電技術はかなり枯れた技術である。本書は1992年に出版されたものだが、今読んでも使えるところは多いだろう。
ただ、今となっては、第5章の送電線の保護については、少し書かれていることが古くなっている。表示線継電方式などは、新しいものはないと思うし、今の電力ではデジタルリレーが全盛のはずだ。デジタル技術は、同じようなハードウェアでも、ソフトウェア次第で色々なことが出来、これまでのアナログ技術でやっていた分野をどんどんデジタルに置き換えている。
そうは言っても、二相回路理論や直流送電にも触れており、本書をマスターすれば、例えば電験を受験する際にもかなり役立つものと思われる。
故障計算は、対称座標法の説明がメインで、1回線の場合しか扱っていないものもあるが、平行2回線の線路が多いことを考えれば、二相回路にも習熟しておくことが望ましい。特に零相電流については、平行2回線特有の零相循環電流が問題になることも多いので、この方面を専門としたいなら習熟しておいた方がいいだろう。
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※初出は、「風竜胆の書評」です。