文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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巴里マカロンの謎

2020-02-17 08:50:53 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 あの小鳩常悟朗と小佐内ゆきの小市民コンビが11年ぶりに帰ってきた。思えば、「春期限定いちごタルト事件」、「夏期限定トロピカルパフェ事件」、「秋期限定栗きんとん事件」と続いたのだから、次は「冬期限定」なんちゃら事件だと思って待っていたのだが、見事に裏をかかれた(笑)。

 考えてみると、冬期限定のスイーツ材料というのはあまり無いかもしれない。あるのはこたつに入ってのみかん位か。しかし、みかんなら缶詰で年中食べられるだろう。林檎も冬の果物といっていいかもしれないが、年中見ているし。

 ということで、本書は4つの作品が連作短編として収められている。収録されているのは、表題作の、「巴里マカロンの謎」、「紐育チーズケーキの謎」、「伯林あんぱんの謎」、「花府シュークリームの謎」といずれもスイーツにかけた表題がつけられている。なお、最初の3つは東京創元社のミステリー専門誌「ミステリーズ!」に発表されたもので、最後の1つは書下ろしである。どんな作品かをごく簡単に紹介しよう。

〇巴里マカロンの謎
 小鳩くんは、小佐内さんに連れられて、名古屋にオープンしたパテスリー・コギ・アネックス・ルリコで新作マカロンを食べることに。ティー&マカロンセットで選べるマカロンは3種類ところが新作マカロンは4種類。4種類全部を味わいたいと、小鳩君はつれてこられたわけだ。ところが、小佐内さんのマカロンが4つ。そして第4のマカロンには指輪が入れられていた。

 二人は、この事件を通じて、コギのオーナーの娘である、名古屋の私立礼智中学に通う古城秋桜(コスモス)と知り合う。小佐内さんは、秋桜から「ゆきちゃん先輩」とすっかり懐かれたようだ。

〇紐育チーズケーキの謎
 秋桜の文化祭に行った二人だが、小佐内さんがガラの悪い男子生徒に拉致されてしまう。彼らは何かを探しているようで、それを小佐内さんが持っていると疑っていた。

〇伯林あんぱんの謎
 新聞部で記事を書く人間を決めるのに、ジャム入り揚げパンを使ったくじを行った。1つだけマスタード(実はタバスコ)が入っているのだ。しかし、パンを食べた人間は全員おいしいと言う。果たして、当たったのは誰か?

〇花府シュークリームの謎
 秋桜が、無実の罪で停学になった。行ってもいないパーティで飲酒をしたというのだ。その証拠とされたのは、明らかな合成写真。一体誰の仕業か。

 このシリーズ、完全に忘れられていたと思っていたが、新作が発表されてうれしく思う。謎自体は、いかにも小市民を目指す小鳩くんらしいが、このように荒事のないミステリーというのもなかなかいいものである。このシリーズ、一応全部持っているのだが、「秋期限定」のみレビューを書く前に、どこかに行ってしまったのがとても残念。

☆☆☆☆☆

※初出は、「風竜胆の書評」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント
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